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心不全科

今後の治療への挑戦


心不全とは

心臓の働きの低下が原因となって下記の様な症状が出現するような病気の状態を心不全と呼んでおります。心不全の症状は患者さんによって多様ですが、大きく分けて下記の症状が出現します。

① 息切れや呼吸苦

心臓の収縮・拡張する働きが低下した状態が持続すると心臓が拡張した状態でも中の圧力(左室拡張末期圧)があがった状態が持続するようになります。このような状態が持続すると肺血管の圧も上昇し肺の血管から肺に水が染み出るようになります(肺うっ血)。このような状態では息切れや息苦しさが出現します。初期には階段や坂道などで息切れが出現しますが、次第に安静時にも出現するようになります。しまいには夜、横になって眠ることすらも息切れのため辛くなります。

② 体のむくみ

心臓の圧力が上がった状態が持続すると心臓へ流れる血流が滞り足のむくみなどが出現することがあります。

③ だるさや不快感

心不全がかなり進行した方では、心臓から拍出する血液量が不足することでだるさや気分の不快などが出現することがあります。

上記の症状の程度や種類は個人差があります。またこのような症状だけではなくいくつかの検査方法を組み合わせて診断しておりますので詳しくは担当医にお問い合わせ下さい。

心不全の薬物治療

息が苦しくなって心不全のため入院した患者さんですが、レントゲン写真を見ると、心臓の大きさが拡大し、肺に染み出した水がうっすらと白く写っています(図1A)。心エコー(図2A)では心臓が拡大し、動きが悪くなっていることがわかります。いくつかのお薬の投与により、心臓の負担を取り除きます。状態が安定したところでβ遮断剤とよばれる内服薬などを加えます。β遮断剤は心不全の代表的な治療薬の一つですが、このお薬には心拍数を遅くしたり、心臓を休めたりするような作用があります。このような作用により肺に水がたまる状態に逆戻りする可能性もあるために、β遮断薬は少量から始めて数週間かけて慎重に増量します。薬物治療が順調に進むと心臓の大きさは縮小し(図1B)、収縮力も改善します(図2B)。このお薬の効き目は個人差があり、症状や心エコーや血液検査等の検査で効き目を判断します。下図はお薬の効果があった方の心エコー結果を示しています。また心不全の薬の効き目には個人差があり、全ての心不全の方に効果があるわけではありません。また血圧や脈拍、患者さんの症状や心エコー検査や血液検査などをチェックしながら主治医が薬の量や種類を調節しています。

図1
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図2
図2

弁膜症・心筋症における構造的心疾患(SHD)へのカテーテル治療

弁膜症の原因は加齢にともなう動脈硬化が主となってきており、超高齢化社会を迎える日本でも弁膜症疾患患者様の数は増加の一途をたどっております(図3)。

図3:年齢別弁疾患患者数および日本の高齢者人口の推移

図3

弁膜症への治療は長年手術がスタンダードでしたが、高齢者に発症する弁膜症では手術が困難またはハイリスクな患者様が少なからずいらっしゃいます。近年、このような患者様に対してより低侵襲に行えるカテーテル治療が開発され、疾患により臨床応用がされております。当科でも弁膜症・心筋症疾患などの構造的心疾患(Structure Heart Diesease:SHD)に対するカテーテル治療に長年関わってきており豊富な経験を有しております(図4)。

図4:心不全科で行っている構造的心疾患(SHD)へのカテーテル治療

図4

僧帽弁閉鎖不全症に対するカテーテル治療 MitraClip®

僧帽弁閉鎖不全症は一方向弁である僧帽弁の閉鎖がうまくいかず、結果左室から左房へ逆流を来す弁膜症疾患の中でも最も頻度の高い疾患です。弁自体が壊れることで生じる一次性僧帽弁閉鎖不全症と、心不全などで弁を支えている心臓が大きくなり二次的に弁の先端に隙間ができることで生じる二次性僧帽弁閉鎖不全症があります。二次性の場合、すでに心機能が低下しているうえに、逆流によりさらに病状が悪化することから、手術リスクが高くなることが多く、手術はあまり積極的には行われてきませんでした。近年、経皮的カテーテル修復術による治療MitraClip®が可能となり(図5、6、7)、欧米ではすでに多くの患者さんがこの治療を受けておられます。日本でも治験が開始され、2015年9月には当院で国内第一例目となるカテーテル治療に成功し、治験施設の中でも最も多くの症例を経験いたしました。

2018年4月からMitraClip®が保険適応となり、当院は全国でも数少ないトレーニング施設として認められています。

アニメーションによるMitraClip®手技

MitraClip®治療の利点としては、①人工心肺を使用せず自己心拍下で行えること、②造影剤を使用しない為腎不全患者さんでも治療が可能であること、③静脈からアプローチするため安全性が高いこと、などが上げられます。僧帽弁閉鎖不全症を患っていながら、開胸手術は躊躇されるようなハイリスク患者様、ご高齢のかたでも、治療可能な場合があります。

