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脳神経内科

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 国立循環器病研究センター脳神経内科では、猪原匡史部長を主任研究者として、①脳血管障害の病態解明、②診断技術の向上、③治療成績の向上、④後遺症の予防を目指し、基礎・臨床の両面から様々な研究活動に取り組んでおります。特に治療研究に関しては、脳血管障害に関係する細胞実験(iPS細胞)、げっ歯類モデル、非人類霊長類モデル、臨床研究、医師主導治験というすべてのステージの研究に取り組んでいる、世界でも非常に珍しい研究グループです。国立循環器病研究センター内では、臨床研究に関しては脳血管内科と、基礎研究では研究所と深く連携し、脳血管障害の制圧を目指し、日々の研究に取り組んでおります。

主な研究活動について

1. もやもや病感受性遺伝子RNF213 p.R4810K多型と脳卒中との関連

我が国おいて、脳卒中・循環器病は我が国における主な死亡原因です。また、介護が必要となった主な原因の構成割合において、脳卒中・循環器病は全体の20%以上と最多であり、 日本人の脳卒中・循環器病の病態解明、発症・重症化予防、その原因となる生活習慣病に対する最適な治療法の解明は喫緊の課題であると言えます。

東アジア人特有の遺伝子多型である、RNF213 p.R4810K多型は、家族性もやもや病患者の約90%で認められるのと同時に、一般人口においても2-3%の未発症キャリアが存在することが明らかになっています。また、診断基準では、もやもや病と診断されない日本人頭蓋内動脈狭窄患者においても22%と高頻度に本多型が認められることから、もやもや病以外でも脳血管障害の感受性遺伝子となりうる可能性が示唆されてきました。そこで、我々のグループは、このRNF213 p.R4810K多型に注目し、日本医療研究開発機構(AMED)循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業から支援を受け、当センター脳血管内科、脳神経外科、バイオバンク部門、そして株式会社島津製作所などと協力することで、この遺伝子多型が日本を含むアジア地域においては、もやもや病と診断されていない脳梗塞、特に、動脈硬化性の脳梗塞や若年発症の脳梗塞患者においても危険因子となっていることを明らかにしました。

更に、全国の患者さんに対しても、本多型を速やかに測定できるように、NCVC Genome registry及びSCREENING RNF213研究を構築し、多施設観察研究を行っています。その結果、RNF213 p.R4810K多型は、頭蓋内動脈の狭窄だけでなく、頚動脈狭窄や冠攣縮性狭心症といった循環器疾患にまで関連を認めており、更には、頭蓋内動脈の急性閉塞による脳梗塞に対して、血管内治療を行う際に、この多型を保有する患者さんは、保有していない患者さんと比べて、術中や術後の再閉塞の可能性が高いことが明らかになりました。海外からの報告では、更に大動脈や腎動脈の狭窄と関連していることも報告されております。このように、もやもや病の感受性遺伝子であるRNF213 p.R4810K多型は、頭蓋内動脈や頚動脈を含めた、全身の血管に影響を与える遺伝子多型であることが示唆されつつあります。

しかしながら、RNF213 p.R4810K多型を保有していても実際に脳梗塞を発症するのは50~100人に1人と見積もられています。したがって、今後はその発症を規定している環境要因やほかの遺伝要因の探索が望まれており、現在、我々は、脂質異常症や自己抗体に注目して研究を進めております。

判定拠点の構築
図. RNF213遺伝子多型の判定拠点の構築 (NCVC Genome Registry)

RNF213遺伝子多型と脳梗塞発症の関連

RNF213 p.R4810K多型の評価依頼はこちらからお進みください。(医療関係者限定)

関連論文:

  1. Okazaki S, Morimoto T, Kamatani Y, et al. Moyamoya Disease Susceptibility Variant RNF213R4810K Increases the Risk of Ischemic Stroke Attributable to Large-Artery Atherosclerosis. Circulation. 2019;139:295-298.
  2. Kamimura T, Okazaki S, Morimoto T, et al. Prevalence of RNF213 p.R4810K Variant in Early-Onset Stroke With Intracranial Arterial Stenosis. Stroke. 2019;50:1561–1563.
  3. Hosoki S, Yoshimoto T, Ihara M. A case of hemichorea in RNF213-related vasculopathy. BMC Neurol. 2021;21:32.
  4. Eto F, Yoshimoto T, Okazaki S, et al. RNF213 p.R4810K (c.14429G > A) Variant Determines Anatomical Variations of the Circle of Willis in Cerebrovascular Disease. Front Aging Neurosci. 2021;13:681743.
  5. Ohara M, Yoshimoto T, Okazaki S, et al. RNF213R4810K Variant Carriers with Intracranial Arterial Stenosis Have a Low Atherosclerotic Burden. J Atheroscler Thromb. (in press)
  6. Yamaguchi E, Yoshimoto T, Ogura S, et al. Association of the RNF213R4810K Variant With the Outer Diameter of Cervical Arteries in Patients With Ischemic Stroke. Stroke: Vascular and Interventional Neurology. 2022;0:e000298.
  7. Yoshimoto T, Tanaka K, Koge J, et al. Stroke: Vasc Intervent Neurol. 2022;0:e000396
  8. Noda K, Hattori Y, Hori M, et al. Amplified Risk of Intracranial Artery Stenosis/Occlusion Associated With RNF213R4810K in Familial Hypercholesterolemia. JACC: Asia. 2023. DOI: 10.1016/j.jacasi.2023.03.011
  9. Ishiyama H, Tanaka T, Yoshimoto T, et al. RNF213R4810K Variant Increases the Risk of Vasospastic Angina. JACC: Asia. 2023. DOI: 10.1016/j.jacasi.2023.05.002

2. CADASILの病態解明, アジアコホートの確立, 新規治療法の開発

CADASIL(皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症)(指定難病124)は、日本国内で最も頻度の多い遺伝性脳小血管病です。国立循環器病研究センター脳神経内科では、この病気の制圧のため様々な基礎研究、臨床研究に取り組んでいます。

(1) iPS細胞や動物モデルを用いた病態解明研究
CADASILの動物モデルとCADASILの患者さんから樹立したiPS細胞を用いてCADASILの病態を解明する研究を行っています。

病態解明研究

(2) CADASIL東アジアコホートの確立
国立循環器病研究センター脳神経内科は日本初のCADASIL専門外来を開設し、100人以上のCADASIL患者が定期的に通院されています。したがって、本邦最大のCADASIL診療機関であると言えます。私たちは、研究参加に同意が得られたCADASILの患者さんを対象に、CADASILの集積地である台湾、韓国と共同で、CADASIL東アジアコホートの確立を進めています。
東アジアコホートの確立

(3) アドレノメデュリンの医師主導治験
アドレノメデュリンは、52個のアミノ酸からなるペプチドホルモンです。循環器系臓器で広く作られ、血管を拡張させたり、血管新生を促したりと、多彩な作用が知られています。アドレノメデュリンは脳虚血や低酸素等に反応して生体内で産生されるため、アドレノメデュリンは脳虚血に対する生体防御反応をつかさどると考えられています。治療薬としてのアドレノメデュリンの有効性は各種の動物実験で示されてきました。CADASILの中核病変である大脳白質病変を再現する血管性認知症モデル動物において、アドレノメデュリンが血管新生を誘導し、炎症を抑制して、大脳白質病変や認知機能を改善することが示されています。更に細胞培養実験では、アドレノメデュリンが低酸素下で抑制される乏突起膠細胞前駆細胞の分化を促進することが確認されており、これは大脳白質の再生作用と考えられています。以上の背景を踏まえ、日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業の支援を受け、2021年11月からCADASIL患者にアドレノメデュリンを投与する医師主導治験(AMCAD試験)を開始しました。

AMCAD試験
AMCAD試験に関するお問い合わせはこちらからお進みください。 (CADASIL患者様およびそのご家族様限定)

関連論文:

  1. Yamamoto Y, Ihara M. Disruption of transforming growth factor-beta superfamily signaling: A shared mechanism underlying hereditary cerebral small vessel disease. Neurochem Int. 2017;107:211-218.
  2. Yamamoto Y, Kojima K, Taura D, et al. Human iPS cell-derived mural cells as an in vitro model of hereditary cerebral small vessel disease. Mol Brain. 2020;13:38.
  3. Yamamoto Y, Hase Y, Ihara M, et al. Neuronal densities and vascular pathology in the hippocampal formation in CADASIL. Neurobiol Aging. 2021;97:33-40.
  4. Yamamoto Y, Liao, Y-C, Lee, Y-C, et al. Update on the epidemiology, pathogenesis, and biomarkers of Cerebral Autosomal Dominant Arteriopathy with Subcortical Infarcts and Leukoencephalopathy. J Clin Neurol. 2023;19:12-27.

