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心血管リハビリテーション科

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心臓リハビリテーションとは

心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)は、心臓病患者の体力と自信を回復させ、再発予防法を学び実践していくための治療プログラムです
急性心筋梗塞や心不全など心臓病を発症し入院すると、心臓の機能低下に加えてしばらく安静を強いられるため、体力が低下します(身体的要因)。さらに心臓病を突然発症したことで、今後活動や運動をどの程度までしていいのかわからない、という強い不安感が生じます(心理的要因)。また、心臓病を一度発症した患者は、同じ病気を再度発症する危険性が高いため、再発予防への取り組みが非常に重要となります。
心臓リハビリは、心臓病発症により低下した体力を運動療法で回復させて自信を取り戻し、さらには心臓病が再発しないよう予防法を学び実践していくための、5ヶ月間の治療プログラムです。

心臓リハビリの対象疾患

心臓リハビリの対象疾患は、医療保険制度により定められた、急性心筋梗塞、狭心症、慢性心不全、心臓術後、大血管疾患、末梢動脈疾患、経カテーテル大動脈弁置換術後、の7つの疾患群です。したがって、当科では、心臓血管内科部門(冠疾患科、血管科、肺循環科、不整脈科、心臓血管系集中治療科、成人先天性心疾患科)心臓血管外科部門(心臓外科、血管外科)、心不全・移植部門(心不全部、移植医療部)、脳血管・神経内科、糖尿病・脂質代謝内科、腎臓・高血圧内科など、多くの部門から心リハの依頼を受けています。

入院中から運動療法と生活習慣指導を開始

入院後、治療により病状が安定し、病棟で短い距離を歩いて問題がなければ、7階心血管リハビリテーション室にて運動療法と生活習慣指導を始めます。

心血管リハビリテーション室

リハビリ室では、歩行や自転車こぎの有酸素運動を中心に実施し、徐々に距離や時間、強度を伸ばします。長期安静により筋力が著しく低下している場合は、つま先立ちなどの軽い筋力トレーニングも併せて実施します。こうした運動療法は、医療スタッフの監視と指導のもと、心電図をモニターしながら安全に実施することができ、何か問題が生じても直ちに対応が可能です。

さらに、多職種スタッフから個別の生活習慣指導や集団講義(心臓病教室)を受けることで、心臓病やその予防法について詳しく学び、再発予防に取り組むことができます。

退院後は在宅リハビリと通院リハビリを併用

心臓リハビリテーションプログラムの保険適応期間は、150日(5ヶ月)間です。退院後は、在宅運動療法(非監視下)と、外来通院リハビリ(監視下)を併せて実施します。
外来通院リハビリに参加することにより、運動療法の効果が上がり、再発予防に関する知識や経験も多く得られますので、プログラム期間中は週1~3回参加されることを推奨しています。
退院後は自宅での生活習慣や食生活の変化が生じます。そのため、看護師より自宅での療養方法も学んでいただきます。退院後は運動、食事、薬剤と生活習慣を整えて心疾患再発予防に努めましょう。
5ヶ月間のプログラムの開始時と終了時には、血液検査と心肺運動負荷試験(CPX)を受けて、血液データと最大運動能力の変化によりリハビリ効果を確認するとともに、効果と安全性のバランスから、患者ごとに最適な運動量や強度が設定されます(運動処方)。

運動の効果と安全性のバランスから最適な運動強度(最大運動能力の40~60%)で実施

5ヶ月間のプログラム期間中に、再発予防に関する多くの知識や経験を得て、自主的な運動療法と生活習慣管理の習慣を適切に身につけることで、プログラム終了後も再発予防に心がけながら、活動的な生活を送ることができます。

外来患者も参加可能

心臓病で通院中の外来患者でも、対象疾患の条件を満たせば、外来から心臓リハビリに参加することができます。

心臓リハビリテーションの適応となる心臓病

心臓リハビリテーションの効果

これまでの研究で、次のような効果が証明されています。

A) 運動能力の改善

運動療法は、持久力(運動耐容能)や筋力を改善させます。運動療法を3~5ヶ月間継続することにより、持久力の指標(最高酸素摂取量)が、平均で1~2割程度改善することが示されています。

B) 冠危険因子の改善

運動療法や生活習慣指導により、動脈硬化の原因となる冠危険因子(高血圧症、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満など)のコントロールが改善し、全身の動脈硬化の進行抑制につながります。

C) 生活の質(QOL)の改善

運動能力の改善により行動範囲が広がり自覚症状が生じにくくなることや、患者ごとに最適な運動量や強度が設定され(運動処方)、活動や運動への不安が解消することで、QOLが改善します。

D) 再発予防

心筋梗塞・狭心症の再発や心不全による再入院が減少し、死亡率が低下します。

E) その他の効果

抑うつや不安感、自律神経機能が改善することや、血管内皮機能(血管が拡張する能力)の改善により血栓(血液の塊)ができにくくなることも報告されています。

心臓リハビリテーションの実施風景

A) 有酸素運動:トラック歩行

1周80mのトラックを、マイペースで歩きます。運動処方により目標心拍数が設定されれば、壁面モニターに掲示される自身の心拍数が目標心拍数に達するように、歩行スピードを調節します。

有酸素運動:トラック歩行

B) 有酸素運動:自転車エルゴメータ

心機能や運動能力に合った強度で、自転車をこぎます。トラック歩行と同様、目標心拍数が設定されれば、自身の心拍数が目標心拍数に達するように、強度を調節します。

有酸素運動:自転車エルゴメータ

C) 低強度レジスタンストレーニング:セラバンドを使用した筋力トレーニング

筋力強化を目的に、理学療法士や健康運動指導士の指導のもとで実施します。

低強度レジスタンストレーニング:セラバンドを使用した筋力トレーニング

D) 個別生活習慣指導

心臓病の病状、運動療法、食事療法、禁煙、自己管理方法、日常生活での注意事項、社会復帰などについて、医師や看護師が説明や指導、アドバイスをします。プログラムの開始時や終了時だけでなく、病状や体調の変化に応じて適宜実施します。

個別生活習慣指導

E) 多職種スタッフによる集団講義(心臓病教室)

医師・看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士らによる集団講義に参加することで、心臓病、生活習慣病、食事療法、薬物療法、禁煙、日常生活の注意点、心肺蘇生法などについて学ぶことができます。心リハに参加した患者とその家族は自由に参加できます。

心臓リハビリでの患者様向け集団講義

F) 心肺運動負荷試験(CPX)

呼吸気中の酸素や二酸化炭素を、顔に密着させたマスクで測定しながら、自転車エルゴメータを体力の限界までこぐ検査です。この検査により、生命予後と強く関連する最高酸素摂取量(運動耐容能の指標)や、嫌気性代謝閾値(筋肉から乳酸産生が増加し始める時点)、運動中の心電図や血圧の変化など、重要な指標が多く得られます。当院心リハでは、5ヶ月間のプログラムの開始時と終了時にCPXを実施してリハビリ効果を評価し、その結果をもとに、患者ごとに最適な運動量や強度を設定しています(運動処方)。

心肺運動負荷試験(CPX)

最終更新日:2024年02月27日

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