大動脈弁狭窄症の新しい治療法 TAVI 経カテーテル大動脈弁植え込み術「タビ」 World's Best Hospitals 2022に選出

動画提供:Edwards Lifesciences Corporation/
MEDTRONIC JAPAN CO., LTD/
Abbott Japan LLC.

国立循環器病研究センターは、
国内唯一循環器ナショナルセンターとして
弁膜症に対する治療の質を追求しています。

TAVI実績891

※2011年11月から2023年7月 ※TAVI治験を含む

  • 息切れ
  • 動悸
  • 胸痛
  • 疲れやすい
  • ふらつき
  • 心臓弁膜症の原因は加齢に伴うものが増えています

  • 65歳を過ぎたら急速に増えていく心臓弁膜症

  • 心臓弁膜症は心不全の原因の一つです

心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。

弁膜症の代表的な疾患に大動脈弁狭窄症があり、手術が必要となる弁膜症の原因として最も多い疾患です。

弁膜症は心不全の原因の1/4を占めます

日本における心不全の原因疾患
中等度~高度弁膜症発症頻度と
加齢の関係

大動脈弁狭窄症の原因は、加齢に伴うものが増えています

大動脈弁狭窄症は、加齢に伴って増える心臓の病気です。原因は先天性と後天性があり、以前はリウマチ熱が主な原因でしたが、抗生物質の普及により減少しました。現在は、加齢による弁の変性や石灰化が主な原因で、高齢化が進むにつれて増えています。

高齢者で増えている大動脈弁狭窄症。
65歳を過ぎたら心臓の検査を

大動脈弁狭窄症は、最初は心臓の「弁」の病気ですが、進行すると心筋(心臓を動かす筋肉)が障害され、心臓全体の病気になります。 この状態になると、弁の治療だけでは心筋の障害は回復せず、心臓は正常に働かなくなります。 心臓弁膜症は自然に治らないため、早期の診断と治療が大切です。

※心臓弁膜症の有病率は、年齢とともに上がる傾向にあります。日本では、65~74歳で約150万人、75歳以上で約235万人の潜在患者がいると推測されます[1][2]。
1: Nkomo VT, et al. Burden of valvular heart diseases: a population-based study. Lancet. 2006;368:1005-11.
2: 総務省統計局. 人口推計の結果の概要 令和2年4月報(令和元年11月確定値). Available from: https://www.stat.go.jp/data/jinsui/pdf/202004.pdf(アクセス日:2020年4月28日)

大動脈弁狭窄症は、心不全の原因の一つです

大動脈弁狭窄症は、心不全の原因の一つとして認識されています。 心不全とは、心臓の機能が低下し、心臓に過剰な負担がかかる状態を指します。 慢性心不全と急性心不全に分けられ、慢性心不全の患者は悪化による再入院が繰り返され、身体機能の悪化が進む悪循環が特徴となります。大動脈弁狭窄症の早期発見と適切な治療が、心不全の予防や症状の悪化を抑えるために重要です。

※引用元:心臓弁膜症サイト(一部改変)

大動脈弁狭窄症とは?

心臓は血液を全身に送るポンプの働きをしています。全身に酸素を送り届けた血液(静脈血)は、右心房に帰ってきます。帰ってきた静脈血は、酸素を補給するために右心室から肺へ送られます。肺で酸素を取り込んだ血液(動脈血)は左心房へ戻り、その動脈血は左心室の出口である大動脈弁から勢いよく全身へ送り出されます。
大動脈弁は、送り出した血液が心臓に逆流しないよう、3枚の弁が組み合わさり、大きく開きしっかり閉じる仕組みになっています。
この大動脈弁が加齢などにより石灰化して硬くなり、弁が開きにくくなることで、血液の流れが妨げられてしまう疾患を大動脈弁狭窄症といいます。

大動脈弁狭窄症の症状

健康診断で心雑音や、エコーで弁膜症と指摘された方は、早期にご受診ください。

息切れ・動悸
今まで感じなかった息切れを感じる
洗濯物を干す、重い荷物を持つと息苦しい
脈の乱れを感じる
失神
大動脈弁狭窄症の方で失神した場合は、すぐに受診してください。非常に危険な状態となっている可能性があります。
胸痛(狭心症)
なんとなく胸が重たい感じ
胸が締め付けられるように痛い
倦怠感
「だるい」「疲れた」「疲れやすい」
休んでも回復しない

動悸・息切れ・疲れやすいなど、心臓弁膜症の自覚症状が出た場合は、 早期に循環器専門医による診断と治療を受けてください。

大動脈弁狭窄が進行して自覚症状が出現すると・・・

平均生存期間(年)グラフ1
平均生存期間(年)グラフ2

※参照元:Post Mortem Study.1968 Ross and Braunwaid.Cireulation.1068.

