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患者の皆様へ

脳卒中

 

脳卒中の治療については「脳血管内科・脳神経内科」のページも参照ください。

 

 2024年(令和6年)の厚生労働省の人口動態統計によれば、脳卒中(脳血管疾患)は日本人の死因の第4位です(1位:がん、2位:心疾患、3位:老衰)。また、2022年(令和4年)の国民生活基礎調査によれば、寝たきり・要介護となる原因としては認知症についで第2位の病気です。寝たきりの原因として、高齢による衰弱、骨折・転倒などが続きますが、脳卒中がこれらの引き金になることも少なくありません。「ピンピンコロリ」と健やかに生涯を全うすることを理想と考える方も多いのですが、そのためには寝たきりにつながる脳卒中をしっかりと予防することがとても重要です。脳卒中は、特に高齢の方を中心に誰でも起こり得る病気であり、現在では医療の進歩により、以下の取組によって脳卒中の被害を最小限に抑えられることが分かっています。

・予防:生活習慣病を適切にコントロールし発症そのものを防ぐ。
・早期治療:万が一発症しても、すぐに専門的な治療を受けることで症状を軽減させる。
・リハビリテーション:適切なリハビリにより後遺症を軽減させる。
・再発予防:お薬や手術により、次の発症を適切に防ぐ。

このホームページでは私たちが命と健やかな生活を守るために知っておくべき「脳卒中」という病気について、わかりやすく解説していきます。

1. 脳卒中とは

 脳卒中とは、人間の身体の働きを中枢で統括している「脳」の血管が、詰まったり破れたりすることで、急に脳の一部の働きが悪くなり、それによって急に身体の働きが悪くなる病気です。脳の血管が詰まったり破れたりする原因は、長年の生活のゆがみにより生じた生活習慣病により、知らず知らずのうちに心臓や全身をめぐる血管がいたみ、最終的に脳の血管がやられてしまうことがほとんどです。

 昔から、「卒然として中(あた)る」、つまり突然わるい風にあたって体が動かなくなり、倒れるような病気が知られており、その発作を「卒中」、その症状が残ってしまった状態を「中気、中風(ちゅうふう、ちゅうぶ)」と呼びました。英語でも脳卒中のことを”Stroke (一撃)”と呼び、興味深い表現の一致です。

 さて、脳卒中には、血管が詰まっておこる脳梗塞、血管が破れておこる脳(内)出血とくも膜下出血の、3つが含まれます。また、脳梗塞が起きかかったものの、症状が短時間で消失してしまう一過性脳虚血発作(脳卒中の前触れにあたる病態)もあります。これらの病気のいずれによっても、半身麻痺(まひ)、言葉の障害、意識の障害など、脳卒中に共通する症状が起きますが、病気の起き方が違うので、治療法や病気の経過も違います。以下の項でそれぞれについて詳しく説明していきます。

1. 1. 脳梗塞

 脳梗塞は脳卒中の過半を占める病気です。脳の血管が詰まり、血流が十分に脳細胞に行き渡らなくなることで、即座に脳細胞の働きが悪くなり、半身麻痺などの症状がでます。血流が悪いまま数時間程度がたつと、脳細胞は死んでしまい、生き返ることはありません。逆に、数時間以内に血流を再開することができれば、脳細胞の働きが元に戻り、脳卒中の症状も軽くなったり、消えてしまったりすることが期待できます。これを目指す治療を「急性期再灌流療法」と言い、以下の項で詳しく説明します。

 脳梗塞は、影響をうける血管の大きさ・血管の詰まり方によって、「ラクナ梗塞」、「アテローム血栓性脳梗塞」、「心原性脳塞栓」と、「その他の脳梗塞」に分類されます。いずれの病型もおおよそ25~30%と約1/4程度を占めていますが、特に近年、高齢化や心房細動の増加を背景に、心原性脳塞栓症の割合が増加してきています。
ラクナ梗塞は脳の細い血管の、アテローム血栓性脳梗塞は脳や頸部の比較的太い血管の動脈硬化が主な原因です。両者ともに高血圧、糖尿病、脂質異常症、腎機能障害などのリスク因子、喫煙や過度の飲酒との関連が指摘されています。


 
 心原性脳塞栓は、心房細動などの不整脈をはじめとする心臓の病気が原因となります。本病型は近年、薬物療法からカテーテル治療まで予防の選択肢が大きく広がっています。治療には抗凝固薬(2011年以降、ワルファリンよりDOAC(直接経口抗凝固薬)が第一選択に移行している)を使うことが多いです。または、抗凝固薬が使用しにくい場合の代替として2019年頃よりカテーテルによる左心耳閉鎖術、2018年頃より心房細動そのものを治療するアブレーションなども一般的に行うようになってきています。

