小児循環器内科
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小児循環器内科の高度な診療
心疾患の画像診断
3次元心エコー検査は心エコー画像をリアルタイムに3次元構築する新しい装置で、心臓や大血管の形や機能の異常をより正確に診断することが可能になります。年間約200件実施しております。経食道心エコー検査は、胃カメラに似たファイバーを使って食道から心臓の様子を詳細に観察することができる検査で、年間約360件実施しています。心房中隔欠損のカテーテル閉鎖が安全に行えるかどうかの判断に有効です。また通常の心エコーでは見づらい術後の患者さんの心機能評価や心臓の後方に位置する肺静脈の評価にも有用です。マルチスライスCT検査は点滴から造影剤を注射して心臓と大血管の立体構造を大まかに判断することができる検査です。年間約200件以上実施しております。マルチスライスCT装置そのものや画像処理の技術は年々進歩しています。
先天性心疾患のカテーテル検査および治療
患者さんに侵襲の少ないカテーテル治療は、技術の向上によって近年急速に進歩を遂げています。現在では、心房中隔欠損、動脈管開存、肺動脈弁狭窄など一部の疾患においては、カテーテル治療のみで修復が完結するものがあります。国立循環器病研究センターでは、全国に先駆けて数多くのカテーテル治療実績を積み重ね、先駆的かつ全国の教育的役割を担う施設として治療の安全性向上や普及に貢献してきました。小児患者さんのみならず、成人の患者さんも広く対象としています。毎年のカテーテル治療件数は250件をこえ、全国最多の治療件数となっています。
不整脈の診断および治療
小児期に問題となる不整脈には徐脈(脈が遅いこと)、頻脈(脈が速いこと)と大きく2つにわかれます。また器質的心疾患(先天性心疾患の構造異常や心筋自体に問題がある心筋症など)の有無によって治療方針は異なります。当部門では器質的心疾患のあるなしにかかわらず、小児期不整脈を広く診療しています。具体的な治療としては、徐脈に対してはペースメーカー植え込みとその管理、頻脈に関しては抗不整脈薬の投与やカテーテルアブレーションを行っています。器質的心疾患を伴う場合には、まずなぜ不整脈がおこっているかの原因を追及し、心臓の負担をとって不整脈の原因を減らし、同時に徐脈や頻脈の治療を行っています。
先天性心疾患者さんへの運動耐応能検査と心不全管理
最近は成人の先天性心疾患患者さんが増加してきており、患者さんの長期予後と生活の質の改善には、正確な心血行動態の把握に加えて、"心不全"に伴う呼吸、血液、肝、腎、更には代謝機能を含めた包括的な全身管理が要求されています。当科ではこうした先天性心疾患術後遠隔期患者の生活の質の改善に向けて、より良い診断と治療を提供するため努力しています。具体的には、診断のための心エコー、カテーテルに加え、心肺運動負荷試験、呼吸機能検査、腎機能検査を積極的に行っています。特に運動負荷試験は全身状態の把握に極めて有用で、年約800件と日本で最も多く施行しており、その半数では酸素摂取量を測定し、必要に応じ運動中の酸素飽和度を測定し、診療に有用な情報を提供しています。
肺循環疾患の診断と治療
原発性肺高血圧は著しい肺動脈圧の上昇による右心不全によって特徴づけられるまれな(小児では年間国内で約30人が発症)疾患ですが、小児では適切な診断と治療が行われないと病状が急速に進行します。当科では1979年以降この疾患に対する診療を開始し、約40名の患者さんを経験しています。1999年にフローランが使用可能となって以後は治療成績が改善し、またその他の薬物の開発により治療効果が期待できるようになってきました。当科では現在30名の小児期および青年期原発性肺高血圧患者さんの診療を行っており、積極的に新規に開発された薬物を使用しています。加えてほぼ同数のアイゼンメンゲル症候群や肝門脈性肺高血圧など類縁疾患、肺動静脈瘻など稀少な肺循環疾患の患者さんの診療を行っています。また内科部門や研究所との連携の下で遺伝子検索にも力を注いでいます。
様々な循環器疾患に役立つ核医学検査
核医学検査はごく微弱なガンマ線を放出する放射性同位元素を含んだ薬剤を静脈内投与・吸入等行うことで、様々な臓器の形態・機能・代謝などを評価することができる検査です。先天性心疾患、肺高血圧、川崎病、心筋疾患を対象に、心筋、肺血流、肺換気、炎症、心不全を評価する目的で年間約400件施行しており、本邦小児循環器領域では最多です。小児循環器領域においては心臓の評価のみならず本検査による肺の循環評価が複雑な先天性心疾患の治療・管理に重要です。また成人先天性心疾患患者の心機能評価も、造影剤アレルギーやペースメーカーなど、カテーテル・心臓MRIなどの他検査での評価ができない状態の患者でも施行可能な本検査は、重要度が増してきています。2013年度に当科では403件の心臓核医学検査を実施しました。うち心筋血流シンチグラム140件、肺血流シンチグラムは136件とそれぞれ全体の35%程度を占めています。
核医学検査の種類
心筋血流シンチグラム -安静・運動負荷・薬剤負荷-
心筋に血流がある部分のみに集積する核種を投与し、心筋の虚血を評価します。エルゴメーターによる負荷を基本としていますが、体格的にエルゴメーターを使用できない小学生以下の小児では薬剤での負荷を行う場合もあります。
使用核種はかつては塩化タリウムを使用していましたが、当科では被曝量低減のため近年は半減期の短い99mテクネチウム製剤をほぼ全ての検査に使用しています。先天性心疾患の画像の評価は小児循環器医と放射線科医で協力して行っています。
肺血流シンチグラム
肺の毛細血管に留まる物質を経静脈的に投与することで、肺血流の左右比や血流低下部位を描出することができます。肺血流の左右の不均衡・肺の領域毎の血流低下を合併しやすいファロー四徴、主要体肺側副血行を伴うファロー四徴等の疾患では治療方針に大きく影響する検査です。また下半身由来の血流の左右分布が病状に影響を与えるフォンタン術前・術後患者の管理での検査施行例も増えています。肺動脈性肺高血圧での肺血管の障害を評価する目的でも行います。
肺換気シンチグラム
クリプトンガスを吸入し、換気されている肺区域を評価します。上記肺血流シンチグラムと同時施行することで換気血流不均衡を評価することも可能です。手術後の横隔神経麻痺、脊柱側弯などで,呼吸換気への影響がある患者さんなども対象となります。
換気血流不均衡の例。同一症例で同日に施行した肺換気シンチグラム・肺血流シンチグラム。左図の肺換気では右肺の換気が不良だが、右図の肺血流は左が不良。
<肺換気シンチグラム画像>
<肺血流シンチグラム画像>
他の核医学検査も実施していますが、それぞれに他の検査では代替えできない貴重な病状を評価でき、治療方針の決定に使用しています。
最終更新日:2021年10月08日