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脳血管内科

研修希望の皆様へ

『新しい人よ、集え』

豊田副院長
脳卒中は国民病です。そして、発症予防から救急治療、慢性期管理に至るまで、その治療の基本は内科です。適切で緻密な内科治療の延長線上に、外科治療や血管内治療が展開してゆきます。しかしながら、脳卒中の内科治療を担う人材は、圧倒的に足りません。

国循は開設の当初から、脳卒中内科治療の確立にこだわって来ました。混沌の中に木を接ぎ続けた先達に倣い、僕たちも自分なりの旗を掲げています。今春からの独法化とともに組織を改編し、多くの新たなミッションを課せられていますが、最大の使命が後進の育成であることは従来と変わりません。数年間の修練を行う人、短期間で見学する人、その形はさまざまですが、いつしか彼らから学校と呼ばれ始めたことを、誇りに思っています。僕たちもまた若い人たちの姿勢に学び、世代を超えて高め合えればと思います。

詩人ブレイクは鼓舞します。
目覚めなさい、新時代の若者よ。そしてその額を、無知な雇い兵に突き合わせなさい、と。
傭兵とは誰? 病魔、組織の不備、己の弱さ?
それに打ち克とうと志す人に、僕たちも呼びかけます、この学校に集わんと。

2010年8月 豊田 一則(現副院長)

『脳梗塞は治る病気へ、脳出血の治療開発はこれから』

古賀脳血管内科部長
私が研修を開始した1994年は「脳卒中は治らない病気」から「脳卒中は治る病気」に変わる分岐点でした。私の祖父母も脳卒中になり、大きな社会問題だと感じたことを鮮明に覚えています。当時の研修病院でウロキナーゼを動注する血栓溶解療法で劇的に回復した脳梗塞患者さんを目の当たりにして治る病気であることを学び、脳卒中診療医(神経内科医)を目指すことにしました。1995年に米国からアルテプラーゼによる血栓溶解療法の効果を証明する試験結果が発表され、救急治療対象への大きな流れの変化が起こりました。現在、わが国でもアルテプラーゼによる血栓溶解療法とステント型血栓回収デバイスなどによる血栓回収療法が標準治療となり、脳卒中の約7割を占める脳梗塞は治る病気になったのです。この治療の普及とともに、多職種によるチーム診療と脳卒中集中治療室の重要性が高まってきました。当診療科の役割は、急性期脳卒中治療、多職種チーム診療、ストロークケアユニット管理、再発予防などの要として脳卒中診療医を育成し、脳卒中診療を均てん化していくことです。

一方、脳出血も脳卒中の約2割を占める重要な病型です。脳梗塞に比べると重症になりやすく致死的経過になることが少なくありません。急性期の積極的降圧療法による転帰改善が期待されましたが、現在までに有効な治療法が開発されていません。これからは脳出血治療法を開発していく時代だと思います。米国NIHが助成する第VII因子製剤を急性期脳出血に投与して転帰の改善を目指すFASTEST試験への症例登録を準備しています。当センターは日本からのFASTEST試験参加施設を統括し、脳出血治療開発に注力していきます。

当センターでは脳卒中診療医のトレーニングを受けながら、脳出血などの新規治療法開発に従事し、脳卒中医療を向上させるための多くの研究を行うことが出来ます。大志ある若手医師のチャレンジ精神を全面的にサポートしますので、いつでもお気軽にご連絡下さい。

2020年5月 脳血管内科部長 古賀政利

脳血管内科での研修を希望される方へ

超急性期脳梗塞への静注血栓溶解療法や脳卒中ケアユニット整備など脳卒中診療を取り巻くわが国の環境は大幅に改善されつつありますが、その診療を支える人材は圧倒的に不足しています。当科では、脳卒中に対する急性期および慢性期実地診療、医育機関における臨床研究や教育を支える人材を育成することを目的に、専門修練医やレジデントを積極的に受け入れ、研修指導しています。わが国における最先端の脳卒中の診療技術の習得に加えて、広く心臓疾患、脳神経外科疾患、腎臓・高血圧疾患、内分泌代謝疾患、救急疾患、リハビリテーション医学を含めた領域の知識の習得と実地研修を行うカリキュラムを、組んでいます。さらに前向き臨床研究や臨床治験に参加し、学会や医学雑誌を介して国内・国外に情報発信を行えるように指導を行っています。

脳血管内科・脳神経内科は、見学・研修を希望される皆さんに、広く門戸を開いています。見学は1-2日程度の日程から、数週間程度のものまで、見学を希望される方の事情に合わせて適宜設定できます。
研修に関しては、レジデント(後期研修医)専門修練医の制度を利用して、多くの若手医師が全国から集まっています。また任意研修制度を利用して、研修開始時期や研修期間を希望者の事情に合わせて適宜設定できます。
脳血管内科・脳神経内科を、一度観に来ませんか。古賀または猪原まで、気軽にご連絡ください。