 その他の脳梗塞には、多様な病態が含まれます。脳や頸部の動脈壁が裂ける脳動脈解離、脳深部の細い血管の根本がつまるBAD(branch atheromatous disease)がその代表です。また、比較的若い世代(おおむね45歳未満)に多い若年性脳梗塞では、心臓の左右を隔てる壁に小さな穴が残ってしまう卵円孔開存(奇異性脳塞栓症)、血液が固まりやすい体質(血液凝固異常)、血管に炎症が生じる血管炎、脳の主要な血管が徐々に細くなるもやもや病、遺伝性脳小血管病なども原因となります。さらには、充分な検査を行っても原因が特定できない塞栓源不明脳塞栓症(ESUS:Embolic Stroke of Undetermined Source)も含まれます。これらはそれぞれ病態・原因が異なるため、どの治療が最適かは専門医が個別に判断します。

1. 2. 脳(内)出血

 脳の血管が詰まる脳梗塞に対して、脳の血管が破れる病気が脳出血です。くも膜下出血や硬膜下血腫との区別をわかりやすくするために、脳内出血と呼ばれることもあります。脳出血は脳卒中全体の約19%を占めています。脳梗塞と比較して重症例が多く、後遺症が残る割合・死亡率ともに高い傾向があります。

 脳出血には、主に、「高血圧性脳出血」と「脳アミロイド血管症関連の脳出血」が主に含まれます。最も多いのは高血圧性です。高血圧が長年続くことで脳の細い血管がもろくなり、破れやすくなります。高血圧性脳出血は脳の深部(被殻・視床・小脳・脳幹など)に好発します。脳アミロイド血管症は、脳の細い血管にアミロイドというタンパク質が沈着して血管がもろくなる病態です。高齢者に多く、脳の表面に近い部位で発症しやすいのが特徴です。脳アミロイド血管症はアルツハイマー病とも関連しており、認知症への注意も必要です。近年は高齢化を背景に脳アミロイド血管症による脳出血が増加傾向にあります。いずれの病型にしても厳格な血圧管理が予防・再発防止の中心となります。他方で、日本を含めた東アジア諸国では、脳出血の発症が欧米諸国より有意に高頻度であり、高血圧の影響以外にも、様々な遺伝的要因も示唆されています。

 

 

 また、脳梗塞や心筋梗塞などの予防のために抗血栓薬(血液をさらさらにする薬)を服用している方では脳出血のリスクが高まることが知られており、抗血栓療法中の脳出血急性期における血液製剤・中和薬投与(薬の効果を速やかに打ち消す治療)を行うことがあります。

そのほかにも、脳出血の原因となる病気はいくつかあります。脳の血管が生まれつき異常に絡み合った脳動静脈奇形、血管の塊が脳の中にできる海綿状血管腫、脳の主要な血管が徐々に細くなるもやもや病、さらに脳腫瘍からの出血などがその例です。これらが原因の脳出血では、出血を止めるだけでなく、原因となっている病気そのものを治療することが重要になります。

 脳出血を発症した場合の主な治療法は降圧療法(お薬で血圧を下げる治療)です。著しい重症化が予想される脳出血や、意識障害を伴う脳出血では、脳外科手術が考慮されることもあります。手術の術式は、病状によって、開頭血腫除去術、定位的脳内血腫除去術、脳室ドレナージ術、神経内視鏡手術などが選択されることが多いです。当院では脳内科と脳外科が共同で脳出血の診療を担当し、一人一人の患者様にとっての最適な治療法を提供しております。特に、脳動静脈奇形、海綿状血管腫、もやもや病などに関しては専門的に取り組んでおり、全国有数の数の治療を行っています。

1. 3. くも膜下出血(詳細は「 脳動脈瘤」の項目を参照)

 脳動脈瘤が破れることにより、突然の頭痛や意識障害などの症状が出現します。クモ膜下出血は脳卒中全体の約5%を占めています。破れる血管は脳の表面を走る主幹脳動脈で、血管の一部が瘤状に膨れた脳動脈瘤が破裂します。脳動脈瘤が破裂すると、脳の表面を覆うくも膜という薄い膜の内側に出血します。くも膜下出血は脳卒中の中では死亡率が高く、重症の脳卒中です。脳動脈瘤の病態や治療の詳細については「 脳動脈瘤」の項目を参照下さい。

1. 4. 一過性脳虚血発作

 脳の血管が一時的に詰まり、半身の脱力・言葉の障害・視力の異常などの症状が突然現れるものの、多くは1時間以内、遅くとも24時間以内に症状が自然に消えてしまう病気です。「症状が治った」からといって安心はできません。一過性脳虚血発作は脳梗塞の前触れと考えられており、適切な治療を受けなければ、3か月以内に約10〜20%の方が脳梗塞を発症すると報告されています。一方で、発症早期に治療を開始した場合、90日以内の脳卒中発症リスクを約80%軽減できることも分かっています。一過性脳虚血発作をきっかけに精密検査を行うことで、心房細動などの不整脈や、頸部・脳の血管の狭窄といった脳梗塞の原因が見つかることもあります。リスクの評価にはABCD2スコア(年齢・血圧・症状・持続時間・糖尿病の有無を点数化したもの)やMRI検査などが用いられ、専門医が総合的に判断します。症状がいったん消えても、すぐに専門の医療機関を受診することが大切です。


