ホーム > 循環器病あれこれ > [65] まだ たばこを吸っているあなたへ

[65] まだ たばこを吸っているあなたへ

「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。
文章・図表・イラスト等の転載・引用のご相談は循環器病研究振興財団までご連絡ください。

2007年11月1日 発行

元国立循環器病研究センター
看護部
副看護師長 松本 浩美

予防健診部
医長 小久保 喜弘

さぁ たばこをやめるぞ!

イラスト:さぁ たばこをやめるぞ!

もくじ

はじめに

喫煙は、循環器疾患やがんをはじめ様々な疾患の原因や下地となります。たばこが悪いと分かっていても、やめられないのは、たばこに含まれるニコチンの依存性が高いからです。たばこがやめられない状態は「たばこ病」にかかっているともいえます。この病気を自分で治療する最も効果的な方法が禁煙です。健康のために禁煙したいと思いながら、やめることができず、ずるずる吸い続ける喫煙者が少なくありません。

このページでは、たばこの健康への影響をまず知ってもらい、禁煙をするにはどうしたらよいかを具体的に解説します。禁煙のポイントを示しますので、がんばって禁煙に挑んでください。

たばこはなぜやめられないか

喫煙しはじめると習慣になり、やめられなくなるのは、たばこの主成分であるニコチンに強い依存性があるからです。依存性とはどういうことかをまず説明します。

<図1>のようにたばこを吸うと、血液中のニコチン濃度が急激に上がります。ニコチンの濃度がピークに達している間に「たばこがおいしい」という感覚が生まれます。この「おいしさ」に精神的に依存し、いつまでも「おいしさ」を求めるようになります。これを精神的依存と呼びます。

逆に、血液中のニコチン濃度が低くなると、落ち着きのなさ、欲求不満、不安、集中困難などの禁断症状が起こり、ニコチンが欲しくなります。これを身体的依存と呼びます。結果として喫煙者は毎日、喫煙本数の回数分、軽い禁断症状と回復を繰り返していることになります。

血液中のニコチン濃度が低くなると、不快な感覚を覚えるようになります。<図1>の、黄色の部分に赤線が差しかかるところに相当します。この黄色の部分よりも幾分高いところにニコチン濃度を設定して、ニコチン入りのパッチ(貼り薬)を貼ることにより(点線部分)、パッチからニコチンが体内に少しずつ吸収され、不快な感覚を解消させて禁煙していただくことができます。なおパッチについては後述します。

図1 ニコチン依存のメカニズム
図1:ニコチン依存のメカニズム イラスト:禁煙ガムか、禁煙外来で処方箋をもらって禁煙パッチを貼る

ニコチン依存度の自己診断をしよう

ニコチン依存度は個人によって異なります。<表1>でニコチン依存症の自己診断をしてみましょう。依存度の高い人は禁断症状が起こりやすく、たばこをやめにくい、依存度の低い人は禁断症状が起こりにくく、たばこを比較的やめやすいといわれています。

表1 ニコチン依存度の自己診断
表1:ニコチン依存度の自己診断

喫煙はどんな害があるの?

たばこの煙には4000種類以上の化学物質が含まれていることが判明しています。そのうち有害と分かっているものだけで200種類以上もあります。またこれらの中には40~60種類の発ガン物質が含まれています。

たばこを吸うと一酸化炭素も体内に取り込まれます。一酸化炭素は酸素に比べ240倍も赤血球にあるヘモグロビンと結合しやすく、体内組織の酸素欠乏により動脈硬化が進み、脳卒中・急性心筋梗塞(こうそく)・大動脈解離などの循環器疾患を発症する危険度が高くなります。

<図2>のように、1日25本~49本吸っている人は、心筋梗塞で死亡する危険度が吸ってない人に比べ2.1倍になります。本数が増えるほど死亡の危険度が上がるのです。脳卒中発症と喫煙との関係をまとめたのが<表2>です。若年者の方がその危険度が大きく、喫煙本数が増えるほど脳卒中発症の危険度が高まります。

さらに、呼吸器疾患の肺気腫(しゅ)・慢性気管支炎・気管支ぜんそくや、がん、低出生体重児など、さまざまな疾患の発症に影響しています。肺がんのうち、たばこが原因と考えられる(もし吸わなかったら、かからなかったと考えられる)肺がんの割合は70%に及びます。

<図3>は、吸わない人と比較したたばこを吸う人の死亡率です。たばこの煙の通り道である咽頭(いんとう)がんや喉頭(こうとう)がん、あるいは唾液(だえき)と一緒にたばこのヤニが飲みこまれることにより、発がん性物質の影響で、食道がん・胃がん・肝臓がん・膀胱(ぼうこう)がんが起こりやすくなります。たばこを吸う人の肺と吸わない人の肺を比べてみると、吸う人の肺は黒いススでおおわれています。