3. 脳卒中後てんかんの診断、予防、治療法の策定

脳卒中後てんかんは脳卒中の後遺症として重要であり、約10%の脳卒中生存者に合併する疾患とされており、高齢者てんかんの原因でも3分の1以上を占める重要な疾患ですが、世界においても未だエビデンスの乏しい分野であり、診断、治療においての研究が望まれています。

我々は、日本医療研究開発機構(AMED)難治性疾患実用化研究事業の支援を受け、2014年11月~2019年9月に脳卒中後てんかんの多施設前向き観察研究を行い、旧世代抗てんかん薬(2006年以前に本邦にて上市)と比較して、新世代抗てんかん薬が発作再発防止、服薬継続率において、実臨床下で高い効果を示していることを報告しました。

PROPOSE Study

さらに、副次的解析において、脳卒中後てんかん発作の再発による機能予後悪化への影響や、ECD-SPECTを用いた過灌流検出法の開発と病態研究、症候(非運動起始発作・発作後麻痺・発作後遺症)の特徴に関する調査などを行い、報告しています。

脳卒中後てんかん発作再発と機能予後、死亡との関係

脳卒中後てんかんの過灌流検出法

さらに、脳卒中後てんかんの新リスクとして脳表のシデローシスがあることを世界で初めて報告し、既存の脳卒中後てんかん予測モデルであるSeLECTスコア、CAVEスコアに追加することで予測の改善が上がることを報告しました。
さらには、脳卒中後てんかんのてんかん発作症状と脳卒中病巣との関連、脳波所見とてんかん発作再発の関係についても報告しています。

また、脳卒中後てんかん症例の脳波所見について脳波所見読影会(毎週木曜日)を検査技師の先生方と開催し、また、月に1回、吹田市民病院等のてんかん専門医の先生方との勉強会を行い、脳波読影のスキルアップを図っています。さらに、脳血流画像(脳血流SPECT、MRI(ASL)法、CT灌流画像)、脳波持続モニタリングシステム等のマルチモダルティで診療を行い、さらなる病態解明を目指しています。

関連論文:

  1. Tanaka T, Fukuma K, Abe S, et al. Antiseizure medications for post‐stroke epilepsy: A real‐world prospective cohort study. Brain and Behavior. 2021;11:e2330.
  2. Fukuma K, Kajimoto K, Tanaka T, et al. Visualizing prolonged hyperperfusion in post-stroke epilepsy using postictal subtraction SPECT. Journal of cerebral blood flow and metabolis 2021;41:146-156.
  3. Yoshimura H, Tanaka T, Fukuma K, et al. Impact of Seizure Recurrence on 1-Year Functional Outcome and Mortality in Patients With Poststroke Epilepsy. Neurology. 2022;99:e376-e384.
  4. Fukuma K, Ikeda S, Tanaka T, et al. Clinical and imaging features of nonmotor onset seizure in poststroke epilepsy. Epilepsia. 2022;63:2068-2080.
  5. Fukuma K, Tanaka T, Takaya S, et al. Developing an Asymmetry Method for Detecting Postictal Hyperperfusion in Poststroke Epilepsy. Front Neurol. 2022;13;13:877386.
  6. Abe S, Tanaka T, Fukuma K, et al. Interictal epileptiform discharges as a predictive biomarker for recurrence of poststroke epilepsy. Brain Commun. 2022;26;4:fcac312.
  7. Tanaka T, Fukuma K, Abe S, et al. Association of Cortical Superficial Siderosis with Post-Stroke Epilepsy. Ann Neurol. 2023;93:357-370.

4. 脳血管障害の診断の向上を目指す研究

脳神経内科では、脳血管障害の診断精度の向上、新たな画像診断法の開発、後遺症の軽減や抑制を目指し、様々な研究に取り組んでおります。

(1) 超音波を用いた脳血管障害の新たな診断・治療法の開発
① 脳血管障害における頚動脈不安定プラークの超音波診断
動脈硬化による粥状硬化性病変(プラーク)はその進展により血管狭窄を引き起こすだけでなく、破綻によって粥腫や血栓が塞栓となって脳梗塞を引き起こすため、このようなリスクの高いプラークは不安定プラークとよばれています。
頚動脈エコー検査でプラークが安定したものなのか、不安定で脳梗塞を起こしそうなのかを調べることができれば脳梗塞発症予防に大きく貢献できると考え、我々は超音波造影剤を用いてプラークの不安定性を評価する研究を行っています。プラーク内部の新生血管を描出し、新生血管の多いプラークで脳梗塞発症例が多いことや、通常のエコー検査ではわからないようなごく小さな潰瘍を早期にみつけられることもわかり、さらにプラークの質的診断向上を目指して研究を行っています。
超音波造影剤は現在日本で保険適応となっているものがなく、代替とするために各超音波機器で非造影での新生血管の検出ができないか検討する研究も行っています。

関連論文:

  1. Saito K, Nagatsuka K, Ishibashi-Ueda H, et al. Contrast-Enhanced Ultrasound for the Evaluation of Neovascularization in Atherosclerotic Carotid Artery Plaques. Stroke. 2014;45:3073-3075.
  2. Motoyama R, Saito K, Tonomura S, et al. Utility of Complementary Magnetic Resonance Plaque Imagingand Contrast-Enhanced Ultrasound to Detect Carotid Vulnerable Plaques. J Am Heart Assoc. 2019;8:e011302.