図.1 一過性脳虚血発作


図.2 ABCD2スコアと将来の脳梗塞発症

2. 脳卒中の症状

2. 1. 多彩な脳の機能と障害による症状

 脳は部位に応じて、言葉・運動・視覚など様々なはたらきを持っています。そのため脳卒中では、障害される部位によって現れる症状が異なります。

 たとえば、左側の前頭葉には「言葉を話す」はたらきを持つ部位(ブローカ野)があり、左側の側頭葉には「言葉を理解する」はたらきを持つ部位(ウェルニッケ野)があります。これらが障害されると、言葉がうまく話せない・相手の言葉が理解できないといった症状(失語)が起こります。また、前頭葉の後ろ側は手足の動きを司っており、障害を受けると手足の麻痺や呂律のまわりにくさが現れます。なお、脳は左右が交差して体を制御しているため、左の脳が障害されると右半身に、右の脳が障害されると左半身に症状が出ます。さらに後頭葉は視覚の処理を担っており、障害の程度によって視野の半分が欠ける半盲や、1/4が欠ける四分盲が起こります。

図.脳の部位ごとの機能と障害された場合の症状

2. 2. 覚えておくべき!脳卒中の典型的な5症状

 このように、とても多彩な症状が起こりますが、代表的な症状を覚えておくことが大切です。日本脳卒中協会、米国の脳卒中キャンペーンで、以下の脳卒中を疑う5つの典型的症状が提示されています。
 脳卒中の早期発見のための合言葉として、FAST(Face・Arm・Speech・Time)が広く知られてきました。「顔がゆがむ・腕があがらない・話ができない」の3つの症状を確認し、1つでも該当すれば脳卒中の可能性があるとして、すぐに救急車を呼ぶことを促す標語です(下図)。
 近年はこれにBalance(バランス:立てなくなる・ふらふらする)とEyes(目:物が二重に見える・視野がかける)の2項目を加えたBE-FASTも普及しており、より脳卒中を見逃しにくい利点があります。
さらに、日本脳卒中協会では、クモ膜下出血や脳出血を意識し、「経験したことのない激しい頭痛」を加え、注意を促しています。
*これら症状のうち、1つだけの症状が出現することもありますし、いくつかの症状が重なる場合があります。また、重症な場合には意識が悪くなることもあります。もし、ご自分や周囲の人にこのような症状がみられましたら、一刻も早く専門医を受診してください。
*脳卒中以外の病気でも、このような症状が突然現れる場合がありますが、「普段の様子とは明かに違う」のであれば、緊急で病院を受診する方が無難です。

  1. 片方の手足・顔半分の麻痺(基本的に額は含まない)・しびれが起こる。
    手足のみ、または顔のみの場合もあります。

    片方の手足がしびれる
  2. 呂律が回らない、言葉がでない、他人の言うことが理解できない

    呂律が回らない
  3. 力はあるのに、立てない、歩けない、フラフラする(体のバランスが取れない)

    フラフラする
  4. 片方の目が見えない、物が二つに見える、視野の半分が欠ける
    片方の目にカーテンがかかったように、突然一時的に見えなくなる

    片方の目が見えない
  5. 経験したことのない激しい頭痛がする

    激しい頭痛

*これら症状のうち、1つだけの症状が出現することもありますし、いくつかの症状が重なる場合があります。また、重症な場合には意識が悪くなることもあります。もし、ご自分や周囲の人にこのような症状がみられましたら、一刻も早く専門医を受診してください。
*脳卒中以外の病気でも、このような症状が突然現れる場合がありますが、「普段の様子とは明かに違う」のであれば、緊急で病院を受診する方が無難です。

act-fast
画像をクリックすると拡大表示できます。

FASTで脳卒中を疑おう!
より簡潔に、3つの症状(顔の麻痺、腕の麻痺、言葉の障害)を取り上げたFAST(Face Arm Speech Time:ファスト)という標語も良く使われます。米国脳卒中協会では、脳卒中を疑う人を見たら、3つのテストをするように勧めており、その頭文字を取ってFASTと読んでいます。FASTの3項目のうち1つでも該当する場合、脳卒中の可能性が高いと考えます。FASTの脳卒中診断的中率は80%近いとも言われています。おかしいと思った場合は、FASTをやってみましょう。

3. 脳卒中を疑ったら

 上のような脳卒中の症状が出現した場合には、可能なかぎり早く救急車を呼んで、病院を受診しましょう。一時的に症状が改善しても油断は禁物です。それが重度の脳梗塞の前兆であり、危険なサインであることもあります。