連絡先: 古賀政利(脳血管内科部長)<koga@ncvc.go.jp

脳内修練医出身地

国内留学便り

脳卒中をオールマイティーに学ぶ

第39期 脳内科レジデント 藤田 恭平
(2016年4月~2019年3月研修、現 東京医科歯科大学 脳神経内科/血管内治療科)

藤田先生
私は、大学病院と市中病院で脳神経内科の後期研修を行っていましたが、脳卒中の診療や研究をより深く学びたいと考え、医師6年目から3年間、脳血管内科でレジデントとして研修を行いました。レジテントの3年間は、臨床・研究の両面において、充実した研修を送ることが出来ました。

臨床では、主に脳梗塞や脳出血例の入院診療を担当し、超急性期脳梗塞例では急性再開通療法(tPA静注療法や血管内治療)の経験を積みました。これら入院症例の検査や内科的管理、急性再開通療法の適応決定の考え方や、血管内治療の手技について、指導医の先生方と日々ディスカッションすることで、知識や判断力、技術力を自然と身につけていくことが出来ました。頚動脈狭窄を有する症例では、脳血管内科、脳神経内科と脳神経外科での合同カンファレンスを毎週行っており、より適切な治療法を脳血管部門全体で検討するため、外科医の視点からみた脳卒中診療に対する考え方も知ることが出来、大変勉強になりました。また、国循では脳卒中診療に必要な、脳血管造影検査・頚動脈エコー・経食道心臓エコー・経頭蓋エコー・下肢静脈エコーなどを自ら行い、技術習得を目指します。私自身、国循で研修する前にはこれらの検査を自分で行ったことがない初心者でしたが、指導医の先生方に基礎的な内容から教えて頂きながら、技術を身に着けることが出来ました。

臨床だけでなく、徹底した指導のもと研究も行うことが出来るのが国循の魅力の一つです。同じ脳卒中研究でも、脳血管内科には複数の研究グループがあります。勿論、各レジデントが興味をもっている分野について主体的に研究を進めていくことも可能です。研究テーマは多岐に渡り、国循での単施設研究だけでなく、国内外の多施設共同研究の解析を担当させて頂く機会もあり、これらの研究結果を学会で発表します。学会は国内だけでなく、国際学会での発表も可能で、International Stroke ConferenceやEuropean Stroke Organisation Conference等で口演発表するレジデントもいます。最終的には研究結果を論文化するところまでを目標としており、多くのレジデントが英文誌に研究成果を載せています。私も研究成果をStrokeなどの英文誌に発表させて頂き、現在も論文を執筆中です。研究や統計解析、論文執筆のエキスパートが身近におりますので、研究に苦手意識を持っている若手医師であっても、気軽に相談できる贅沢な環境といえます。

そして、高い志を持って脳卒中の臨床や研究に取り組む医師と出会えたことは国循で得られた一番の財産となりました。豊富な経験や知識を有する指導医のもと、全国から集まったレジデント仲間とともに切磋琢磨しながら脳卒中の診療や研究についてオールマイティに学ぶことができる国循での研修を経て、脳神経内科医・脳卒中医として得られたものはとても大きいと実感しており、今後の財産として活きていくことは間違いないと確信しております。

脳卒中医療の臨床、研究を学ぶ最良の環境

第41期 脳内科レジデント 鴨川 徳彦
(2018年4月~2023年3月 脳内科レジデント/専門修練医)

私は初期研修を終えた後に、市中病院で主に脳血管障害を扱う神経救急の診療を中心とした後期研修を行いました。母校である九州大学病態機能内科学講座には国立循環器病研究センター(国循)で専門研修を修了し、臨床、研究の場で活躍する諸先輩方がいたことから、私自身も脳卒中医療の臨床や研究についてより深く理解したいと考え、2018年4月より国循の脳部門のレジデントとして赴任しました。赴任当初から大阪府北部地震や超大型台風などの災害に見舞われ、藤白台の旧病院が被害を受け苦労したことが思い出されますが、現在はJR京都線の岸辺駅前に新病院を構え、循環器病の臨床、研究の最先端の機能を備えた一大拠点となっています。

