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不整脈科

対象疾患・治療法
ICD(植え込み型除細動器)

 

ICD(植え込み型除細動器)について

ICD(植え込み型除細動器:図1)は、脈がはやくなる頻脈性の不整脈、中でも心臓のポンプの働きを担う心室が頻脈になる心室頻拍もしくは心室細動による突然死の予防を図るための器械です。ICDは常にあなたの心拍を見張り、頻拍の発生を検知すると不整脈が停止するよう自動的に電気ショックなどの治療を行います。

図1

抗不整脈薬やカテーテル治療による不整脈発生の予防も試みられますが、これまでの世界的な検討からICDが突然死を予防する最も有効な治療であることが明らかにされています。

ICDは、これまでに心室頻拍や心室細動を発症し救命された患者さまはもとより、今後これらの出現の可能性が高いと考えられる患者さまにも必要です。心機能や不整脈の頻度など総合的な評価から必要性が検討されます。なお、心室頻拍や心室細動の原因としては、心筋梗塞や心筋症などの器質的な心臓病が大半を占めますが、中にはイオンチャンネル病といわれる不整脈が主体の病気や特発性といわれる原因が不明のものも挙げられます。

ICDは「作動回路と電池を兼ねた本体」と「リード」から成ります。リードは心室の不整脈の出現を検知し、必要に応じて刺激を与えるため右心室に留置されます。また、心房の不整脈を監視、刺激する必要があるため、右心房に2本目のリードを留置することもあります。

ICDは個々の患者さまの不整脈に応じて様々なプログラムが可能であり、手術後も体外からプログラムの変更が可能です。例えば、150/分以上の頻脈を心室頻拍と認識し、200/分以上の頻脈を心室細動と認識する、というようにプログラムすることで不整脈の監視を行います。心室頻拍や心室細動の発生を検知すると、直ちに不整脈を停止するようICDが作動します。不整脈を停止する方法としては、より速い頻度で心臓を刺激することで停止を試みる「抗頻拍ペーシング」という機能と、「電気ショック」で停止される方法の2通りがあり、これらを組み合わせてできるだけ患者さまに負担がなく、かつ安全に不整脈を停止できるようプログラムしています。

また、ICDはペースメーカの機能も有しており、心拍数が非常におそくなっている患者さまでは心拍数を補助する働きも兼ね備えています。

ICD本体は電池の寿命に応じて交換が必要となりますが、リードは問題がなければ追加・交換せずに使用し続けることができます。電池寿命は電気ショックの使用頻度などによって左右されますが、概ね5~7年です。

また、ICDの必要性が未確定の患者さまやICD植込みが直ちに行えない場合などに、突然死を予防するための機器として着用型除細動器(WCD)が使用できます。WCDは患者自身の理解と協力が必要な機器で長期に使用することはできませんが、3か月を限度に使用することができます。

近年、S-ICD(皮下植え込み型ICD:図2)と呼ばれる皮下にすべてのシステムを植え込むICDが使用可能となっています。通常のICDと違い心臓内にリードを留置しないため、前述の高頻拍ペーシング機能がなく全て電気ショック治療を行います。また、ペースメーカ機能もありません。ICDは心臓内でトラブルが起こる可能性がありますが、S-ICDのトラブルは皮下で起こるのが特徴です。S-ICDをご希望いただいてもすべての患者さまに適しているとは言えませんので、ご相談が必要になります。

図2

最終更新日:2022年10月25日

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