脳梗塞では、発症してから、4.5時間以内の患者さんのみに行える特殊な治療(t-PA 静注療法)があります。脳の太い血管が詰まっており、症状が重い場合にはカテーテルにより血管の詰まりを取る治療(血栓回収療法)も行っています。どちらの治療も早ければ早いほど有効性が高く、後遺症を軽くすることができる可能性があります。時間が経ってしまった脳梗塞では、脳の血流を再開させても症状が改善しないことがあり、可能な限り早く治療することが重要です。夜中に目が覚めたときや夜寝る前に症状が出現したときには、様子を見ずに迷わず救急車を呼びましょう。一時的に症状が改善しても、それが重度の脳梗塞の前兆であり、危険なサインであることもあります。

 Time is brainという言葉があります。脳梗塞治療に対する時間の重要性を謳った言葉です。脳梗塞では1分間治療が遅れると、190万の細胞が失われると言われています。それほど、早く治療することが重要なのです。

 

“Time is brain”
1,900,000 cells /min

 

 

 また、脳卒中が疑われる場合には、脳への血流を保つために、横にすることが原則です。意識がない時には、楽に呼吸ができ、吐いたものが喉につまらないよう、側臥位にして、直ちに119番に電話し、救急車を呼びましょう。

4.病院での問診、診察、検査、治療

4. 1. 診察から検査:

問診:ほとんどの脳卒中は「突然」発症します。突然、片方の手足・顔半分の麻痺、しびれが出現し、しゃべりにくくなったり・言葉が出てこなかったり、目の前が二重に見えたりします。このように、まず、症状が出てきた経過([発症様式]という言い方をします。)を問診で確認します。「突然」の発症でなければ、脳卒中ではない病気も適切に考えていく必要があります。

診察:麻痺、感覚障害の強さや範囲、どのようなしゃべりにくさかなどを診察で判断し、上の問診情報と併せて、適切な検査を選択していきます。

頭部CT:X線を用いて脳の輪切り画像(断層像)を作成し、主に急性期脳出血の有無(右図の白い病変が脳出血)を確認します。急性期の早期虚血変化、慢性期の脳梗塞、脳出血はともに黒く描出されます。造影剤を点滴しながらCT検査を行うと、脳血流の状態もみることができます。撮影は仰臥位で行い、撮影時間は、造影剤を用いなければ約5分で、造影剤を用いると5~10分かかります。



頭部MRI: MRI(磁気共鳴画像)検査は、磁力を使って脳の断層像を作成します。このためX線の被ばくはありません。MRIによって、急性期の脳梗塞(下図の白い小さな病変)を判定でき、急性期の脳出血も判定可能です。CTと同様に、造影剤を点滴しながらMRI検査を行うと、脳血流の状態もみることができます。撮影は仰臥位で行い、撮影時間は撮影内容によって異なりますが、10~20分です。

頭部MRI

頭部MRA: 脳動脈を全体像として映し出すため、脳動脈の狭窄や閉塞、動脈瘤と称されるこぶ状の膨らみの有無を確認します。



頸動脈エコー:人の耳では聞こえないほどの高い周波数の音を超音波といいます。この超音波を照射して頸動脈の状態を調べます。頸動脈プラーク(動脈硬化による病変)による狭窄の有無などを評価します。

    1.  


心エコー:心原性脳塞栓症は心臓内にできた血栓などの異物が原因となって脳梗塞を発症します。このため、心エコーで心臓内の血栓・異物の有無を確認する必要があります。
その他、血液検査、心電図、胸部レントゲンを行います。

5.脳卒中の急性期治療

治療: 大きく分けて、再開通のための治療(血栓溶解療法とカテーテル治療)、再開通療法以外の治療(①抗血栓薬内服、②抗血栓薬点滴、③脳保護薬点滴、④抗脳浮腫薬点滴)に分けられます。

薬物療法

5. 1. 再開通のための治療

脳梗塞を発症して間もなく病院を受診した場合、閉塞している血管を再開通させる治療の適応になることがあります。その主な治療法が静注血栓溶解療法と、カテーテル治療です。

  • 静注血栓溶解療法(t-PA)

血栓を溶かす作用を持つアルテプラーゼ(組織型プラスミノゲン・アクティベーター: t-PA)という薬剤を、静脈に確保した点滴ラインから1時間かけて投与する治療法です。脳梗塞患者への有効性(転帰を改善させる効果)が科学的に証明されている一方で、出血などの合併症のリスクもあるため、厳格な投与基準が設けられています。最も重要なのは発症からの時間で、「発症から4.5時間以内に治療が開始できる」、または「最後に無事が確認できた時刻からは4.5時間以上が経過しているが、発見から間もなく、画像所見上発症から4.5時間以内であると見込まれる」場合に限って、本治療の対象になります。なお、この時間の条件を満たしていても、来院時の症状(重症度)や、既往歴、内服しているお薬、画像所見などを総合的に判断して、他の内科治療を選択する場合もあります。

 急性期再灌流療法の概念

  • カテーテル治療(緊急血栓回収療法)