未治療の大動脈弁狭窄症患者が存在

本邦において多くの未治療重症大動脈弁狭窄症患者が存在する可能性

推計患者数に対するTAVI/SAVRの手術数をみると、多くの重症大動脈弁狭窄症患者が手術による治療を受ける必要がありながらも、治療に至っていない可能性が示唆されています。

大動脈弁狭窄症罹患率
(日本を含む37カ国のデータ)
60歳以上の重症
大動脈弁狭窄症患者数(推計)

56

60歳以上の全大動脈弁
狭窄症患者約284万人のうち
5人に1重症
日本における手術治療*
(2018年)
2
*SAVRとTAVIの合計症例数

※参照元:心臓弁膜症サイト

大動脈弁狭窄症の治療方法

重症となった場合には、手術治療が必要となります。

大動脈弁狭窄症の治療法は、症状がどれだけ進行しているかによって変わります。症状が軽い場合は、薬による内科的治療となりますが、症状を緩和する、または進行を遅らせることが目的となり、狭くなっている大動脈弁の根本的な改善には至りません。そのため、症状が重度の場合は、手術によって狭くなった大動脈弁を取り替える治療が必要になります。

75歳以上の患者様はハートチームで検討し、
患者様のご希望も踏まえTAVIを検討いたします

※参照:日本循環器学会/日本胸部外科学会/日本血管外科学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン.2020年改訂版 弁膜症治療のガイドラインより作図

大動脈弁狭窄症の低侵襲な治療手段TAVI

人工の弁に取り替える手術として、代表的な治療法は「大動脈弁置換術」という開胸して行う手術です。この手術は、心肺を一時的に停止し、狭窄している大動脈弁を人工弁に取り替える外科手術となります。
「大動脈弁置換術」は安全な手術ではありますが、開胸などの侵襲性が高いことや、人工心肺装置を用いるため、患者さんへ負担を強いることになり、ご高齢の方や、癌・ステロイド内服中・透析中の方など、肺や肝臓、腎臓などに重症な疾患を抱える方へ行うことが困難となる場合があります。そのような患者さんを対象に低侵襲な治療法として開発されたのが「経カテーテル大動脈弁留置術 TAVI」です。  加えて、TAVIは、良好な治療成績を受けて適応が拡大し、80歳以上の患者さんに対する標準治療となっています。75歳以上であっても、解剖学的にTAVIリスクがなければ、ハートチーム、患者さんと十分な検討のもと治療を行うこともあります。

TAVIのメリット

負担が少ない(低侵襲)
傷口1cm程度(鼠径部からの治療の場合)
外科手術に比べて痛みが少ない
入院期間が短い
数日での退院も可能
翌日からリハビリ開始
退院直後から通常生活
退院直後から通常の生活が送れるように
術後から症状の改善

従来の外科手術(大動脈弁置換術)に比べて体への負担が少なく退院までの入院期間が短いのが特徴です。
TAVI治療を受けたほとんどの患者さんが、術直後から息切れや倦怠感の症状改善を認めています。
加えて、TAVIは、高齢や重症の患者さんへの治療の選択肢を広げました。
当院では、他院でTAVIも難しいと言われた方に対しても、ハートチームで協力し最善の治療をおこなっています。

TAVIの人工弁の種類と施術動画

バルーン拡張型人工弁

※動画提供:Edwards Lifesciences Corporation

自己拡張型人工弁

※動画提供:MEDTRMEDTRONIC JAPAN CO., LTDONIC JAPAN CO., LTD

自己拡張型人工弁

※動画提供:/Abbott Japan LLC.