図2 1日喫煙本数と虚血性心疾患死亡リスク
図2:1日喫煙本数と虚血性心疾患死亡リスク
表2 喫煙と脳卒中との関係
表2:喫煙と脳卒中との関係
図3 非喫煙者(1.0)と比較した喫煙者の死亡率(男)
図3:非喫煙者(1.0)と比較した喫煙者の死亡率(男)

喫煙は家族にも影響

たばこは、吸っている本人ばかりでなく、周りの人の健康にも大きな影響を与えます。このことをよく理解しましょう。

身近にたばこを吸う人がいると、喫煙のきっかけになります。男子中学生の常習喫煙率をみると、両親が吸わない場合は3%、父親が吸う場合は5%、母親が吸う場合は11%でした。これに対して両親ともに吸う場合は15%になり、親のたばこの習慣が子どもに強く影響していると考えられます<図4>。また、友人にたばこを吸う人がいるか、いないかにも強く影響されることも分かっています。

喫煙のきっかけになるだけでなく、さまざまな影響も生じます。家族の中に喫煙者がいると、家族の呼気中の一酸化炭素濃度やニコチン濃度が高くなることが分かっています。つまり、家族の中でたばこを吸う方がいると、その煙を吸っていて、たばこを自分で吸っているのと同じ影響を受けます。このことを受動喫煙と呼びます。

受動喫煙の影響は肺がんにも現れ、日本人を対象とした大規模な調査では、夫にたばこを吸う習慣があり、妻が吸わない場合、その女性は、吸わない男性を夫に持つ場合より、1.9倍肺がんを起こしやすくなることが示されています。

図4 男子中学生の常習喫煙率
図4:男子中学生の常習喫煙率

たばこを吸って困ることは?

日常生活では、たばこを吸うことで困った事態が次々と起こります。それを考えてみましょう。たばこには、タールやばい煙が含まれるので、家が汚くなります。寝たばこによる火事が起きたり、衣服に焦げ跡ができたりする場合も少なくありません。また、いやなにおいが服に染みつきます。

ヘビースモーカーは、歯が黄色くなり普通の歯磨きでは落ちにくくなります。また喫煙者は歯周囲炎(歯槽膿漏(のうろう))を起こしやすく、その結果、歯が抜けてしまう人の割合が高くなることが知られています。

身近な自覚症状としては、吐き気がしたり、おなかが痛くなったりします。最近の研究では、喫煙者は高齢になって耳が聞こえなくなる割合が、より多くなることも分かってきました。

皮膚がくすんだり、しわが深くなったり、白髪になったりして、美容上もよくありません。双子の姉妹で、片方が喫煙者である場合、たばこを吸っている方がしわが増え、老けてみえます。たばこを吸っているために、あなたと周囲に困ったことが次々に起きている事実を、あなたは実感していますか?

病気予防のための禁煙

1日20本のたばこを吸う男性は、吸わない男性に比べ、肺がんで4.5倍死亡しやすいことがこれまでの研究で分かっていますが、禁煙をすれば5年でその危険度が半分、10年たつと、吸わない人と同程度にまで危険度を大きく下げられます<図5>。肺がんは検診でも見つかりにくいがんの一つです。最もよい肺がんの予防法は禁煙です。

禁煙の効果は、脳卒中や心筋梗塞などの循環器疾患では比較的早く現れます。例えば女性の心筋梗塞による死亡率は、喫煙者が非喫煙者より4.5倍に及ぶことが明らかになっています。しかし禁煙すれば、危険性が急速に下がることが知られています。心筋梗塞をはじめとする循環器疾患では、肺がんに比べ早く危険性が改善します。

禁煙して2年くらいで、心筋梗塞の発症危険度は喫煙者の半分に、5年たつと吸わない人とほぼ同じくらいまで減少します<図6>。国内の大規模な追跡研究でも、禁煙して2年以降は、たばこを吸う人の危険度の半分以下になることが分かってきました。

喫煙により頚動脈など太い血管の動脈硬化が進展するといわれていますが、米国で地域の人たちを長期間、追跡調査しているフラミンガム研究では、禁煙者の脳卒中の危険度は禁煙後2年以内に急速に低下し、5年以内に非喫煙者と同じレベルとなりました。喫煙により動脈硬化が進展し、また脳血流の減少、血液凝固因子の増加、血栓形成が進むなどして脳梗塞発症に影響している可能性も考えられます。禁煙はコストのかからない即効性のある予防といえます。健康な生活を送るためには禁煙が一番です。