 細い管であるカテーテルを閉塞している脳血管まで誘導し、血栓回収デバイス(ステント型血栓回収機器、吸引カテーテル)を使って、血管を再開通させる治療法です。脳を栄養する血管の中でも、比較的上流の太い血管に対して行われ、前記のt-PA治療と同時に行われることもあります。来院時の神経症状(重症度)、画像所見(閉塞血管や脳梗塞の大きさ)などをもとに治療適応を判断します。

 特に太い血管に対しては、t-PA治療よりも高い割合で再開通を達成でき、t-PAを含む内科治療と比較して高い治療効果(転帰を改善させる効果)が証明されています。一方で、再開通した先の脳組織に浮腫や出血が生じて症状が増悪するリスクもあるため、画像所見に基づいた適応判断が重要です。当院では主に、造影剤を静脈内投与してから撮像するCT灌流画像により、治療により救済可能な領域を可視化した上で、治療適応を判断しています。

 この治療については、近年、新しい臨床試験の結果に基づいて治療対象が拡大しつつあります。当院では最新のエビデンスと患者さん一人ひとりの状態を踏まえ、最適な治療法を判断するよう心がけています。

5. 2. 再開通療法以外の治療:抗血栓療法など

再開通療法が適応となる場合は、まずその治療を行います(再開通療法については「再開通のための治療」の項目を参照下さい)。その後、引き続き脳卒中ユニット(SCU)で全身管理や追加の治療を行います。脳卒中ユニット(SCU)とは、医師・看護師・リハビリスタッフなどがチームで治療を行う脳卒中の専門病棟です。

脳卒中には主に「脳梗塞」と「脳出血」があり、それぞれで治療の方法が大きく異なります。くも膜下出血については「脳動脈瘤」の項目を参照下さい。


①脳梗塞
脳梗塞はいくつかのタイプに分かれます(主に、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症の3つです)。それぞれのタイプで治療法が一部異なるため、できるだけ早く原因を調べます。ただし、初めは原因がはっきりしないこともあり、その場合は検査と同時に適切な治療を進めていきます。

【抗血栓療法】
血のかたまり(血栓)ができるのを防ぐ治療です。抗血栓薬には、抗血小板薬と抗凝固薬の2種類あります。ラクナ梗塞・アテローム血栓性脳梗塞には抗血小板薬を使うことが多く、急性期には効果を高めるために抗血小板薬を2種類併用することもあります。心原性脳塞栓症には抗凝固薬を使うことが多いです。ただし、抗血栓薬は「出血しやすくなる」という副作用があるため、患者さんの状態に合わせて慎重に使います。

【脳保護薬】
脳梗塞が起こると、傷ついた脳細胞から有害な物質が出ます。脳保護薬はそれを抑え、脳へのダメージを軽くする目的で使われます。

【血圧管理】
脳梗塞の直後は血圧が高くなることがよくあります。脳梗塞急性期の高い血圧は、脳の血流を保つために必要な場合もあるため、すぐに血圧を下げることは勧められていません。ただし、収縮期血圧が220 mmHgを超える場合や合併症がある場合には、慎重に血圧を下げることもあります。一方で、脳梗塞再発予防の観点では高血圧は再発リスクの一つなので、状態が落ち着いたら、再発予防のために血圧を徐々に下げていきます。

【血糖・脂質管理、栄養管理・嚥下訓練】
血糖やコレステロールの管理は、脳梗塞からの回復や再発予防にとても重要です。血糖が高い場合は、一時的にインスリンを使うこともあります。コレステロールを下げる薬を早期から使うこともあります。また、発症早期から十分な栄養摂取が重要です。脳卒中後は飲み込み(嚥下)が悪くなることがあります。その場合は、食事形態の調整や嚥下訓練を行いますが、必要に応じて経鼻胃管(鼻から胃へ管を入れる)などで安全に栄養をとっていただくこともあります。


②脳出血
脳出血では「出血を広げないこと」が重要で、血圧管理が中心となります。

【血圧管理】
できるだけ早く、収縮期血圧 140 mmHg未満を目標に血圧を下げます。はじめは点滴で治療し、その後は飲み薬に切り替えていきます。

【抗浮腫療法】
脳出血の周囲には「むくみ(脳浮腫)」が生じます。このむくみも症状を悪くするため、薬で抑える治療を行います。

【抗凝固薬を飲んでいる場合】
抗凝固薬を飲んでいる方に脳出血が起きた場合は、薬を中止し、中和剤(薬の効果を打ち消す薬)を使うなどの対応を、できるだけ早く行います。

【手術について】
意識が悪くなる・麻痺などの症状が悪化する・呼吸や血圧に異常が出る、のような場合には手術を検討します。

③合併症
脳卒中の急性期には、さまざまな合併症が起こることがあります。主なものは、感染症(肺炎、尿路感染など)、けいれん、出血(抗血栓薬の影響)などです。合併症が起きた場合は、早く見つけて治療を行います。