国立循環器病研究センターのTAVI治療の特徴

国立循環器病研究センターは心臓血管系と脳血管系の治療を行う
世界でも画期的な最先端の大規模医療・研究施設です。

すべての治療方法の中から
患者さん各々に適切な治療をご提案しています。

特徴01
心臓外科、心臓血管内科(カテーテル治療、心臓超音波)の
スペシャリストが治療にあたります。
  • カテーテル治療スぺシャリストと年間200例以上の開心手術を行う外科医が対応し、最適な治療方法を提供することができます。
  • 弁膜症および心不全のガイドライン作成メンバーによる評価を実施、適切なタイミングでの治療を提案します。
特徴02
外科的大動脈弁置換術(胸を開いて大動脈弁を取り替える手術)の手術件数が豊富であり、手術成績が非常に安定しています。CT検査で、TAVI治療が向いていない大動脈弁であることがわかった場合には、より最適な外科手術を選択します。
心臓外科の詳細はこちら
特徴03
血管性状が悪く他院で通常の大腿動脈(足の付け根の動脈)からのTAVIができないと言われた患者さんにおいても、大動脈や鎖骨下動脈など別の血管を使った治療アプローチを用いてTAVIを行うことができます。そのため、治療が難しい透析患者さんであっても安全にTAVIを行うことができます。
特徴04
狭心症など冠動脈疾患の治療経験豊富であり、冠動脈疾患を合併している大動脈弁狭窄症の患者さんにも最適の治療法の選択ができます。また、TAVI後に狭心症、心筋梗塞を起こしてしまっても、経験豊富なカテーテル治療スペシャリストがしっかりと対応します。
特徴05
365日24時間対応可能な診療体制。緊急カテーテル治療、緊急外科手術も行うことができるため、安心して受診できます。

国循弁膜症(SHD)センターでは
全てのSHDに対する
低侵襲的治療が可能です

患者さんに最適な治療をご提案します

日本で実施可能な低侵襲先端医療

全治療可能かつ付帯項目も充足全国4施設 図

国循SHDセンターの特徴

  • 全SHD低侵襲治療ができる
    数少ない施設
  • 治験開始施設
    (新しいデバイス)
     
  • 全国トップレベルの
    症例数と治療成績
  • 365日24時間
    緊急対応可能
  • MitraClip教育施設として
    指導的役割
  • 緊急に並列で対応可能
  • 透析や人工弁不全患者への
    TAVI可能
  • 循環器疾患に特化した病院

安心のハートチーム

あらゆる分野の循環器のスペシャリストが
チームとして患者さんを支えます。

治療後の生活を支えるリハビリ

大動脈弁狭窄症に伴う心不全で長期間入院すると心臓の機能低下に加えてしばらく安静を強いられるため、体力が低下します(身体的要因)。さらに心不全を突然発症したことで、今後活動や運動をどの程度までしていいのかわからない、という強い不安感が生じます(心理的要因)。また、心不全を一度発症した患者は、同じ病気を再度発症する危険性が高いため、再発予防への取り組みが非常に重要となります。

心臓リハビリテーション(心リハ)は、心不全発症により低下した体力を運動療法で回復させて自信を取り戻し、心不全が再発しないよう予防法を学び実践していくためのプログラムです。入院中のリハビリだけでなく、体力に自信がない方、リハビリを希望される方は5ヶ月間の外来での治療プログラムも受けられます。

受診方法について

動悸・息切れ・疲れやすいなどの症状が気になる方は早めに受診を

国立循環器病研究センター 弁膜症クリニック(SHDセンター)では、弁膜症を有する患者さんに専門的な知識と先進的な検査を駆使し、正確な診断とより良い治療を提供しております。
このクリニックでは、患者さんは循環器専門医と心臓血管外科専門医で構成された専門家チームの一人の診察を受けますが、情報はチームで共有されカンファレンスで治療方針が決定されます。その結果、紹介医の先生方や患者さんにはより良い治療法を提案し、必要に応じて外科手術やカテーテル治療を行わせていただきます。

受診を希望される患者さんへ

国立循環器病研究センターは、循環器の専門病院です。循環器疾患における急性期医療を必要とされる方を診察する基幹病院でありたいと願っております。そのため、初めて診察を受けられる方は「かかりつけ医」の診察を受け、相談のうえ「紹介状(診療情報提供書)」をお持ちいただくようお願いします。
紹介状を持参しなくても受診可能ですが、予約診療ではないため通常よりも時間がかかる場合があります。
また、厚生省により、紹介状を持たずに特定の病院を受診する場合等の「特別の料金」を徴収することが決められており通常よりも高額のお支払いが必要となります。

患者さんのご紹介について

平日、月曜日から金曜日まで毎日対応させていただきます。
対象となる患者さんがおられましたら、ぜひご紹介ください。

患者さんをご紹介いただく際には、「診療予約依頼書 兼 診療情報提供書」 に必要事項をご記入の上、専門医療連携室(06-6170-1348)へFAXでご送信ください。