図5 禁煙後の年数と肺がん死亡率の関係(男)
図5:禁煙後の年数と肺がん死亡率の関係(男)
(非喫煙者を1として)
図6 禁煙による女性の心筋梗塞の発症危険度の低下
図6:禁煙による女性の心筋梗塞の発症危険度の低下 イラスト:健康な生活を送るためには禁煙が一番です

それでは禁煙に挑戦しましょう

  1. 禁煙は自分でできるもっとも効果的な治療法
  2. 失敗しても気にしない
  3. まずは挑戦
  4. たばこの害などマイナスイメージをふくらませる
  5. 禁煙によるメリット(プラス面)をイメージする

以上の5点が大切です。

身近な禁煙のメリット

まず、身近なところから、禁煙できた時のメリットを考えてみましょう。

あなたの心のどこかに「どうせ禁煙なんて無理な話」というあきらめはありませんか? 思い切って挑戦して禁煙できれば、大きな自信につながります。自分の意志で禁煙を決意し、やめることができればすばらしいことだと思います。

禁煙してしばらくすると、以前たばこを吸っていた部屋や、自分の服がにおうことに気がつくようになります。他の人はこれを気にしていたことが分かります。これからはたばこのにおいが付くことはありません。家も汚れなくなります。

たばこを吸わない習慣が身につくと、朝の目覚めがよくなり、朝、たばこを吸わなくてもすっきりと目が覚めます。歯磨きの時の吐き気もなくなり、「ご飯がおいしい」という感覚が戻ってきます。家族からも喜ばれます。肌のつやがよみがえり、しわが取れるなど美容にも効果があります。

このほか禁煙がもたらす身近なメリットはたくさんあります。このメリットを糧にして禁煙を継続しましょう。

これが禁煙のポイントです

1.予定を考え禁煙開始日を設定する

  • 重要な会議があるときは避ける
  • 休暇や週末をうまく利用する
  • 適切な準備期間をおく

禁煙を成功させるには、まず禁煙開始の日を決めることです。禁煙開始日の前後に報告書の発表や試験、会議などストレスのかかる行事のないことを確かめます。禁煙を始めた日から2~3日の間に、このようなことがあると高い率で失敗します。休暇期間を活用し、あらかじめ環境を整える時間をおくのもよいでしょう。

2.喫煙道具を片づける

禁煙開始日を決めたら、買い置きのたばこやライター、灰皿などを整理します。

3.誰かと二人三脚で

禁煙は適切な支援を受けることで、成功率が高まることが知られています。禁煙教室や禁煙外来を利用しましょう。また周囲の人に禁煙宣言して、再び喫煙しないよう注意の目を向けてもらう協力も必要です。禁煙は個人的にこっそりやるより、適切な支援がある方が継続しやすいのです。

4.気持ちを整理する

禁煙は他の人から勧められても、できるものではありません。自分の意志で禁煙しようと決心し、気持ちを整理して、禁煙に臨みましょう。

5.覚悟しておくこと

禁煙を始めて2~3日の間は、「生あくびする」「集中できない」「イライラする」「仕事にならない」など、ニコチンの禁断症状が多くの人に現れます。この時点で、多くの方が禁断症状に負けて、禁煙を断念します。しかし、ここを乗り切れば禁煙まであと一歩なのです。つらい症状は1週間程度で収まります。このつらさを覚悟して禁煙に挑みましょう。

6.妙な自信をもたないこと

禁煙を継続していくと、「禁煙できる」という自信が持てます。その一方で、これまで禁煙できたのだから、一本ぐらいならいいだろうという気持ちも出てきます。しかし、一本吸ってしまうと、こんどはより禁煙がしにくくなります。妙な自信は持たないで、できるだけ喫煙を我慢してください。

吸いたい時の対処法

実際にたばこを吸いたくなった時の気持ちをコントロールする方法は、いろいろあります。肝心なのはたばこを吸いたくなった時、一呼吸おくことです。

吸いたくなった時、「ガムをかむ」「お茶を飲む」「水を飲む」「深呼吸をする」「体操をする」など、一呼吸おく方法を自分なりに考えてみてください。

禁煙して最初の3日くらいは一呼吸をおく方法も、あまり効果がないかもしれません。しかし、長く禁煙を続けるには、たばこを吸いたくなった時、代わりにする行動を決めておき、それによって吸いたい状態を乗り越えることが重要です。

禁煙を継続することは、「たばこを吸おうかと迷った時に吸わない」という行為の継続だと肝に銘じてください。迷った時、一服吸えば禁煙の試みは挫折してしまいます。この時をしのぐ方法を用意しておくことが、危機を乗り切るポイントです。

たばこが吸いたくなったときには、運動が効果的です。運動すると体がすっきりとし、吸いたいという気持ちが薄れます。運動で代謝量が増加するので、禁煙による体重増加を気にされている方に対してもかなり効果的です。