④急性期から回復期へ
入院後早期から、早くリハビリテーションを開始します。しかし、多くの場合、急性期治療後に更なる後遺症の改善を目指し、回復期リハビリテーション病院へ転院することが多いです。脳卒中の回復は、発症後3〜6か月でゆるやかになるため、早い時期からのリハビリテーションがとても大切です。

 

6.脳卒中の予防

6. 1. 危険因子の管理と内科治療

 脳卒中にかかりやすい要因を危険因子と呼びます。脳卒中の最大の危険因子は、加齢と高血圧です。そのほかの危険因子も挙げられています。コントロールできる主要な危険因子を、下記項目ごとに説明していきます。

① 高血圧
 高血圧は血圧が140/90mmHg以上のことです。血圧が高いほど、直線的に脳卒中の発症率は高まります。高血圧は脳の血管の大きな負担となり、動脈がもろくなり、破れたりしやすくなります。血圧を下げることは、最も効果的な脳卒中の予防法です。過去の研究から、降圧療法で脳卒中の発症率を30~40%減少することが明らかになっています。一般的には、130/80mmHg未満を目標とします。さらに、血圧が変動することも、悪影響であるため、血圧の安定が望まれます。塩分を多く摂るほど高くなりますので、食事の塩分を少なくすることが重要です。

② 糖尿病
 脳梗塞の発症予防には、糖尿病の血糖管理だけでなく、高血圧や脂質異常症、肥満などの管理と併せて、包括的にコントロールすることが重要です。

③ 脂質異常症
 血液中の脂質は血管を詰まらせる原因になります。総コレステロール値が1mmol/L(38.7mg/dL)増えると脳梗塞の発症率が25%増加することが明らかになっています。とくにアテローム血栓性脳梗塞の発症リスクと関連することが示されています。スタチン(HMG−CoA還元酵素阻害薬)で治療した場合、脳卒中の発症が23%低下する報告があります。コレステロール値を適宜計測し、管理することが重要です。特に悪玉のLDLコレステロールが高い人は、脂肪の摂取を制限する努力が必要です。

④ 不整脈(心房細動)
 心房細動(なかでも非弁膜症心房細動)は加齢により増加します。心臓の心房に生じた血栓が脳血管に飛び、脳梗塞につながります。非弁膜症心房細動のある患者の平均5%が毎年、脳梗塞を発症し、心房細動のない集団に比べて、脳梗塞発症リスクを2~7倍に高めます。脳卒中発症のリスク層別化に、CHADS 2スコアを用いることが推奨されています。CHADS 2は「うっ血性心不全(1点)、高血圧(1点)、年齢75歳以上(1点)、糖尿病(1点)、脳卒中または一過性脳虚血発作の既往(2点)」の合計点がCHADS 2スコアとなります。スコア0の脳卒中発症率は1%/年、スコア1の脳卒中発症率は1.5%/年、スコア2の脳卒中発症率は2.5%/年、スコア3以上の脳卒中発症率は≧5%/年と示されています。CHADS 2スコア2点以上は、血液凝固を減らす薬物治療(直接作用型経口抗凝固薬(direct oral anticoagulant ,DOAC)もしくはワルファリン)を行うことによって脳梗塞の発症を減らすことができます。CHADS 2スコア1点では、DOACの使用を勧められます。CHADS 2スコア0点では、年齢65歳以上や血管疾患、心筋症の合併は、抗凝固療法を考慮しても良いとされます。

⑤ 喫煙
 ニコチンが血圧を上昇させ、動脈硬化を促進すると言われています。脳梗塞やくも膜下出血の危険因子です。喫煙本数が増えると、脳卒中発症率が上昇する用量依存性を認めます。禁煙が強く勧められます。5~10年間の禁煙で脳卒中のリスクは低下します。受動喫煙も危険因子になるため、受動喫煙の回避が勧められます。

⑥ 飲酒
 機会飲酒者と比べ、大量の飲酒習慣(エタノール450㎎/週以上)は脳卒中の発症率を68%増加させ、とくに脳出血やくも膜下出血を急増します。大量の飲酒習慣はやめましょう。

6. 2. 血管内治療、外科治療

 脳梗塞を予防するための治療の基本は、高血圧・糖尿病・高コレステロール血症などを薬でコントロールする内科的治療です。しかし、頸部や頭の血管に動脈硬化による高度な狭窄(血管の細い部分)がある場合、薬だけでは脳梗塞のリスクを十分に下げられないことがあります。そのような場合に、血管内治療(カテーテル治療)や外科手術が検討されます (図)。

図:狭窄の程度、プラークの量で治療方針を調整する

 

なぜ血管が狭くなるのか:
 加齢や危険因子(6.1.危険因子の管理と内科治療を参照)よって動脈硬化が進行し、動脈の内側にコレステロールなどの脂質(プラーク)が蓄積すると、血管が徐々に細くなります。プラークの一部が剥がれて血流によって移動することで脳の血管に詰まり、脳梗塞を起こすことがあります。またプラークの量が多くなり血管が極端に狭くなったり閉塞したりすることで、脳への血流供給が不足し重篤な脳梗塞を起こす場合があります。

