外科手術が困難な方にも適応できる僧帽弁閉鎖不全症の治療法、MitraClip(マイトラクリップ)

動画提供:Abbott Japan LLC

国内唯一の循環器ナショナルセンターとして
MitraClipRの国内有数の症例数

国循の実績235症例

※2015年9月~2024年2月までの症例数

僧帽弁閉鎖不全症の主な症状

  • 息切れ
  • 動悸
  • せき
  • 足首の腫れ
  • 倦怠感
  • 体重増加

このような症状がある場合は
注意が必要です

MitraClip®は、
外科的治療が困難と判断された
僧帽弁閉鎖不全症(MR)に
有効な治療方法となります。

重症な僧帽弁閉鎖不全症(MR)の合併 図

重症な僧帽弁閉鎖不全症(MR)の合併

3年で3~4割の死亡率 図

3年で3~4割の死亡率

また、心不全と診断され入退院を
繰り返している患者さんでは、
5人に1人は重症な
僧帽弁閉鎖不全症(MR)を合併していると言われています。
機能性(二次性)のMRの場合、
3年で3~4割が死亡する
非常に死亡率が高い疾患ですが、
手術リスクが高いことを理由に
手術が検討されない症例が多い

現状があります。

引用論文:Rossi, Heart 2011;97:1675-1680/Eur Heart J. 2006 Nov;27(22):2725-36.

一次性MR
器質性(一次性)MR 図
二次性MR
器質性(一次性)MR 図

J Am Coll Cardiol 2009;54:860?5のデータより

機能性(二次性)のMRに対してMitraClipRは大変有効な治療手段となります。心不全を抑制することで、大きな予後の改善を期待することができます。気になる症状がある場合、早期にご相談ください。

MitraClip®の治療方法を
動画で解説

僧帽弁閉鎖不全症(MR)について

僧帽弁閉鎖不全症(MR)には
2種類のタイプがあります。

01
器質性(一次性)MR

僧帽弁の弁尖と乳頭筋を結んでいる「腱索(ケンサク)」と言われる部位が、何らかの原因で切れたり、延長してしまうことで、弁尖の接合部分に隙間ができ、血液が逆流してしまう僧帽弁閉鎖不全症を「器質性(一次性)MR」と言います。

器質性(一次性)MRの場合、基本的には外科手術治療が有効な治療方法となります。

基本的には外科的手術が有効な治療手段となります。
高齢などの理由により外科的手術が困難な方な場合、MitraClipRが有効な治療方法になります。
当院では、外科手術に関して低侵襲な手術となるMICSを実施しています。

器質性(一次性)MR 図

軽症、中等症

定期的フォロー

重症

外科手術を考慮

手術困難

MitraClip®

02
機能性(二次性)MR

何らかの原因によって心臓が拡大してしまい、僧帽弁の弁輪が大きくなったり、弁尖が引っ張られることが原因で、接合不全が生じ、血液が逆流してしまう僧帽弁閉鎖不全症を「機能性(二次性)MR」と言います。
心臓の収縮が低下した人に認めることが多く、心筋梗塞をおこした人の10人に1人、拡張型心筋症の4人に1人に重症MRを合併しているといわれています。

機能性(二次性)MRの場合、高い割合でMitraClipRが有効な治療方法となります。

心不全に合併した僧帽弁閉鎖不全症(機能性MR)の場合、高い割合でMitraClip®が有効な治療方法として適応になります。 実際にMitraClip®の治療の7割以上は、心不全に合併した機能性MRに使用されています

機能性(二次性)MR 図

軽症

心不全加療

中等症

薬物療法
心不全症状残存する場合は
負荷検査でMitraClipも検討

重症

MitraClip®などの
デバイス治療

外科手術が困難な方にも
適応できる治療方法
MitraClip(マイトラクリップ)

MitraClip®は、高齢や手術困難な一次性僧帽弁閉鎖不全症の方、心不全に合併した二次性僧帽弁閉鎖不全症の方に適応となる治療方法です。胸を切開する従来の外科手術よりも低侵襲なため、手術を受けることが難しかった患者さんに対しても治療が可能となり、患者さんの治療の選択肢が増えました。