レジデントの役割は脳血管障害を中心とした神経救急疾患の救急対応、入院診療が中心です。症例毎の治療方針を経験豊富な指導医と日々議論しながら、脳卒中診療のスタンダードそして最先端を学ぶことができます。画像診断、血栓溶解療法や脳血管内治療の適応評価、抗血栓薬の使い方、全身状態管理などを体系的に理解することができるほか、頚部血管エコーや経食道心エコー、経頭蓋エコー、下肢静脈エコーといった超音波検査技能、また脳波判読や脳血管造影検査の基本技能も習得することができます。レジデントの卒業年次やそれまでの経験のバックグラウンドは様々ですが、国循での日々の研修を経て一定水準の標準的な脳卒中診療技能が自然と身に着きます。また、レジデントの個性が尊重され、力を入れて取り組みたい領域に応じて柔軟に対応できる点も魅力です。私は脳卒中診療において重要性が高まっている脳血管内治療に特に興味があり、診療技能の獲得と向上を目指していましたが、脳内科での重点的な研修はもちろんのこと、さらにセンター内/外の脳神経外科での研修の機会も与えていただき、レジデントの期間中に脳神経血管内治療専門医も取得することができました。超音波診断や脳卒中後てんかんの臨床などに取り組むレジデントもおり、個々の興味のある分野に積極的に関わっていくことで、専門的な知識や技能をより高めることができる良い環境だと思います。

国循は医療機関であるとともに研究機関でもあるため、新たな知見を得るべく多くの研究が行われており、レジデントも自ずと研究に取り組むことになります。臨床と同様に研究でも自分の興味がある領域の研究には積極的に関わることができますし、興味が漠然としていても、指導医の研究分野に関わっていきながら、自分の取り組みたい研究テーマを見つけていくことができます。臨床研究の基本や統計解析の手法、学会発表から論文投稿に至るまでエキスパート達の指導を受けることができ、これまで研究に関わる機会がなかったとしても心配はいりません。研究の結果は国内学会のみならず、International Stroke ConferenceやEuropean Stroke Organization Conferenceといった国際学会でも発表の機会があり、最終的には英文誌での論文化に向け、日々の臨床の合間に取り組みながら多くのレジデントが成果を残しています。私自身も脳血管内治療や血栓溶解療法、脳卒中後てんかんに関する研究テーマをいただき、国内/国際学会での発表や英語原著論文の報告を経験することができました。

そして、私が国循で研修をして最も良かったと思うことは、多くの得難い出会いがあったことです。専門性をより深めていく医師として重要な時期を、日本の脳卒中医療を先導する先生方からご指導をいただき、全国から集った志の高い同世代のレジデントと切磋琢磨して過ごした日々は、私にとってかけがえのない財産となりました。決して楽な研修ではなく、多忙な臨床業務と研究活動を両立させることに苦労することもありますが、自分自身の可能性を大きく広げる素晴らしい環境だと思います。少しでも興味を持たれた方はぜひ国循の門を叩いてみてはいかがでしょうか。

日本一脳卒中のことを考えた専攻医

第43期 脳内科レジデント 江頭柊平
(2020年4月〜2023年3月研修,東京大学脳神経内科)

江頭先生
医者4〜6年目に研修させていただきました。
3年前、かけだしの脳神経内科医であった私、寝たきりになった脳梗塞患者さんの脇で無力感を抱くことが少なくありませんでした。いちばん多い脳卒中こそいちばん得意にならねばと思い,母校とセンターにお願いをしてレジデントにしてもらいました。内科研修制度転換期で,プログラムの第1期生にもしていただけました。

国循脳内では脳卒中を満遍なく学べます。国を代表する脳卒中センターですので、一般施設では経験しづらい、超急性期再開通療法、灌流画像、脳神経超音波領域、植え込み型心電図記録計などの理解を深めることができると思います。
またナショナルセンターとして研究をリードする責務があるため、研究や論文執筆をサポートする土壌があります。トップジャーナルに複数本の原著論文が掲載された指導医がいるのは、他の病院にはない利点かもしれません。

経験できる疾患としては脳血管障害が主ですが、てんかんや脳炎なども多いです。血管性認知症の大家がいらっしゃるので認知症も経験できますし、心臓血管部門が併設されているので心臓と脳の関連や蘇生後脳症などの集中治療室関連脳神経疾患もよく勉強出来ます。

現行の内科専門医制度では他院研修が必須となっていますが、国循内科プログラムでは、連携施設が全国にあるため、研修先を個々人の希望に応じて紹介してもらえます。私はカテーテルに興味があったので、岩手県立中央病院という東北の有名施設に行かせていただきました。1年間で血管内治療の専門医の受験資格をカバーできるような、濃密なトレーニングをさせていただきました。

良い点を挙げればきりがありませんが、先達が貫いてきた国循のプライドや文化に触れられたことが重要な気がしています。3年間でいちばん脳卒中について考えたのは自分であるという自信(思い違い?)は、一生ものの財産です。卒業間近になって脳卒中ホットラインを持つことへの恐怖感が薄まり、どんどん来い、と思えるようになりました。

なにより、目の前の患者さんに提供できるものが増えたことが最大の報酬です。
ありがとうございました。

最終更新日:2024年09月27日

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