頸動脈狭窄症(首の血管の狭窄)に対する治療:
 脳へ向かう最も重要な血管である頸動脈が動脈硬化で狭くなった場合、以下の2つの治療法があります。

1. 血管内治療:頚動脈ステント留置術 (Carotid Artery Stenting; CAS) 図
 細い管(カテーテル)を太ももの付け根、もしくは腕の血管から挿入して、狭窄した血管まで進めます。風船(バルーン)で狭くなった部分を内側から押し拡げます。その後、金属の網(ステント)を留置して血管を広がった状態に保ちます。全身麻酔が不要な場合が多く、体への負担が比較的小さい治療法です。

図:頚動脈ステント留置術

2. 外科手術:頚動脈内膜剥離術 (Carotid Endarterectomy; CEA) 図
頚部を切開し、頚動脈を直に露出させ、血管内のプラークをそのまま取り除きます。実績の長い治療法であり通常は全身麻酔下で行われますが、プラークを根本的に除去するため再狭窄が比較的少ないといわれています。

図:頚動脈内膜剥離術

 

この2つの治療は、大きな試験でほぼ同等の予防効果が示されています。どちらの治療が向いているかは患者さんごとに異なります。首の手術リスクが高い方・高齢の方などにはカテーテル治療が、プラークの性状や量、血管の構造によっては外科手術がより適する場合があります。当院では担当医師とカテーテルチーム、外科手術のチームが合同で検討し、患者さんごとに最善の治療方針を決定しています。

 

頭蓋内血管狭窄(頭の中の血管の狭窄)に対する治療:
 
頭の中の血管が動脈硬化で細くなることもあります。脳血管は頚動脈より細く、枝分かれも複雑なため、血管内治療の難易度・合併症のリスクも相応に高くなります。従って、まず薬物による内科的治療を徹底することが基本です。ただし、十分な内科的治療を行っているにも関わらず脳梗塞を繰り返す場合や、狭窄がきわめて高度で血流への影響が大きい場合など、内科的治療で脳梗塞再発のリスクが高いと考えられる場合には、血管内治療や外科手術を検討します。

 血管内治療では、頚動脈と同様にバルーンで血管を拡張したり、ステント留置して広がった状態を維持するよう試みます。外科手術においては、頭の中の血管を頭の外の血管と繋ぐ(=バイパス経路を作成する)ことで、狭窄・閉塞した部分より下流の血流を補うバイパス術が存在します。狭くなっている部位やその程度に応じて、これらの治療を使い分けることになります。当院では担当医師とカテーテルチーム、外科手術のチームが合同で検討し、患者さんごとに最善の治療方針を決定しています。

7.脳卒中後遺症

 急性期脳卒中治療の発展により脳卒中による死亡率は年々改善してきていますが、超高齢化社会において、脳卒中を発症する方は多く、その後の後遺症、合併症とうまく付き合っていく必要があります。主な合併症として、脳血管性認知症、脳卒中後てんかん、うつ病、サルコペニア、摂食嚥下障害などがあります。

① 脳血管性認知症
 一般的に「認知症」といえばアルツハイマー型認知症が有名ですが、脳卒中などの脳血管の病気がきっかけとなり認知症が発生することがあるのを「脳血管性認知症」と呼びます。頻度としてはアルツハイマー型認知症に次いで多く、認知症の約20-30%程度を占めるとされています。脳組織は脳卒中により一旦障害されてしまうと回復が難しく、根本的な治療はありませんが、脳卒中の再発はさらなる増悪を起こしてしまうため、脳卒中のリスクをきちんと管理することが重要になります。また、アルツハイマー型認知症が合併する症例もありその場合は混合型認知症と呼びます。

② 脳卒中後てんかん
 脳卒中の約10%程度の方に「脳卒中後てんかん」を合併するとされており、高齢者発症のてんかんの約半数が脳卒中後てんかんと考えられています。一般的には脳梗塞よりも脳出血で危険度は高く、一旦発症すると、発作の再発防止のために抗てんかん発作薬の内服を必要とします。症状は様々で、けいれんをする方もいれば、物忘れのような認知症に似た症状を来す方もあり、適切な問診や脳波検査、脳血流検査などが必要となります。

③ 脳卒中後うつ病
 脳卒中後に意欲や活動性の低下を来すようになり、「脳卒中後うつ病」と診断される場合があります。脳卒中患者様の約30%程度にみられるとされ、早期の発見と治療が必要となります。食欲がない、眠れない、疲れやすい、集中できないといった症状がある場合は、専門家に相談し、適切な治療が必要となります。治療としては、心理教育や支持的精神療法、抗うつ薬による薬物療法があります。