MitraClip®のメリット

患者さんの負担が少ない
外科的な弁置換術のように胸を大きく切開しないので低侵襲です。
加えて、心臓を停止させる必要がありませんので、患者さんへの負担を極力少なくして治療することができます。
手術ができない人も
治療できる
外科手術が行えない、又は手術リスクが高い患者さんにも対応できる治療方法です。
高齢者や心臓以外の合併症のため治療が行えないようなハイリスクの患者さんも適応になります。
術後の社会復帰が早い
低侵襲であるため、術後、およそ1週間程度※1で退院できることが多いです。
※1 患者さんの病状や体調などにより入院期間が延びる場合があります。
心不全で入退院を
繰り返している方にも有効
心不全の治療をあきらめ入退院を繰り返している患者さんに対しても、心不全を抑制する有効な治療方法となる場合が多いです。

MitraClip®の治療の流れ

step01

太ももの付け根の静脈(大腿静脈)からクリップのついたシステムを出し入れすることができるプラスチックの管(シース)を右心房から左心房に挿入します。

step02

クリップの着いたシステムをシース内を通して左房に進めます。

step03

逆流が最も多い部位にクリップを移動して弁をクリップにのせてます。両方の弁がのったらクリップを閉じます。

step04

システムを抜去し、クリップが弁に固定されます。3か月位すると自分の細胞がクリップに膜をはり、さらに固定されます。

国立循環器病研究センターのMitraClip®の特徴

国立循環器病研究センターは心臓血管系と脳血管系の治療を行う
世界でも画期的な最先端の大規模医療・研究施設です。

すべての治療方法の中から
患者さん各々に適切な治療をご提案しています。

特徴01
日本初のMitraClip®を実施した
心不全に対する先進医療のパイオニア

当院では2015年に国内で初となる僧帽弁閉鎖不全症に対するMitraClip®治療を実施いたしました。

特徴02
重症心不全症例や困難な解剖症例の経験が豊富

当院では、心臓移植や埋め込み型人工心臓などが検討されるような治療が困難な重症心不全に対してもMitraClip治療を実施しており、困難な症例においても多くの実績を有しています。

特徴03
MitraClipRトレーニング施設として認定

MitraClipRの治療を行っている国内全114施設の中で16施設(2022年12月時点)しかない、トレーニング施設としての認定を受けており、MitraClipRを新規導入する施設への指導的役割も担っています。

特徴04
MitraClip®不適な症例においても低侵襲な外科的治療提案が可能

当院心臓外科では積極的に低侵襲的ロボット手術を行っており全国有数の症例数を有します。MitraClip®不適な症例においても小切開ロボット手術など患者さんに最適な治療の提案が可能ですのでご安心ください。

特徴05
全方向性にきめ細やかなケアが可能

心臓血管系と脳血管系を専門とするセンターのため、各部門のプロフェッショナルなスタッフを協力し、薬物療法、心臓再同期療法(ペースメーカーによる心臓収縮調整)、リハビリ、心移植、補助人工心臓など全方面においてケアが可能です。

安心のハートチーム

あらゆる分野の循環器のスペシャリストが
チームとして患者さんを支えます。

治療の流れ(受診案内)

僧帽弁閉鎖不全症の疑いがある症状が気になる方は早めに受診を

受診を希望される患者さんへ

国立循環器病研究センターは、循環器の専門病院です。循環器疾患における急性期医療を必要とされる方を診察する基幹病院でありたいと願っております。そのため、初めて診察を受けられる方は「かかりつけ医」の診察を受け、相談のうえ「紹介状(診療情報提供書)」をお持ちいただくようお願いします。

患者さんのご紹介について

平日、月曜日から金曜日まで毎日対応させていただきます。
対象となる患者さんがおられましたら、ぜひご紹介ください。

患者さんをご紹介いただく際には、「診療予約依頼書 兼 診療情報提供書」 に必要事項をご記入の上、専門医療連携室(06-6170-1348)へFAXでご送信ください。

