国立循環器病研究センター

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広報活動

世界初「CADASIL創薬研究部」を設置

―目標はCADASILの治療薬開発―

2025年2月12日
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
株式会社ファーマフーズ

 国⽴研究開発法⼈国⽴循環器病研究センター(所在地:⼤阪府吹⽥市、理事⻑:⼤津欣也、以下:国循)と、株式会社ファーマフーズ(本社:京都府京都市、代表取締役社長:金武祚、以下:ファーマフーズ)はCADASILの新薬創成を目指した「CADASIL創薬研究部」を共同設立いたしました。

 CADASILとは、NOTCH3遺伝子の病的バリアント(病気の発症に関連する遺伝子の変化)が原因となり、常染色体顕性遺伝(優性遺伝)形式で発症し、大脳白質病変を特徴とする遺伝性脳小血管病のことです。過去の研究成果をもとに、CADASILの患数数は日本国内で1200人ほどと推定され、典型的には20〜30歳頃に片頭痛を、30〜40歳頃に脳卒中 (脳梗塞や脳出血) を、40〜50歳頃に認知症を発症し、脳梗塞を繰り返すと60歳前後で寝たきりとなり、65〜70歳前後で死亡することが多いと考えられてきました。しかしながら、近年の研究の進歩により、上述の経過から外れる、非典型的なCADASIL患者が、私たちの想像以上に多く存在することが明らかになり、CADASILという疾患概念の再定義も議論されるようになってまいりました。

 国循脳神経内科部(部長:猪原匡史)は、これまで世界各国のCADASILの研究者と連携し、さまざまなCADASIL研究に取り組んでまいりました。そして今回新たに、CADASILの治療にフォーカスした世界初の「CADASIL創薬研究部」を設立することが決定いたしました。


猪原匡史部長らは、2024年7月12日に京都市内でCADASIL & VCI Symposiumを開催いたしました。
このシンポジウムには、米国、豪州、韓国、台湾から70名以上の研究者・CADASIL患者が参加し、
CADASILの新薬開発の可能性について、活発な議論がなされました。

CADASIL創薬研究部の目的

CADASILに対する新薬の開発と、新薬開発のための国際研究拠点の構築が目的です。CADASILはNOTCH3遺伝子の病的バリアントが原因の疾患ですので、遺伝子を標的とした新規治療法の開発が有望と考えられます。

その一つの可能性は核酸医薬です。核酸医薬とは、生物の遺伝情報を担っている核酸という物質を利用する新しい医薬品です。現在使われている医薬品の大部分を占める低分子医薬や、がん治療などに用いられる抗体医薬とは作用のメカニズムが異なり、CADASILなどの希少疾患に対する新たな治療手段として期待されています。

もう一つの新薬候補は、アドレノメデュリンです。アドレノメデュリンは、宮崎大学の北村和雄特別教授、国循の寒川賢治前研究所長らによって発見されたペプチドホルモンです。循環器系臓器で広く作られ、血管を拡張させたり、血管新生を促したりと、多彩な作用が知られていました。国循脳神経内科では、これまで様々な研究を行いアドレノメデュリンがCADASILに有効である可能性を示してきました。

CADASIL創薬研究部は、これらの新規治療薬の臨床応用を目指してさまざまな研究を遂行したいと考えております。

CADASIL創薬研究部の意義

新薬を開発するためには、治験*1を行う必要がありますが、CADASILのような希少疾患の場合、多くの患者さんの参加が必要な大規模な治験を行うためには、さまざまな準備が必要となります。国循には、日本全国から大勢のCADASIL患者が定期的に通院されていますので、この体制を強化し、治験即応コホート*2の樹立を目指します。日本国内のみならず海外を見渡しても、未だCADASIL患者の治験即応コホートはありません。したがって、海外のCADASIL研究者も国循の取り組みに注目しています。

今回立ち上げる治験即応コホートは、私たちが開発の準備を進めている核酸医薬やアドレノメデュリンなどの臨床応用において活用することを計画していますが、もし海外でCADASILに対する別の新薬が開発された際には、その薬剤を直ちに日本国内に導入する(日本で治験を行う)ことも可能となります。このように治験即応コホートの確立は、CADASIL創薬研究において大変重要な意義を持つと考えられます。

CADASIL創薬研究部の展望

CADASIL創薬研究部は、「CADASIL知ってる会」*3と連携してCADASILの新薬開発をすすめたい、と考えております。CADASIL創薬研究部は、CADASILの患者さんのための研究部です。その視点を忘れず、CADASILの制圧を目指した研究に取り組んでいきたいと考えております。


※1治験
新しい薬を患者さんに使用していただくためには、その薬が病気に対して有効であるか、また安全であるかを確かめ、厚生労働省から承認を得る必要があります。そこで厚生労働省の承認を得るために、実際に患者さんに投与して効果 (有効性) と安全性を調べる臨床試験のことを「治験」と呼びます。

※2治験即応コホート
直ちに治験を行うことができる体制のこと。多くの施設が共同して治験を行う場合、各施設で同一の検査を行えるように調整するなど、様々な事前準備が必要です。CADASIL創薬研究部では、国循以外の施設も治験に参加できるように手順書などを整えていく予定です。

※3 CADASIL知ってる会
国循脳神経内科(オンラインセカンドオピニオン外来含む)の受診歴を有するCADASILの患者さんやご家族を対象とした患者会です。患者さんやご家族にCADASILという疾患や最新の医学情報の情報共有を目標として発足いたしました(https://www.ncvc.go.jp/hospital/topics/topics_32341/)。

国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センターは、国の医療政策と一体となって国民の健康を守るため、1977年(昭和52年)に設立された国立高度専門医療研究センターであり、日本における循環器病の研究および治療機関の最高峰の一つとして知られています。
2019年には、吹田市岸部に移転し、一つの建物に病院、研究所及びオープンイノベーションセンターの3つの機関が入る医療研究機関となりました。詳細は、http://www.ncvc.go.jp/をご参照ください。

株式会社ファーマフーズ

ファーマフーズは、「医」(Pharmaceutical)と「食」(Foods)の融合を目指し、健康維持と生活の質(Quality of Life)の向上に役立つ機能性食品・化粧品・医薬品を研究開発する、京都のバイオ企業です。

医薬品事業では、製薬企業と共同開発した抗体医薬品候補に関して、現在臨床試験が進行しております。詳細は、https://www.pharmafoods.co.jp/をご参照ください。

 

【報道機関からの問い合わせ】

国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069 (31120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

株式会社ファーマフーズ 経営企画部部長 河中
TEL: 075-394-8600

最終更新日:2025年02月12日

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