④ サルコペニア
 高齢になりますと、加齢、さらには病気や手術による長期安静、栄養不足により、筋力が低下し筋肉量が減少していく「サルコペニア」が生じることが問題となっています。ご高齢の脳卒中発症者の約30~40%がサルコペニアを有することがわかってきており、脳卒中発症をきっかけに、さらにサルコペニアが進む可能性があります。サルコペニアになると、体を動かす力や食べる力が低下し、歩行障害・転倒や誤嚥性肺炎などのリスクとなるため、対策が必要です。栄養面については、適切なカロリー摂取と共に、タンパク質摂取を3食均等にとることが重要です(ただし、腎臓病などでたんぱく質の摂取を控える必要がある場合を除きます)。運動面については、負担の少ない筋力トレーニングやウォーキングなどの有酸素運動が有効とされています。

⑤ 摂食嚥下障害、誤嚥性肺炎
 脳卒中後には、食べ物をうまく食べられず・飲み込みづらくなる「摂食嚥下障害」を合併することがあります。脳卒中発症まもなくは約30%~60%の患者様が摂食嚥下障害を合併するものの、早いうちから回復する場合が多いです。しかし、脳卒中発症から半年経過しても摂食嚥下障害が後遺する患者様は約10%いるとされます。この摂食嚥下障害が原因となり、唾液や食べ物を飲み込むときに、誤って気管に入り、誤嚥性肺炎をきたすことも問題となります。摂食嚥下障害が後遺しお困りの場合は、耳鼻咽喉科による「嚥下外来」で相談し、患者さんの嚥下状態に合わせた食形態、姿勢、工夫についてご説明を受けて頂くことをおすすめします。適切な方法で、栄養をしっかり確保することは、摂食嚥下障害への対策、誤嚥性肺炎の予防としても重要です。

8. 脳心連関:国循ブレインハートチーム(NCVC Brain Heart Team)の取り組み、治療紹介

 脳梗塞の原因の約3割は心臓病です。近年、脳卒中の原因究明や再発予防に有効な心臓病に関する検査法、治療法が登場しております。それらが役立つ可能性がある脳卒中に関して、最適な医療を提供するために脳卒中医家(ブレイン)と心臓医家(ハート)が共同となったチーム(ブレインハートチーム)を結成することが重要と言われるようになりました。当院は、開設当初よりこのような連携を構築してきた、いわばベテランチームです。日本国内ならず世界からも注目されており、世界脳卒中機構から、ブレインハートチームに関する世界の8モデル施設の1つに選出されました。

 脳卒中の診療においてブレインハートチームが活躍する場面は、大きく2つです。1つは卵円孔開存に関連した脳梗塞に対する再発予防治療です。もう1つは心原性脳塞栓症の代表的な原因である心房細動という不整脈の診断・治療です。そのほか脳卒中以外にも、失神で悩む患者さんに対しても、この診療連携体制を応用しています。

  • 卵円孔開存に関連した脳梗塞
    卵円孔は胎生期に重要な役割をする心臓内の右心房と左心房の壁に空いている隙間で、約4人に1人が成人になっても「卵円孔開存」として残っている場合があり、片頭痛や脳梗塞と関連します。特に、60歳未満で生活習慣病などの一般的な脳梗塞の危険因子に乏しい方が脳梗塞になった場合の原因として重要です。卵円孔開存に関連した脳梗塞を発症した場合には、カテーテルによる卵円孔開存閉鎖術を行うことで高い再発予防が期待できます。心不全科・肺循環科との共同チームで卵円孔開存の検査を行い、治療適応を判断し、手術ならびに術後管理を行います。

 卵円孔開存の検査は脳梗塞の原因を調べる標準的な検査には含まれていなかったり、また検査手法も複雑だったりします。原因不明の脳梗塞と診断されている方のなかには、卵円孔開存が見つかっていない場合があります。気になる方は当院にご相談下さい。

  • 心房細動の診断・治療
    脳梗塞の原因となる心臓病の大半は心房細動という不整脈です。心房細動は高齢になるにつれて発症しやすくなり、3人に1人は一生涯のうちに発症するといわれています。脳梗塞の原因だけでなく、心不全や認知症との関連も知られています。心房細動の初期は気まぐれの発作のようなもので診断が難しく、脳梗塞の原因として心房細動が疑わしいのに見つからない場合には「植込み型心電図記録計」を導入し、自宅で生活しながら遠隔で心房細動のチェックすることがあります。

 心房細動がある患者さんの治療方針については不整脈科との共同チームで検討します。心房細動に伴う症状や心不全を合併する場合は「カテーテルアブレーション」を検討します。心房細動による脳梗塞を予防するには抗凝固薬が必要ですが、抗凝固薬には出血の危険性があります。過去に大出血を起こしたことがある、出血の危険性が高いと予想される、抗凝固薬を服用していても脳梗塞を発症してしまった場合には「左心耳閉鎖術」を検討します。

10.遺伝性脳小血管病

脳卒中の原因となる遺伝性脳小血管病については、こちらをご覧ください。
「脳小血管病情報ポータル https://hsvd-portal.com/」

 

最終更新日:2026年09月23日

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