「たばこを吸いたいな」と思った時、たばこの代わりになる実行可能な行動をイメージしてみましょう。この行動は、ご自分で工夫することが大切です。人により、たばこを吸いたくなる行動や、対処方法はさまざまです。繰り返しますが、肝心なのはたばこを吸いたくなった時、一呼吸おくことです。

禁煙維持率とニコチン依存

残念ながら、禁煙を試みた人の半分は、3日~1週間で断念してしまいます。「仕事が手につかない」「イライラしてつい」など、ニコチンの禁断症状がたばこへと誘うのです。禁煙開始後1週間以内に何か大きな行事や会議などあると、再び喫煙をする可能性が高くなってしまいます。

3日から1週間は布団にもぐったつもりで過ごしましょう。無理に仕事をしなくても、禁煙に成功できれば、あとで十分お釣りがきます<図7>。

1週間たつと、「イライラ、集中力の欠如、生あくび」など、日常生活の支障となるニコチンの離脱症状が消えてきます。しかし禁煙開始後1週間が過ぎても、1か月までは「どうしても吸いたい」という気持ちが時々襲ってきますので、あらかじめ用意した方法を使ってしのぎましょう。

1か月まではこの気持ちとの戦いです。「吸ったらどんなにおいしいだろう」「1本だけなら」などの誘惑に負けたらおしまいです。

1か月が過ぎると、「たばこが吸いたい」という誘惑はだんだん小さくなります。しかし、これで禁煙に成功したわけではありません。1か月間禁煙できた人のうち、1年間以上禁煙を継続できるのは約50%です。

多くは「一本くらいなら……」と思って吸ってしまった結果です。1か月の禁煙に成功したら、そうした誘惑への対処の仕方も身に付いてきます。あなたの禁煙継続法を開発してください。

3か月くらいになると、「たばこを吸いたい」という欲求は薄れますが、なくなるわけではありません。禁煙成功者からは、この時期に「たばこを吸う夢を見た」などという体験を聞くことがあります。

1年たてば、禁煙の誘惑はもうほとんどなくなっています。1年禁煙できた人は、一生禁煙できる可能性はかなり高くなります。しかし、「一本ぐらいなら……」と思って吸うと、たいていの方は元の喫煙本数に戻ってしまいます。

図7 禁煙維持の時間経過
図7:禁煙維持の時間経過

禁断症状が強くて断念した人へ

禁煙開始から1週間くらい禁断症状が強く、禁煙に失敗した人には、ニコチンを補う方法(ニコチン代替療法)があります。禁煙を始めてから、ニコチン入りのガムやパッチ(貼り薬)を使って、禁断症状を軽くする方法です。

ガムを使う方法の利点は、「たばこを吸いたい」という強力な誘惑に対して、「ガムをかむ」というルールを決めて対処できること、つまりガムの有効成分(ニコチン)が禁断症状を抑えてくれることです。ニコチンガムは薬局で購入できます。最初は1日10個くらいから始め、段階的に減らします。計画的に使用しないと「ニコチンガム依存症」になります。

ニコチンパッチの場合は継続的な効果により、「たばこを吸いたい」という強力な誘惑がでにくくなります。ニコチンパッチは医療機関での処方箋が必要となります。禁煙外来のある医療機関に受診しましょう。ニコチンパッチは比較的強い禁断症状のある方に向いています。

注意しなければならないのは、どちらも必ず禁煙したうえで使用することです。たばこを吸いながら使用すると、ニコチンが多すぎて、体にとても悪い影響が出ます。

おわりに

禁煙を成功させるには、まずなぜ禁煙をするかという明確な動機を持つことです。「子どもが生まれたから」「結婚を機会に」など、はっきりとした動機を持つことが禁煙を持続させる原動力になります。

次に、周囲に禁煙宣言を行い、できれば支援者を決めておくことをお勧めします。周囲の人から禁煙が持続する環境を整える支援が得られるからです。

そして、これまで使っていたたばこに関係するものを思い切って捨てましょう。気持ちを禁煙に持っていくことで、禁煙は半ば成功したようなものです。禁煙がどうしてもできない場合には、禁煙のお手伝いをしますので、禁煙外来のある医療機関を訪ねてみてください。

平成18年4月、一定の基準を満たす患者さんに保険適応が認められ、同年6月、ニコチンパッチが保険適応となりました。

禁煙に成功して長年経過している方が陥りやすいのが、油断しての一本です。人生の転換期、大きなストレスなどが契機で吸われる方がいますが、再び喫煙すると以前よりも禁煙しにくくなりますので要注意です。

禁煙によって新しい人生、健康な人生へ大きく舵(かじ)をきってください。ご成功を祈ります。

 

ページ上部へ