「弁膜症クリニック 診療希望」とご記入いただきますようお願い申し上げます。

※月曜日から金曜日まで、すべての曜日で対応しています。
 曜日に関しましては、可能な限りご希望に沿わせていただきますので、ご遠慮なくお申しつけください。

医師紹介

福嶌 五月 写真

TAVIによる弁膜症治療は、従来の開胸手術に耐えられない高リスクの患者さんの命をたくさん救ってきました。国循のハートチームは、以下の日本のリーダー的なTAVI専門医師に加えて、内科医、外科医、麻酔科医、集中治療医、放射線科医、看護師、薬剤師、臨床工学技士、栄養士、ソーシャルワーカーなど多くの専門職で構成されています。TAVIが日本に導入されてから、新しいTAVI関連デバイス開発に積極的に参加しつつ、TAVI実施施設からも超高リスクの患者さんをご紹介いただくなど、TAVI最先端チームとして活動してきました。ハートチームの目標は、弁膜症で困っておられる患者さんの健康への不安を解消し、元気に長生きしていただくことです。国循が世界に誇る最先端技術をもって、患者さんとご家族に幸せを届けます。

髙木 健督 写真

冠疾患科・SHDセンター医長
TAVR指導医(SAPIEN, Evolut)

髙木 健督

2013年に日本でTAVIが承認されて以降、新東京病院、大垣市民病院においてTAVI治療を立ち上げチームリーダとして多くの手術を行ってきました。2020年10月からは、国立循環器病研究センターにてTAVI治療に携わっております。TAVIだけでなく、経皮的冠動脈形成術(PCI)の専門家でもあり、複雑な冠動脈合併症に対しても安全かつ確実な治療が提供できます。さらに、日本国内において指導医(企業プロクター:エドワーズ、メドトロニック)として認定されており、他の医療機関の先生へのアドバイスも行っております。
大動脈弁狭窄症でお困りの患者さんが、TAVI治療を受けて元気になってもらえるよう全力で診療をさせて頂きますので、いつでもご相談ください。

川本 尚紀 写真

心臓外科医長
TAVR指導医(SAPIEN, Evolut)

川本 尚紀

2019年から1年間カナダの病院でTAVIを含む低侵襲心臓手術のトレーニングを積み、外科医としてTAVI治療に携わっています。大腿動脈からのTAVIが不可能な患者様に対して、鎖骨下動脈アプローチ、大動脈アプローチ(側開胸含む)、心尖アプローチなどのTAVIを提供することも可能です。また、冠動脈バイパス術や弁膜症に対する外科治療のメインオペレーターの一人でもあるため、冠動脈疾患などを合併した場合には、TAVI+冠動脈バイパス術の1期的治療や、TAVI治療が不適格な場合でも低侵襲大動脈弁置換術など、患者様に最適な治療を提供することが可能です。是非、お気軽にご相談ください。

神﨑 秀明 写真

心不全科医長
TAVR指導医(SAPIEN, Evolut)

神﨑 秀明

経カテーテル大動脈弁留置術が本邦で保険承認される前の治験の段階から10年以上、本治療に携わってきました。現在も学会認定TAVI実施医・指導医として、現場でカテーテル治療の安全と質の向上に努めています。当センターでは循環器領域における各分野のスペシャリストの支援のもと、一般には困難と言われる症例であっても、治療を成功させてきました。まずは、ご相談いただけましたら幸いです。

※本サイトでは、TAVRをTAVIと表記しています。

よくある質問

費用はいくら位かかりますか?
■健康保険を使用される場合
  • 75歳未満の方 約180万円(3割負担)
  • 75歳以上の方 44,400円(所得により異なります)
■高額療養費制度を利用される場合(一般所得の場合)
  • 75歳未満の方 約14万円
  • 75歳以上の方 44,400円

※部屋代・食事代は別途必要です。

※上記は概算です

入院期間はどのくらいですか?
術後の状態によって前後することもありますが、入院から退院まで1週間から10日程度です。
手術の翌日には歩くことができ、患者さんの状態に合わせながら理学療法士がリハビリテーションを行います。食事も朝からとることができます。
なお、治療入院の期間は平均1週間程度です。(状態によって前後します)
治療で家族に負担をかけてしまわないか不安です。

心不全が発症すると、その後の再入院を繰り返す可能性があります。心不全の原因となる病気の早期発見と適切なタイミングでの治療が重要です。心不全が疑われた患者様の入院には、1回につき120万円程度の費用がかかるということが報告されています。

