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小児循環器内科

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低出生体重児の動脈管開存症に対するカテーテル治療

低出生体重児の動脈管開存症に対するカテーテル治療

2020年4月より「低出生体重児の動脈管開存症に対するカテーテル治療」に使用されるAmplazter Piccolo Occluderが承認・保険収載され当センターで治療を開始しています。

未熟児動脈管開存症

動脈管とは、酸素を多く含んだ血液を心臓から全身に送り出す大動脈と、酸素が少ない血液を心臓から肺へ送り出す肺動脈の間に、通常は胎児期・生後早期に限り存在する血管のことですが通常は、胎盤と離れて肺による呼吸が始まると、12-48時間で動脈管は自然に閉じていきます。しかし、特に早産児の場合、動脈管が開いたままとなって、心不全や肺うっ血・肺出血・壊死性腸炎など全身の臓器に影響が出る可能性があり、治療が必要になることがあります。
1500g未満で出生した極低出生体重児の34%、1000g未満で出生した超低出生体重児の48%が未熟児動脈管開存症を発症して治療を受けています※。
在胎週数が短く出生体重が少ないほど、その頻度は高く、また合併症も重篤になる傾向があります。

※新生児臨床研究ネットワークのデータベースより

カテーテル治療の位置づけ

従来、未熟児動脈管開存症に対して薬物による治療と手術による結紮術が主として行われてきました。薬物による治療は動脈管が十分閉鎖しない場合があるのと副作用が生じる場合があり、手術は治療成功率は高いですが出血、肺の損傷、感染症、神経損傷などの合併症が生じる場合があります。
今回承認されたAmplazter Piccolo Occluderは低出生体重児の動脈管開存症に対して開発されたデバイスで特に体重2.5Kg未満の低出生体重児の動脈管開存症に対する治療選択肢の一つになります。米国での治療後6ヶ月の成績では有効に閉鎖できた割合は98.1%と高く, 合併症の発生率は4.0%と低率でした。

低出生体重児のカテーテルによる動脈管開存症の対象となる方

  • カテーテル治療時の体重が700g以上*
    なお治療時の体重2.5Kg未満の場合は小児循環器科医、新生児科医、小児心臓血管外科医及び関連他職種から構成されるチーム (Infant Heart Team)で検討を行いカテーテルでの適応を決めます。
  • カテーテル治療時に生後3日以上であること
  • なお動脈管の形態や太さによっては適応とならない場合があります。

*体重4Kgから段階的に低体重の患者さんに使用可能となります

カテーテルによる動脈管閉鎖の実際

✓肺動脈・大動脈への突出を最小限にとどめる小さなエンドスクリュー (ネジ部分)
✓左右対称の構造であり、静脈・動脈側のどちらからでも留置可能
✓細いカテーテルで留置可能 (4Frデリバリーカテーテル)

✓動脈管の中にデバイスを留置して肺動脈・大動脈への突出を最小限にとどめます
✓薄い保持ディスクをデバイスの前後に展開することでデバイスの脱落を防ぎます。

本治療で用いるデバイスはニッケルとチタンの合材であるニチノールで構成されています。麻酔を使用した上で太ももの付け根の静脈 (大腿静脈)又は動脈 (大腿動脈)からデリバリーカテーテルを挿入し動脈管の中でデバイスを展開して動脈管を閉鎖します。治療中は低出生体重児の場合、特に輸液量のバランス・体温保持に注意して治療にあたります。治療後は麻酔の影響が十分取れるまでの間は絶飲食が必要で血管からの再出血を避けるために一定時間ベッド上で安静にして頂きます。血液検査・心臓超音波検査・胸部レントゲン検査等を施行した上で1週間前後の入院で退院可能です。このデバイスはMRI検査に対応しており、治療後もMRI検査は受けることが出来ます。

最終更新日:2021年10月08日

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