移植と臓器・組織提供
国立循環器病研究センター組織保存バンク
国立循環器病研究センター組織保存バンクについて
1999年から国立循環器病研究センターでは「組織保存バンク」が活動を始め、このような事業をしています。
ドナー情報への対応
ドナー情報に応じて、提供患者さん(=ドナー)の入院施設へ、コーディネーターや心臓弁や血管を採取するチームを派遣します。
凍結保存・管理
ご提供いただいたホモグラフトの検査をします。 また、クリーンルーム(無菌室)で処理をして、液体窒素の中(約-190°C)で凍結保存します。
払出し
ホモグラフトを必要とする患者さん(=レシピエント)の入院施設へ、公平公正に配分しています。
啓発活動
提供病院のスタッフ、ご希望の施設や団体、その他一般の方などに、組織移植に関する情報の提供を行います。
組織移植とホモグラフトについて
「組織(tissue)」とは、からだの一部で皮膚、骨、膵島、心臓弁、血管、角膜などのことです。
また「組織移植」とは、機能を果たせなくなった組織や臓器の機能回復を図るため、ヒトの組織を移植することです。
亡くなられた方から提供された心臓弁や血管は、“ホモグラフト(同種心臓弁・血管組織)”と呼ばれます。
これらは、人工弁や人工血管での治療が難しい方に用いられています。
代用の弁の種類

- ホモグラフト:
亡くなられた方から提供された組織を指します - 人工弁:
- 生体弁:
ブタの弁やウシの心膜から作られます - 機械弁:
炭素繊維やチタンなど人工物からできています
- 生体弁:
取り扱う範囲
大動脈弁・肺動脈弁ホモグラフト
大動脈弁/肺動脈弁の部分だけではなく、その周囲にある心筋の一部とその先の血管(約10~15cm)を含みます。
胸部大動脈ホモグラフト
胸部にある大動脈(約10~15cm)です。心臓から全身に血液を送るための一番太い血管です。
ホモグラフトの特徴
下記の特徴に示すように、ホモグラフトは血栓ができにくく、細菌などの感染に強いというメリットがあります。また臓器移植とは異なり、免疫抑制剤の服用も必要ありません。
ホモグラフト | 機械弁 | |
---|---|---|
弁機能 | 良好 | 良好 |
耐久性 | 限界あり | 良好 |
血栓 | できにくい | 生涯、抗凝血薬療法 (=血を固まりにくくする薬を服用) |
抗感染性 | 細菌の感染に強い (=抵抗性が高い) | 抵抗性が低い |
弁音 | 正常の弁と同じ | 弁の開閉時にカチカチ音がする |
入手 | 提供が少なく困難・貴重 | 購入 |
その他 | しなやかでフィッティングが良い | - |
ホモグラフトの適応病態

“大動脈弁ホモグラフト”移植の対象となる疾患例
- 感染性心内膜炎
- 大動脈弁輪膿瘍
- 人工弁感染性心内膜炎
- 大動脈炎症候群 など
大動脈弁ホモグラフトは、弁やその周りに重度の感染を伴う病気に有用です。上の図は、感染性心内膜炎を示しています。心臓の弁に、いぼ状のかたまり(菌の感染巣)が付着しています。
また、妊娠や出産を希望される若い女性、激しい運動をする方、ワーファリン(血液を固まりにくくする薬)を使用できない方にも優先して使用されます。
“肺動脈弁ホモグラフト”移植の対象となる疾患例
- 大動脈弁閉鎖不全症
- 先天性心疾患 など
肺動脈弁ホモグラフトは、主に上に挙げた疾患の方へ、ロス手術やノーウッド手術という手術をする際に使用されます。
その中でも特にお子様では、この手術をすると大動脈弁の成長が期待できるため、優先して使用されます。
“胸部大動脈ホモグラフト”移植の対象となる疾患例
- 人工血管感染
- 感染性大動脈瘤 など

胸部大動脈ホモグラフトは、大動脈やその周りに重度の感染を伴う病気に有用です。右は胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤の図ですが、これらに感染を伴う場合、適応があります。また、人工血管を用いた手術の後に、重症の感染を起こした場合にも有用です。
問い合わせ先
国立循環器病研究センター代表番号 もしくは
国立循環器病研究センター組織保存バンク ncvc-bank@ml.ncvc.go.jp
最終更新日:2021年09月28日