②Bow-Hunter症候群の超音波診断
超音波検査は、術者によって検査結果が大きく変動しうる難しい検査ですが、非侵襲的で非常に多くの情報を得ることができるため、脳神経内科では積極的に様々な臨床研究を展開しております。首を動かすことで血管が圧迫されて若年性に脳梗塞を起こす症候群としてBow-Hunter症候群という病気が知られており、この症候群を見逃さないようにするための超音波診断のアルゴリズムを国際誌上で発表しました。

関連論文:

  1. Kimihira L, Yoshimoto T, Saito S, et al. Various head rotations for ultrasonographic diagnosis of bilateral bow hunter’s syndrome. Acta Neurologica Belgica. 2020;120:1003-1005.
  2. Kimihira L, Yoshimoto T, Ihara M. New Diagnostic Algorithm for Detection of Covert Bow Hunter’s Syndrome. New Diagnostic Algorithm for Detection of Covert Bow Hunter’s Syndrome. Int J Med Sci. 2021;18:2162-2165.

(2)脳主幹動脈閉塞を予測する病院前脳卒中スケールの開発
脳梗塞が発症してから血管内治療を開始するまでの時間を出来るだけ短縮するために、救急隊が簡便に脳主幹動脈閉塞による脳梗塞を見分けることが出来るFACE2-ADスケールという指標を作成しました。今後、脳卒中診療の現場で広く使用されていくことが期待されています。

関連論文:

  1. Okuno Y, Yamagami H, Kataoka H, et al. Field Assessment of Critical Stroke by Emergency Services for Acute Delivery to a Comprehensive Stroke Center: FACE 2Translational Stroke Research. 2020;11:664-670.

(3)脳卒中の予後予測研究
脳卒中急性期に電気生理学的手法や、特殊なMRI撮影方法を用いて患者さんの予後を予測できるアルゴリズムを開発する研究を行っています。その方法を将来の脳卒中の臨床研究のデザインに組み込むことで、より質の高い臨床研究、治療開発研究を目指しています。

(4)脳卒中後合併症・後遺症の実態調査
脳卒中急性期から摂食嚥下障害、低栄養状態、サルコペニア・フレイルの早期診断を行う診療体制を構築し、データ解析を行っています。脳卒中後サルコペニアについては、千里リハビリテーション病院と共同で急性期から回復期にかけての縦断調査を行っています。

関連論文:

  1. Ikeda S, Washida K, Tanaka T, et al. A Nationwide Multi-Center Questionnaire Survey on the Real-World State and Issues Regarding Post-Stroke Complications in Japan. J Stroke Cerebrovasc Dis. 2021;30:105656.
  2. Fukuma K, Kamada M, Yamamoto K, et al. Pre-existing sarcopenia and swallowing outcomes in acute stroke patients. Clinical Nutrition. (in press)

5. 脳血管障害と細菌感染症

(1) 脳出血と齲蝕原生細菌(虫歯菌)との関連

大阪大学歯学研究科との共同研究で、齲蝕原性細菌(通称、虫歯菌)が脳出血の強い危険因子となることが明らかになりました。高血圧の管理によって減少はしているものの、外国に比べて我が国に依然多いとされる脳出血の予防法開発につなげたいと考えています。
現在、国立循環器病研究センターをはじめ、国内15施設によって、齲蝕原性細菌保有患者における脳微小出血(脳出血の前駆病変)の重症化の有無を検証する多施設共同研究(RAMESSES研究)が進行中です。本研究の結果から、齲蝕原性細菌と脳微小出血の重症化が関連していることが明らかになれば、今後は、齲蝕原性細菌を標的とした新規脳出血予防療法の開発を行う予定としています。
さらに我が国と同じく脳出血の頻度が多いアフリカ諸国(ケニア、ナイジェリア)や東南アジア諸国(インドネシア、シンガポール)との国際多施設共同研究も進めています。上述したRNF213血管症の発症にも感染症が関与する可能性があり、脳卒中の予防法の開発への応用研究を進めています。