「弁膜症クリニック 診療希望」とご記入いただきますようお願い申し上げます。

※月曜日から金曜日まで、すべての曜日で対応しています。
 曜日に関しましては、可能な限りご希望に沿わせていただきますので、ご遠慮なくお申しつけください。

医師紹介

天木 誠

心不全科 / 弁膜症センター医長

クリップ手技責任者

天木 誠

2008年、私はある論文に目をとめました。
「カテーテルで僧帽弁閉鎖不全症(MR)が治る」
その衝撃はいまでも鮮明に覚えています。一次性MRへの外科手術の効果は絶大ですが、高齢などを理由に手術を断念せざるをえない方がいます。また心不全に合併する二次性MRでは手術に耐えられないほど心臓が弱っている方も少なくありません。MitraClip治療ならこのように手術をあきらめていた多くの方に光が差すと確信しました。
私はMitraClip治療の国内導入に携わり、幸運にも2015年の国内初症例も当院で行わせていただきました。
MitraClip治療が極めて有効で、かつ高い安全性があるかは、この治療を受けられた患者さんからいただく数々の患者さんの声が物語っています。心不全でお困りのかた、手術をあきらめていた方、ぜひとも私にご相談ください。

神﨑 秀明

心不全科 / 弁膜症センター医長

経食道心エコー責任者

神﨑 秀明

MitraClip®を用いた僧帽弁修復術は、心エコーで描出された弁をカテーテルでクリップして僧帽弁逆流を治す治療です。1つないし、2つのクリップで逆流を止めるには、最も効果的なポイントを正確に同定する必要があります。また、解剖学的な理由でいつも鮮明なエコー画像を得られる訳ではありませんし、クリップ後に逆流が残存する場合、短時間で次の判断を行う必要があります。
当センターでは、きわめて多数の低侵襲治療が行われており、そこで培われた技術と迅速な診断、そしてしっかりとした体制と設備により、手術困難といわれた症例であっても治療を成功させてきました。まずは、ご相談いただけたらと思います。

北井 豪 写真

北井 豪

片岡 有 写真

片岡 有

入江 有 写真

入江 有

泉 知里 写真

泉 知里

天野 雅史 写真

天野 雅史

弁膜症クリニック担当表

天野 天木 入江/
神﨑/
北井

よくある質問

費用はいくら位かかりますか?

2018年4月より
MitraClip:経皮的僧帽弁クリップ術が健康保険の適応となりました。高額療養費制度をご利用の場合、更に負担を減らすことが可能です。

高額療養費制度を利用しない場合
約120万円
※金額はモデルケースでありあくまでも一例となります。

70歳以上の方の上限額
(平成30年8月診療分から)

適用区分 ひと月の上限額
(世帯ごと)
外来(個人ごと)
現役並み 年収1,160万円?
標報83万円以上/課税所得690万円以上
252,600円+(医療費-842,000) x 1%
年収約770万円?約1,160万円
標報53万円以上/課税所得380万円以上
167,400円+(医療費-558,000) x 1%
年収約370万円?約770万円
標報28万円以上/課税所得145万円以上
80,100円+(医療費-267,000) x 1%
一般 年収156万?約370万円
標報26万円以下
課税所得145万円未満等
18,000円
[年14万4千円]
57,600円
住民税非課税等 II 住民税非課税世? 8,000円 24,600円
I 住民税非課税世?
(年金収入80万円以下など)
15,000円

69歳以下の方の上限額

適用区分 ひと月の上限額(世帯ごと)
年収約1,160万円?
健保:標報83万円以上
国保:旧ただし書き所得901万円超
252,600円+(医療費-842,000) x 1%
年収約770?約1,160万円
健保:標報53万~79万円
国保:旧ただし書き所得600万円?901万円
167,400円+(医療費-558,000) x 1%
年収約370?約770万円
健保:標報28万~50万円
国保:旧ただし書き所得210万~600万円
80,100円+(医療費-267,000) x 1%
?年収約370万円
健保:標報26万円以下
国保:旧ただし書き所得210万円以下
57,600円
住民税非課税者 35,400円