※参照元: kitagawa T,et al.:PLoS One.2018;13(1):e0190979

治療による痛みはどれぐらいですか?
基本的に治療は全身麻酔で行われますので、痛みを感じることはありません。治療後にカテーテルを挿入した足の付け根に不快感があったり、鎖骨下、経上行大動脈アプローチの場合には傷口の痛みが残ることがあります。全身麻酔の場合は術後にのどに違和感をおぼえたりすることがあります。これらは数日から一週間でおさまります。局所麻酔で行う際にも局所麻酔以外にも鎮静剤(睡眠剤)を用いて術中は軽くウトウトした状態で寝て頂くことが多いです。
TAVIを受けられない患者さんはいますか?
下肢や腹部の血管の問題、胸郭や心臓周囲の問題でカテーテルの挿入部が得られない患者さんや、全身状態があまりに悪い患者さんはTAVI治療によって利益を得られない可能性があります。そのような場合であってもまずは当院に受診して頂き、諸検査を施行の上、当院のハートチームでよく検討させて頂きたいと思います。
年齢に関係なくTAVIは受けられますか?
弁膜症治療のガイドライン(2020年改訂版)では、TAVIとSAVR(外科的大動脈弁置換術)の明確な年齢基準は設定されていません。TAVIかSAVRの選択における1つの目安として、80歳以上はTAVI、75歳未満はSAVRとされています。
状態、解剖学的要件により、75歳未満の症例でもTAVI、80歳以上の症例でもSAVRを選択することもあります。
75歳から80歳の治療選択については、それぞれのメリット、デメリットを患者さんに十分説明した上で個々に検討することが重要です。
治療を受けられる年齢の目安を教えてください。
90歳以上の方でも治療の効果が得られるというデータがあります。
どんな合併症がありますか?
大きな合併症は死亡、心筋梗塞、脳卒中、弁輪破裂、左心室破裂、カテーテル弁の移動、急性大動脈弁閉鎖不全症(結果として急性心不全)、血管損傷(動脈解離、破裂)、房室ブロック(永久ペースメーカー)などがあります。
手術中に輸血は必要ですか?
必須ではありませんが、術中の合併症による出血で必要となる場合があります。そのため、術前に予め緊急時に備え、輸血の準備はさせて頂きます。
必要がない場合には輸血は致しません。
治療後にMRI検査は可能ですか?
経カテーテル生体弁は磁性がありませんので問題はありません。
現在人工弁・生体弁が入っていますが、TAVIで弁を交換することはできますか?
現在生体弁が入っている方で経年劣化による再手術が必要な方はTAVIが保険適応となりました。また、2023年4月からTAVI治療後にもTAVI治療ができるようになりました。なお、適応の決定には詳しい検査が必要となります。
遠方なのですが、国循で治療は受けられますか?
もちろん受けられます。
また、遠方の患者さんの場合、初診外来を省き、直接検査入院頂くことも可能です。
90歳以上でも手術可能でしょうか?
90歳以上の患者さんでも日本において90歳以下の方と比較して安全にTAVI治療を行う事ができるため、安心してTAVIを受けてください。当院でも90歳以上の多くの患者さんが治療を受けて元気に退院しています。

文献:日本における90歳以上のTAVI治療の成績 Clinical outcomes of transcatheter aortic valve implantation (TAVI) in nonagenarians from the optimized catheter valvular intervention‐TAVI registry Catheter Cardiovasc Interv. 2020;1–8.

治療適応なのに治療を行わなかったらどうなりますか?
TAVIによる治療を1度でも拒否したことのある患者(拒否群)では、非拒否群に比べて30日および1年死亡率が有意に高い結果となっています。

※本邦におけるOCEAN-registryに参加した重症大動脈弁狭窄症に対し、適切なタイミングでのTAVI治療を拒否した患者は、治療した患者と比較し1年後の全死亡率が10.3%と比較し28.8%と上昇していました。 

文献:Shimura et al. J Am Heart Assoc. 2018 Sep 18;7(18):e009195.

国循にご興味がある医師の方へ

「臨床手技」「臨床研究」どちらにおいても
充実した学びの場となることをお約束いたします。

国立循環器病研究センターは、国内最高峰の医療を提供し、かつ併設する研究所との連携もさかんに行われています。
臨床手技を極めたい方にも臨床研究に注力したい方にも、充実した学びと経験の場を提供しています。

見学・研修をご希望の方はこちらまでご連絡ください。

education@ml.ncvc.go.jp

医師の方は電話(06-6170-1069 内線31125)でも受け付けています。