脳血管内科
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脳血管内科とは
わが国では脳卒中(脳血管障害)の頻度が高く、死亡原因の第4位、総医療費の第4位、高齢者医療費の第1位を占めます。罹患者数は高齢化社会の到来、生活習慣病の増加に伴い年々増加しています。脳卒中は、わが国の循環器疾患征圧における最大の標的です。当科は、脳卒中を全身血管病として捉え、神経内科学・循環器内科学・救急医学・血栓止血学・リハビリ医学などを集約した診療を行っています。脳血管外科、脳リハビリテーション部門、放射線診療部、看護部、その他の循環器疾患や動脈硬化疾患を扱う多くの診療科や研究所の関連研究室などとの密接な連携のもと、重大な国民的疾病である脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)の征圧を目指し、診療、調査・研究、啓発・教育活動に日夜努力しています。
構成
部長・医長を含めた19名のスタッフ医師と、15名の専門修練医・レジデント、若干名の内科専攻医の総勢34名(2023年1月現在)で、診療に従事しています。脳血管内科(脳内A)・脳神経内科(脳内B)の2つのグループに分かれていますが、両グループともに脳卒中を中心に診療、研究、教育を行っており、どちらのグループに紹介していただいても同様に最先端の診療を受けることが可能です。脳卒中急性期の症例は、両グループが均等に受け持つ体制をとっています。
診療の内容
脳血管内科では脳梗塞、脳出血などの脳血管障害全般及びこれに関連する神経救急疾患の診療を行っています。外来は月曜~金曜で、初回受診の方は初診外来で部長もしくは医長が、また再来の方は専門外来で常勤医が3-4名体制で担当しています。なお脳卒中救急患者には、夜間、土・日・祝日を問わず24時間体制で対応しています。
脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血がありますが、私たちは特に脳梗塞と脳出血に対する最先端の内科医療に力を入れています。脳梗塞または脳出血の急性期(発症されて間もない時期)の患者さんは脳卒中ケアユニット(Stroke Care Unit: SCU)に入室していただき、多職種で連携した集学的な治療を行います。当センターのSCUは1978年に国内で初めて設立され、病床数も21床(18床運用)と大規模であるため、24時間体制で急性期症例を断ることなく収容可能です。SCUには毎年800例前後の脳卒中が入院しておりますが、発症前にADLが自立していた方の半数以上は3か月後には同等レベルまで回復されております(図1)。当科では他の施設と比べて重症脳卒中を診療することが多いのですが、それでも当院に入院中の生存率は安定して9割以上で、良好です(図1)。また表1に、当院における最近3年間の急性期脳梗塞・脳出血の治療成績を示します。全国成績に比べて良好な治療成績を得ています。
2005年に国内で急性期脳梗塞に対する静注血栓溶解療法(rt-PA静注療法)が認可され、2016年に急性期脳梗塞に対する経皮的血栓回収療法(カテーテル治療)の有効性が示され、脳卒中急性期のチーム医療の必要性が高まっています。当センターでは院内で救急対応の意思統一を図り安全に確実に行っており、いずれの施行件数も増加傾向です(図2)。2019年には当センターでの静注血栓溶解療法件数が1000件を超えました(https://www.ncvc.go.jp/pr/release/190624_press/参照)。経皮的血栓回収療法の成績は国内でも屈指です(図3)。
SCUで病状が安定した後は、脳卒中を専門とする一般病棟(約50床)に移り退院に向けてリハビリなど慢性期治療に専念していただくことになります。センターのある大阪府豊能地区の医療機関で地域連携パス(図4)を作り、急性期~慢性期治療から在宅支援まで継ぎ目ない医療の実現を目指しています。2019年岸部に移転し三島地区の医療機関との連携構築をすすめています。また脳神経外科と連携し、脳卒中に対する外科治療の必要な症例は内科治療・精査後に遅滞なく外科治療を受けます。脳梗塞の原因の約3割は心臓病(心原性脳塞栓症)であり、脳梗塞の再発予防に必要な心臓病の管理は、ブレインハートチームと呼ばれる脳血管部門と心臓血管部門との連携チームで対応します。
表1. 2020年~2022年の3年間における当科の診療実績
2020年 | 2021年 | 2022年 | |
---|---|---|---|
急性期脳梗塞入院件数(人) | 630 | 604 | 715 |
このうち入院時重症例の割合 (NIHSS≧8) | 32% | 27% | 30% |
退院時の日常生活自立率 (modified Rankin Scale 0-2) | 56% | 51% | 54% |
急性期脳出血入院件数(人) | 188 | 168 | 190 |
このうち入院時重症例の割合 (NIHSS≧8) | 72% | 59% | 69% |
退院時の日常生活自立率 (modified Rankin Scale 0-2) | 20% | 24% | 23% |
一過性脳虚血発作入院件数(人) | 73 | 85 | 69 |
3か月後 日常生活自立 | 症候性 頭蓋内出血 | 死亡 | |
---|---|---|---|
当院 | 45.9% | 3.5% | 7.3% |
国内DPCデータ(2020) | - | - | 8.1% |
国内多施設研究(2014–2016) | 35.3% | 5.3% | 9.8% |
オランダ(2016–2017) | 43% | 6.0% | 29.0% |
臨床研究
急性期脳血管障害の新しい診断・治療技術の開発、脳卒中急性期診療に関する全国多施設共同研究、慢性期の再発予防対策、一次予防対策などに関して、活発な調査・研究活動を行っています。再生医療などの新しい治療法の開発にも、取り組んでいます。研究内容の詳細は、こちらのページをご覧ください。
卒後研修
超急性期脳梗塞への静注血栓溶解療法や脳卒中ケアユニット整備など脳卒中診療を取り巻くわが国の環境は大幅に改善されつつありますが、その診療を支える人材は圧倒的に不足しています。当科では、脳卒中に対する急性期および慢性期実地診療、医育機関における臨床研究や教育を支える人材を育成することを目的に、専門修練医やレジデントを積極的に受け入れ、研修指導しています。わが国における最先端の脳卒中の診療技術の習得に加えて、広く心臓疾患、脳神経外科疾患、腎臓・高血圧疾患、内分泌代謝疾患、救急疾患、リハビリテーション医学を含めた領域の知識の習得と実地研修を行うカリキュラムを、組んでいます。さらに前向き臨床研究や臨床治験に参加し、学会や医学雑誌を介して国内・国外に情報発信を行えるように指導を行っています。
最終更新日:2024年09月27日