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健診部

研修希望の皆様へ

専攻医を考えておられる方へのメッセージ

健診部特任部長
小久保 喜弘

 初期研修を修了したもののまだ自分の将来設計ができていない方、自分の将来を決めたがこれで良かったのか自信のない方、これから専門の道を進む際に悩みは尽きないものです。
 フランス哲学者アランは、『人間』の一節に、「森の中で道を失ったデカルトは、此の道よりも彼の道を取るべき何らの理由を覚知しない」で始まり、人生の方法論を説いている。最初は自由意志で道を選択して、歩く一歩一歩に全神経を集中させて、最終的には森の中から抜け出るときには、最初から自分がその道を選択していたかのように、「偶然の選択を救い、これを良きものとするのである」と結んでいます。この道で良いのか悩むかもしれませんが、取り敢えず自由意思で選択して、結果的には最初から最善の道を選択していたかのような結果になれることです。
 「健診・保健指導コース」は、単なる健診と保健指導のコースではありません。健診、特に診察は内科診断学そのものです。健診は限られた検査の中でできるだけ多くの疾患を見出すことが求められます。視診、聴診、触診などの五感を使い診ていき、それに合わせた適切な問診は何かを学び取ることができます。保健指導も通り一辺倒のアドバイスではなかなか生活習慣の改善ができるものではありません。我々が開発した「生涯健康支援10」を用いて、客観的に容易に抱えている問題点見出すことができ、無理なく指導ができます。健診部ではどの科に行かれても恥ずかしくない内科診断学と保健指導法を修得することができます。
研究面では、これまで吹田研究で基本的な研究成果を出して、その集大成の疾患リスクスコアを作成しております。さらに、これまでの成果を用いて心不全重症化予防事業を実装して市民に研究成果を還元しており、さらに沖縄県に均てん化を進めております。そうした研究成果の展開を修得していくことができます。きっちりと社会医学を修得されたい方には、様々なコホートを用意しております。コホートの維持は、さながらガラス細工を扱うかのように非常に脆弱なものです。本格的なコホート研究に携わり、それらを習得する大変貴重な経験を得られると確信しております。
 日本は世界で最も高齢化率が高いにもかかわらず、臓器終末像の予防に対するエビデンスが極めて少ないです。循環器病であれば脳卒中と心筋梗塞を発症すると打ち切りになり、そこから先の様々な疾患の集大成である心不全や認知症まで追跡していないからです。我々はコロナ禍の中でも、地域住民を対象とした心不全と認知症のコホートを立ち上げました。今まさにベースライン調査を行うところです。これに両疾患のリスク因子といわれているがほとんどエビデンスのない聴覚、視覚、嗅覚、口腔衛生の疫学も併せて調査を開始します。これにより、なぜ欧米と比べて我が国の弁置換術が少ないのかが分かってくることでしょう。夫々の弁膜症や一過性心房細動のリスク因子がわが国で初めて分かってきます。
 特定保健指導も心不全重症化予防事業の保健指導も生涯健康支援10を用いて、全く新しい保健指導を行います。この保健指導を通して循環器ばかりでなく、がんや認知症の予防にもつながる保健指導法を修得することができます。我が国で極めてエビデンスの少ない非薬物介入研究を開始する準備を行っております。これらを通して生涯健康支援が可能となるように、子供から介護までの健康支援も検討しているところです。他科の併診も兼ねた専攻医を考えている先生にも、本人の希望に沿ったコースを出来るだけ柔軟に用意しております。将来の針路が森の中で迷った状態であっても、専攻医を終了される頃には森の中から抜け出ていることに気づかれるでしょう。そして、大いに利用して世界に羽ばたいていっていただきたいと願っております。

氏名小久保 喜弘 こくぼ よしひろ (Yoshihiro Kokubo)
所属・職務健診部特任部長、臨床研究開発部室長
Eメールykokubo◎ncvc.go.jp(@が◎に置き換わっっています)
主要論文・著書