厚生労働省:高額療養費制度について https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

MitraClip®を受けられないのはどのような場合ですか?
解剖学的にMitraClipが適応とならない方、経食道エコーが困難な方、極めて心機能の悪い方、並存する他の病気のため余命が長くないと考えられる方などは、経皮的僧帽弁クリップ術を受けることができません。
入院期間はどのくらいですか?
順調に経過した場合には、1週間以内に退院可能です。
ただし、リハビリや薬物調整のためにより長く入院期間が必要となることもあります。
治療による痛みはどれぐらいですか?
全身麻酔を行い、患者さんが苦痛を感じることの無いよう、適切に管理いたします。原則、外科手術のように傷は胸には残りませんが、まれに術後に足の付け根のカテーテル挿入部が痛むことはあります。全身麻酔のため、術後にのどに違和感をおぼえたりすることがあります。これらは数日から一週間でおさまります。
希望すればMitraClip®を受けることができますか?
一次性僧帽弁閉鎖不全症の治療の基本は外科手術であるため、僧帽弁形成術、置換術が治療の第一選択になります。マイトラクリップは手術が困難と判断された方が適応となります。ただ単に「外科手術が嫌だ」と言う理由では治療を受ける事が出来ません。
二次性僧帽弁閉鎖不全症の治療へは手術よりもマイトラクリップが適していることが多いのですが、その他の併存疾患も考慮して総合的に判断いたします。
僧帽弁閉鎖不全症へのクリップ治療の必要性につきましては、当院の専門の医療チームで判断致します。
治療後のMRI検査は可能でしょうか?
MRI検査は(留置直後から)受けることが可能です。
どのような合併症がありますか?

下記のような合併症が起こる可能性がありますがすべて発生率は1%前後とされております。

血栓塞栓症
カテーテルやクリップを体内に入れた際に血栓が形成されたり、気泡が生じ、それらが脳の血管に詰まってしまう(塞栓)合併症です。
心タンポナーテ・血胸
カテーテルを挿入する際に心臓を損傷することで生じる合併症です。心臓の周りに血液が溜まり、血圧低下や呼吸状態の悪化が起こりえます。
クリップの脱落・塞栓
僧帽弁の前尖と後尖を把持したクリップが外れてしまい、他の臓器に流れる(塞栓)合併症です。また、片弁尖把持といって、片側の弁尖がクリップから外れてしまい、僧帽弁逆流を制御できなくなる合併症もあります。
心房中隔欠損症(医原性)
マイトラクリップは右心房から左心房へカテーテルを入れますが、その際にカテーテルの太さの分、孔は心房中隔に残ります。この孔を通じ、血液が移動(シャント)し、まれに呼吸が苦しくなったり、心臓に負担をかける場合があります。
僧帽弁狭窄症
マイトラクリップにより弁尖(前尖、後尖)同士を把持しますので、逆に弁が開きにくくなり、僧帽弁狭窄症が生じることがあります。術中に経食道心エコー図で観察し、狭窄がどこまで許容できるか、僧帽弁の逆流の制御を加味して、判断いたします。
食道潰瘍
マイトラクリップは全身麻酔ですが、術中、経食道心エコーを食道へ数時間留置し、操作を行います。それにより術後食道に潰瘍ができることがあります。
穿刺部合併症・感染
手術後にカテーテルを挿入した場所に血腫や創部感染、留置したクリップに感染(感染性心内膜炎)が生じたりすることがあります。
遠方なのですが、国循で治療は受けられますか?
もちろん受けられます。
また、遠方の患者さんの場合、初診外来を省き、直接検査入院頂くことも可能です。
来院されるまえに事前に紹介状などで適応を判断することも可能ですので、かかりつけ医から当院医療連携室を通じてご連絡いただくとスムーズかと思います。

国循にご興味がある医師の方へ

「臨床手技」「臨床研究」どちらにおいても
充実した学びの場となることをお約束いたします。

国立循環器病研究センターは、国内最高峰の医療を提供し、かつ併設する研究所との連携もさかんに行われています。
臨床手技を極めたい方にも臨床研究に注力したい方にも、充実した学びと経験の場を提供しています。

見学・研修をご希望の方はこちらまでご連絡ください。

education@ml.ncvc.go.jp

医師の方は電話(06-6170-1069 内線31125)でも受け付けています。