心不全部
対象疾患・治療法
心筋症
当院では様々なタイプの心筋症について多数の診療実績が御座います。心筋生検や造影MRI検査、採血検査など疾患に応じた検査を行い、診断を確定致します。主な心筋症は以下の通りです。
<拡張型心筋症>
左心室の壁が薄く伸びて拡大し、全体的に収縮力低下を来す疾患です。内服薬で心機能の改善が期待できます。心機能低下が進行すると入院して強心薬を用いたり、場合によっては補助循環装置や心臓移植などの治療を検討したりしなければならないことがあります。当科では心血管系集中治療部門や移植部門と連携し、様々な補助循環装置の使用や心臓移植についても適応を検討致します。
<肥大型心筋症>
左心室の壁が厚くなり、様々な障害を来す疾患です。特に心臓の出口付近の心筋が厚くなり、出口を閉塞するタイプの閉塞性肥大型心筋症では息切れや失神、胸痛、場合によっては突然死なども来たします。当科ではカテーテルを用いて肥大した心筋を焼く経皮的心室中隔焼灼術(PTSMA)や、心臓外科部門と連携して肥大した心筋を手術で取り除く治療を数多く行っております。
<心アミロイドーシス>
心筋へのアミロイド蛋白の沈着によって、心臓の収縮・拡張が障害され、息切れや浮腫みといった心不全症状を起こす病気です。アミロイドーシスにはいくつかのタイプ(型)がありますが、特にトランスサイレチン型に対しては、ここ数年新しい治療が登場しています。当施設は、トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対するビンダケル処方施設に認定されています。
<心サルコイドーシス>
原因不明の炎症により肉芽腫という結節が形成される疾患です。様々な臓器に生じますが、心臓に発症した場合、進行性に心機能の低下や不整脈などを起こします。診断にはPET検査や造影MRI検査など専門的な検査を組み合わせて行う必要があります。ステロイドや免疫抑制剤で治療します。
<その他の心筋疾患>
当院ではその他にも虚血性心筋症、拘束型心筋症、ファブリ病、薬剤性心筋症などの心筋疾患についても治療経験が豊富です。是非ご相談下さい。
心臓弁膜症
心臓には大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、三尖弁と4つの弁があります。弁は心臓の各部屋を区切り、逆流を防ぐ働きがあります。弁膜症とはその弁が異常を来し、逆流したり(閉鎖不全症)、硬くなり開きにくくなったり(狭窄症)する疾患のことです。診断や病状評価には経胸壁心臓超音波検査、経食道心臓超音波検査、カテーテル検査などを行います。以下に主な弁膜症を挙げます。
<大動脈弁狭窄症>
心臓の出口である大動脈弁が開きにくくなります。そのため、心臓に強い圧力がかかる上、全身に血液が十分に送れなくなり、息切れや失神、胸痛、時には突然死を起こします。治療法としては外科的に人工の弁に置き換える人工弁置換術があります。また、手術リスクの高い患者さんにはカテーテルにより人工弁を送り込み置き換える治療(経カテーテル的大動脈弁置換術:TAVI)も行っております。
<大動脈弁閉鎖不全症>
大動脈弁が閉まりきらず、逆流する病気です。逆流した血液が心臓に流れ込み負担がかかるため、放置すると心機能が低下します。進行すると息切れやむくみなどの心不全症状を来します。治療法は外科的に人工の弁に置き換える人工弁置換術です。
<僧帽弁狭窄症>
左心室と左心房を仕切る僧帽弁が固くなる病気です。昔は細菌感染であるリウマチ熱に伴うものが多かったのですが、近年は長寿命化により加齢性変化に伴うものが増えています。通常は外科的に人工弁置換術を行います。当院では弁の形態によってはカテーテルにより、風船で狭くなった弁を押し広げる治療(経皮的僧帽弁交連裂開術:PTMC)も行います。
<僧帽弁閉鎖不全症>
僧帽弁が閉まりきらず、逆流する病気です。逆流した血液が肺の血管に負担をかけ、息切れなどの心不全症状を来します。通常は外科的に人工弁置換術を行います。当院では弁の形態や手術リスク次第ではカテーテルによって逆流の原因となる弁の隙間をクリップで留める治療(経皮的僧帽弁接合不全修復システム:MitraClip®)を行っております。
<人工弁機能不全>
以前に心臓弁膜症に対して人工弁置換術を行った患者さんにおいて、その人工弁が何らかの理由で故障した状態を言います。原因は経年劣化、細菌感染など様々です。根治療法は外科的に再度人工弁置換術を行うことですが、手術リスクが高い場合には内服薬で様子を見ることもあります。近年、大動脈の生体弁における機能不全についてはカテーテルにより人工弁を送り込み置き換える治療(経カテーテル的大動脈弁置換術:TAVI)も行うことができるようになり、当科でも実施しております。
その他の心疾患
<感染性心内膜炎>
細菌が血液内に侵入し、心臓の弁や壁に付着して構造を破壊してゆく疾患です。全身の感染症や外傷に合併するだけでなく、歯科治療などの処置により生じることも知られており、不明熱の原因となることも多いです。弁の破壊により弁膜症を来すことで心不全を発症します。また、細菌の塊が他の臓器に飛散し、脳梗塞や腎梗塞など多臓器の梗塞を起こします。十分な量の抗生剤による長期治療に加え、弁の破壊の程度や菌の塊の大きさ次第では弁置換術や菌の塊を取り除く手術が必要です。
<心筋炎>
心筋に炎症を生じて進行性に心機能が低下する疾患です。原因によってウイルス性心筋炎、好酸球性心筋炎など複数のタイプに分類され、治療も異なります。急激に病状が進行する劇症型心筋炎では状況によって補助循環や心臓移植を検討する必要があります。
<心膜炎>
心臓を包む心外膜に炎症を生じます。ウイルスや悪性腫瘍、結核などが原因となります。原因によって抗炎症薬を使用したり、腫瘍や結核などの原因に対する治療を行ったりします。炎症により心外膜の内側に水が急速に溜まって心臓を圧迫した場合、針を指して水を抜く必要があります。
<収縮性心膜炎>
心臓を包む心外膜が炎症や開胸手術後の変化により固く癒着した状態です。心臓が十分に広がることができず、息切れやむくみなどの心不全症状を来します。診断に専門的な知識を要し、カテーテルや心臓超音波検査で確定されます。治療法は内科的に症状を和らげる方法の他、外科的に固くなった心外膜を切除する手術を行うこともあります。
原因不明の息切れ、むくみなど
当院では原因不明の息切れやむくみなど、心不全を疑う症状にお困りの患者さんの評価も数多く行っております。様々な専門的な評価を行い、スタッフが集まって協議することで原因を明らかにしていきます。それにより症状が心臓からくるものなのか、肺からくるものなのか、また、どのような治療ができるのかなど患者さんと相談しながら丁寧に診療を進めて参ります。
最終更新日:2023年08月31日