特に二次性僧帽弁閉鎖不全症は心エコーを行わないと見逃される可能性が高く、動いた時のいきぎれの原因である場合もございます。また安静時に僧帽弁閉鎖不全症が中等度でも、動いたときに重症僧帽弁閉鎖不全症となる患者様もいらっしゃいます。心不全と診断され、息切れがある患者様は一度心エコーや運動負荷心エコーなどでの精査することをおすすめいたします。当院では、経験の積んだエコー技師による心エコー検査ならびに運動負荷心エコーにも取り組んでおります。ご希望のある方はいつでも対応させていただきます。当院「弁膜症クリニック」へご相談ください。

図5:カテーテルによる僧帽弁修復術

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図6:全世界でのMitraClip®使用件数

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図7:適応患者基準

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大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療:経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)

大動脈弁狭窄症は高齢者に多い弁膜症で年月とともに進行性し、治療をしない限りきわめて生命予後の悪い疾患です。2013年より経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)が保険償還され、手術リスクが高い患者様には開胸手術をすることなく新しい弁(生体弁)を留置することが可能となりました。

当院は2011年12月の治験段階よりTAVIの経験を積み(図8)、2018年1月現在で西日本屈指の約300例TAVI手技件数を経験しております。

図8:大動脈狭窄症に対する治療の歴史

図8

またバルーン(風船)により拡張するタイプと自己拡張タイプの両タイプの治療が可能です(図9)。当院での治療は全症例、心臓外科、心臓血管内科、麻酔科などからなる専門のハートチームが十分に議論を重ね、適応基準からデバイス選択まで決定しています。万が一緊急手術を必要とした場合でも、万全な対策がとられています。当院「弁膜症クリニック」へご相談ください。

図9:国循での経カテーテル大動脈弁留置術

図9

閉塞性肥大型心筋症に対するカテーテル治療:経皮的心室中隔心筋焼灼術(PTSMA)

肥大型心筋症で心臓の出口が肥大して突出した筋肉のために、心臓内の圧が異常に高くなってしまっている場合があります(図10)。このようなタイプでは、症状が強く、急変する確率が高い場合には、厚くなった心筋を一部切り取るような手術を検討します。しかし、中にはカテーテル治療により同等の効果が得られる場合があります。図は、ワイヤーを入れて、心筋の厚い部分の動脈の枝を選んでいるところです。風船(バルーン)で出口をふさいで薬を注入し、心筋を化学的に壊死させる(焼灼する)と、数ヶ月後には肥大部が菲薄化し、手術で心筋を切り取ったのと同じ状態になります。

図10




僧帽弁狭窄症に対するカテーテル治療:経皮的交連裂開術(PTMC)

僧帽弁の狭窄が進行して血液の通過に制限が生じるようになると、労作時の息切れや倦怠感を感じるようになります。一般的には開胸手術で、狭くなってしまった弁を人工のものに取替える治療が行われますが、比較的軽症であれば、狭くなった弁(点線)をカテーテルの先についた風船(バルーン)で広げる(裂開)治療ができる場合があります。風船は弁が十分に広がったのを確認して、小さくたたんで回収します(図11)。

図11



<今後の治療への挑戦>

当院では心臓血管外科と連携して、先進的な治療並びに治験に数多く参加し常に最先端の治療を提供できる様に心がけています(図12、13)。これまで外科手術でのみ可能であった治療も海外ではカテーテル治療で低侵襲に行われている治療もあります。本邦でもいち早く導入してゆく予定であります。

図12:NCVC心不全科での新たなカテーテル治療 SHDに対する臨床試験・治験

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図13:国循ハートチームによるハイブリッド手術室でのSHD治療

図13

人工弁機能不全に対するカテーテル治療

弁置換術後の弁周囲逆流とは、人工弁自体の機能不全は認めないが人工弁周囲より血液逆流を生じている状態であり、そのうち1-5%の患者で重篤な溶血や心不全を呈します。標準治療は外科的手術ですが、再開心術であること、人工弁周囲の組織が虚弱であることなど手術リスクが高いことが問題です。海外では経カテーテル的閉鎖術は開心術に比べて手術リスクが低く、且つ有効な治療法であることが確認されています。術前に経食道心エコー等で、逆流孔の位置、形態、サイズを確認し(図14)、カテーテル治療は全身麻酔下にX線透視と経食道心エコーのガイド下で行い、人工弁周囲の逆流孔に閉塞栓(図15)を留置し、逆流を減少させます。

図14


図15


また、人工弁の中でも生体弁は耐久性が10数年しかなく、15年も経つと弁の破壊が進み再手術が必要となります。再手術はリスクが高く、また高齢者となった患者には困難となる可能性が高い。近年、このような患者様に対してTAVIのデバイス同様、人工弁の中にカテーテルによる弁挿入術が欧米では行われています。弁の中に新たに人工弁を挿入することからValve in valveとも呼ばれて、当院でも大動脈弁や僧帽弁に挿入されている人工弁に対して行い良好な成績を得ることが出来ています(図16)。


図16:人工弁(生体弁)内経カテーテル人工弁挿入術:Aortic Valve in Valve

最終更新日 2018年06月11日

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