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不整脈科

対象疾患・治療法
後天性QT延長症候群

後天性QT延長症候群

後天性(二次性)LQTSは、安静時のQT時間は正常範囲か境界域であるが、抗不整脈薬などの薬剤、低K +血症などの電解質異常、徐脈など誘因が加わった場合にQT時間が著明に延長し、TdPを発症する。

1. 誘因と診断

後天性LQTSの誘因として最も頻度の高いのは、薬剤によるものである(薬剤誘発性LQTS)(図1)。原因となる薬剤の種類は多岐にわたるが、そのほとんどはIKr遮断作用を有する薬剤である(表1)。薬剤によるTdP発生は必ずしも薬剤の投与量や血中濃度には依存せず、性別では女性に多く、また虚血性心疾患や心筋症などの器質的心疾患を有する患者で発症しやすい。また、低K +血症、低Mg2+血症などの電解質異常、房室ブロック、洞機能不全症候群などの徐脈もQT延長の増悪因子となる(表1)。

後天性LQTSの診断は、QT延長の誘因が除去された後にQT時間が正常化すればされるが、多くの症例で安静時のQT時間は正常上限か境界域(QTcで420~460ms)のことが多い。一部の症例では、LQT1、LQT2、LQT3の原因遺伝子であるKCNQ1KCNH2SCN5A における変異が同定されており(表2)、先天性LQTSの潜在型(Forme Fruste)の可能性が示唆されている(表2)。


図1. Ia群抗不整脈薬(ジソピラミド)によるQT延長とTorsade de Pointes

Ia群抗不整脈薬(ジソピラミド)によるQT延長とTorsade de Pointes

ジソピラミド300mg/日内服中に著明なQT時間の延長(B)に引き続いて、Torsade de Pointesを発症した(C)。


表1. 後天性QT延長症候群の原因

表1. 後天性QT延長症候群の原因

表2. 後天性QT延長症候群の原因遺伝子とイオンチャネル機能

表2. 後天性QT延長症候群の原因遺伝子とイオンチャネル機能

2. 治療

TdP発作時には、QT延長の誘因の除去が重要である。すなわち、原因薬剤の中止、電解質異常のある場合にはその補正、徐脈が増悪因子となっている場合には、80-100/分の一時的ペーシングやアトロピン(0.01-0.02mg/kg)静注で心拍数を増加させる。静注薬としては硫酸マグネシウム(1-2g静注 + 5-20mg/分の持続点滴)が第一選択である。また、動物実験の検討から、TdP発作時にはCa2+拮抗薬のベラパミル静注の有効性も示唆されている。

QT時間が正常化したTdP非発作時にも、QT延長作用のある薬物や電解質異常、徐脈に対して過剰な反応を示す可能性があり、常にこれらの原因を避けるよう指導する必要がある。

最終更新日:2021年10月08日

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