【おもな筆頭原著論文】

  1. Impact of Intima-Media Thickness Progression in the Common Carotid Arteries on the Risk of Incident Cardiovascular Disease in the Suita Study. J Am Heart Assoc. 2018;7:e007720.
  2. Development of a Basic Risk Score for Incident Atrial Fibrillation in a Japanese General Population - The Suita Study. Circ J. 2017;81:1580-1588.
  3. Dietary magnesium intake and risk of incident coronary heart disease in men: A prospective cohort study. Clin Nutr.2017;S0261-5614:30274-1.
  4. The Impact of Green Tea and Coffee Consumption on the Reduced Risk of Stroke Incidence in Japanese Population. Stroke. 44:1369-74, 2013.
  5. Relationship between blood pressure category and incidence of stroke and myocardial infarction in an urban Japanese population with and without chronic kidney disease: the Suita Study. Stroke,40: 2674-9, 2009.
  6. Impact of high-normal blood pressure on the risk of cardiovascular disease in a Japanese urban cohort: The Suita Study. Hypertension, 52: 652-9, 2008.
  7. Association of dietary intake of soy, beans, and isoflavones with risk of cerebral and myocardial infarctions in Japanese populations. Circulation. 116:2553-62, 2007.

【おもな総説】

  1. Brouwers S, Sudano I, Kokubo Y, et al. Arterial hypertension. Lancet. 2021:S0140-6736(21)00221-X.
  2. KGene and environmental interactions according to the components of lifestyle modifications in hypertension guidelines. Environ Health Prev Med. 2019;24(1):19.
  3. Traditional Cardiovascular Risk Factors for Incident Atrial Fibrillation. Circ J. 2016;80:2415-2422.
  4. Higher blood pressure as a risk factor for diseases other than stroke and ischemic heart disease. Hypertension. 2015;66:254-9.
  5. Prevention of Hypertension and Cardiovascular Diseases: A Comparison of Lifestyle Factors in Westerners and East Asians. Hypertension. 63:655-660, 2014.
  6. Traditional risk factor management for stroke: a never-ending challenge for health behaviors of diet and physical activity. Curr Opinion Neurol,25: 11-17, 2012.
受賞
  • 2018年: Circulation Journal Awards
  • 2014年:第63回American College of Cardiology学術総会ベストポスター賞受賞, 欧州心臓学会トップポスター賞受賞
  • 2011年:Hypertension Research誌2010年最優秀論文賞, 吹田市長から地域福祉増進による感謝状
  • トップレビュー賞 :Hypertension (2019年、2018年、2017年、2016年、2015年、2013年);Atherosclerosis(2016年、2015年、2014年) 、Journal Epidemiology(2014年、2012年)
所属学会
  • 理事会国際高血圧学会常任理事、日本衛生学会理事
  • 国際学会フェロー米国心臓協会(FAHA; 脳卒中・高血圧・疫学)、欧州心臓学会(FESC)、米国心臓学会(FACC)、欧州脳卒中協会(FESO).
  • 学会評議員等日本脳卒中学会、日本高血圧学会(評議員・特別正会員)、日本栄養改善学会(代表評議員)、日本栄養食糧学会(参与)、日本疫学会、日本衛生学会、日本循環器病予防学会.
教育活動
  • 社会医学系指導医・専門医、公衆衛生学会専門家、日本疫学会認定上級疫学専門家、日本衛生学会衛生学エキスパート
  • 大阪大学社会医学系専門医研修プログラム管理委員
  • 大阪大学医学部公衆衛生学実習・保健学科講義
  • 2008年4月~ 東京医科歯科大学医学部医学科非常勤講師
  • 2015年4月~ 大阪大学大学院医学研究科招聘教授
  • 2015年9月~ Glasgow大学循環器医科学研究所客員教授
その他の活動
研究者情報

最終更新日:2022年02月17日

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