(2) 脳血管障害と腸内細菌叢変容との関連

これまで、基礎研究で腸内細菌叢変容により脳梗塞が重症化することが判明し、徐々に病態メカニズムを徐々に明らかとなってきつつあります。しかしながら、脳血管障害患者における腸内細菌叢変容の実態は明らかとなっていません。約700~800名/年の急性期脳血管障害の入院診療を行っている国立循環器病研究センターにおいて、血管生理学部との共同研究で、急性期脳血管障害患者の口腔内細菌叢と腸内細菌叢変容を明らかにすべく研究を進めています。特定の口腔内細菌叢と腸内細菌叢の変容が急性期脳血管障害の発症と関連することが明らかとなっており、現在、病態解明を行い、脳血管障害の予防/治療法の開発につなげていきたいと思っています。
   

関連論文:

  1. Tonomura S, Ihara M, Kawano T, et al. Intracerebral hemorrhage and deep microbleeds associated with cnm-positive Streptococcus mutans; a hospital cohort study. Sci Rep 2016;6:20074.
  2. Ihara M, Yamamoto Y. Emerging Evidence for Pathogenesis of Sporadic Cerebral Small Vessel Disease. Stroke 2016;47:554-560.
  3. Tonomura S, Ihara M, Friedland RP. Microbiota in cerebrovascular disease: A key player and future therapeutic target. J Cereb Blood Flow Metab 2020;40:1368-1380.
  4. Hosoki S, Saito S, Tonomura S, et al. Oral Carriage of Streptococcus mutans Harboring the cnmGene Relates to an Increased Incidence of Cerebral Microbleeds. Stroke 2020;51:3632-3639.
  5. Hosoki S, Hattori Y, Saito S, et al. Risk Assessment of Cnm-Positive Streptococcus mutans in Stroke Survivors (RAMESSES): Protocol for a Multicenter Prospective Cohort Study. Front. Neurol 2022;13:816147.
  6. Ikeda S, Saito S, Hosoki S, et al. Harboring Cnm-expressing Streptococcus mutans in the oral cavity relates to both deep and lobar cerebral microbleeds. Eur J Neurol. (in press)

6. 軽度認知障害・認知症予防/治療法の開発

(1) タキシフォリン
タキシフォリンは植物界全体に広く分布する有機化合物群であるフラボノイドの1種であり、別名ジヒドロケルセチンとも呼ばれます。タキシフォリンは多くの草本植物や潅木類、かんきつ類の果実、綿やトウモロコシの実、ピーナッツあるいは落花生、針葉樹に多く含まれています。これまで、タキシフォリンには、アルツハイマー病患者の脳に蓄積するアミロイドβの産生/凝集を抑制し、抗酸化/炎症作用などを発揮し、認知機能を改善させることが期待されています。当院の軽度認知障害または軽度認知症患者にタキシフォリンを摂取いただいたところ、図のように、視空間認知機能・遂行機能・語想起を改善させうることがわかりました。

(2) NAD+/SIRT1軸活性化薬
頸動脈狭窄/閉塞症は脳梗塞の主要な原因疾患ですが、脳梗塞を発症せずとも認知機能障害を発症するため、認知症の主な原因疾患の1つです。トランス・レスベラトロールは、長寿遺伝子と称されるSIRT1を活性化させ、抗酸化/炎症作用、血管拡張作用などを多面的効果を発揮するといわれています。われわれは、頸動脈狭窄/閉塞症モデルマウスを用いた研究で、SIRT1による脳血流維持、認知機能改善作用を見出しています。この前臨床研究の結果に基づき、日本医療研究開発機構(AMED)と委託研究開発契約を締結し、頸動脈狭窄/閉塞症による血管性認知障害に対して、トランス・レスベラトロールの安全性・治療効果の探索的検討を行っています(REsveratrol for VAscular cognitive impairment investigating cerebral Metabolism and Perfusion [REVAMP trial])。

関連論文:

  1. Hattori Y, Okamoto Y, Maki T, et al. Silent information regulator 2 homolog 1 counters cerebral hypoperfusion injury by deacetylating endothelial nitric oxide synthase. Stroke 2014;45: 3403-3411.
  2. Hattori Y, Okamoto Y, Nagatsuka K, et al. SIRT1 attenuates severe ischemic damage by preserving cerebral blood flow. Neuroreport 2015;26:113-117.
  3. Hattori Y, Saito S, Nakaoku Y, et al. Taxifolin for Cognitive Preservation in Patients with Mild Cognitive Impairment or Mild Dementia. J Alzheimers Dis 2023;93:743-754.

最終更新日:2024年09月27日

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