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循環器病対策情報センター ニュースレター vol.12(2026.7.3)
―循環器病対策の新たな幕開けー
「第1回脳卒中・心臓病の対策にかかる情報共有会」 開催報告(1)
現在、循環器病対策情報センターは、令和8年度から開始された「脳卒中・心臓病等の対策に係る総合推進事業」に精力的に取り組んでいます。7月1日付で、久松隆史先生が、副センター長として着任されました。さらにDPC管理室、人間ドックセンターから、併任者が5名増員されました。先日、上野厚生労働大臣が、国会で本事業に言及されるなど、国民からの注目度が高い中、メンバー一同、身が引き締まる思いです。
さて4本柱の一つ、「循環器病対策推進基本計画の進捗管理・評価」の柱の中で、都道府県の循環器病対策担当者や「脳卒中・心臓病等総合支援センター」等の関係者に対し、広く情報発信が必要であることから、循環器病対策情報センターは、情報共有・意見交換のための会を設置することとなっています。
そこで、去る令和8年6月25日(木)午後2時から、「第1回脳卒中・心臓病の対策にかかる情報共有会」をハイブリッド形式で開催しました。全国の都道府県循環器病対策担当者と脳卒中・心臓病等総合支援センター等の関係者171名が参加し、大津理事長、大坪寛子厚生労働省健康・生活衛生局長のご挨拶の後、がん・疾病対策課 鶴田課長から、「循環器病対策の現状」についてご講演がありました。
ついで、センター長飯原より、「循環器病対策情報センターの体制について」説明をしました。循環器病対策の推進に向けて、都道府県の循環器病対策担当者と脳卒中・心臓病等総合支援センターが協働することが重要であること、また国と循環器病対策情報センターが、情報共有会や全体会議等の運営を通して支援を行うことを説明しました。
さらに、都道府県の循環器病対策の現状と課題についての情報共有として、「コア指標策定に向けた都道府県担当者向け調査」(令和7年度厚生労働科学研究「循環器病対策の進捗評価法の確立を目指した研究」で実施したアンケート調査)の結果を説明しました。計画の策定や評価、実施に関わる構造的・実務的な課題が浮き彫りになっています。以下に結果の概要をまとめました。
都道府県循環器病対策の現状と5大障壁
都道府県の担当者が、対策を実施する上で具体的に課題(複数回答)として挙げているのは以下の5項目です。
- 普及啓発の不足:68.1%(32自治体)が「住民や事業者への普及啓発が十分でない」と回答。
- 事業予算の不足:46.8%(22自治体)が事業予算の不足を指摘。
- エビデンス(科学的根拠)の不足:34.0%(16自治体)が企画・立案の根拠が不十分と回答。
- 地域課題の把握困難:34.0%(16自治体)が地域独自の課題を把握しきれていないと回答。
- 市町村・関係機関との連携不足:それぞれ29.8%(14自治体)が「市町村との情報共有・連携不足」、「関係機関との連携・合意形成の遅れ」を課題と回答。
現場が直面する具体的な課題とコメント
■ 普及啓発の限界と「患者目線の需要」の不透明さ
多くの自治体で予防や初期症状に関する普及啓発キャンペーンやセミナーが実施されていますが、「県民や患者の目線に立った実質的な需要がどこにあるのか」という具体的なニーズが把握できていないため、啓発活動をそれ以上効果的に展開できない状況があります。
■ 急性期医療への偏重と、回復期以降のエビデンス不足
都道府県の循環器病対策の協議会のステークホルダーが、基幹病院などの急性期医療関係者に偏っている傾向があります。このため、救急・急性期医療における議論は非常に活発である一方、「回復期・維持期以降について、どのような事業が実際に効果的なのか」を示す具体的な根拠(エビデンス)が不足しており、具体的な政策の立案や予算確保へ踏み切ることができません。
■ 予算確保の地域格差とマンパワー不足
将来的な予算不足への懸念や慢性的なマンパワー(人員)不足が指摘されています。また、都道府県間での予算確保状況の格差が極めて大きいため、先進的な他県の取り組みを自県の参考にすることが困難な状況です。
■ データの収集・分析体制の限界
- 分析スキルの不足:必要な医療データを庁内で適切に収集・分析する十分な能力(人的資源)が不足しており、地域ごとの格差の原因を正確に分析できていません。
- データの非連続性:医療計画作成支援データブックなどの指標自体に変更が多く、経年的な比較や評価が困難です。また、行政が直接介入することが難しい項目が指標に含まれていることも、選択を難しくしています。
■ 行政内部・地域連携の壁
市町村との緊密な連携や、庁内における他部署との連携体制の強化が追いついておらず、関連機関における循環器病対策そのものへの理解も十分ではありません。多職種連携を推進するための合意形成や関係者間での調整に非常に多くの時間がかかることも課題です。
目標値設定における技術的ボトルネック
- 定性的評価の限界:過去の計画において、目標値が「増加」「減少」「維持」といった定性的な表現に留まっており、施策の「介入効果」を客観的に測定することが困難です。
- 指標の「表記ブレ」:同じ評価対象であっても、自治体によって「施設数」「人口10万対」「医療圏カバー率」など算出・表記単位がバラバラであり、都道府県間でのベンチマークの比較ができません。
まとめ
循環器病対策の新たな幕開けとして、「第1回脳卒中・心臓病の対策にかかる情報共有会」 の開催報告をさせていただきました。本情報共有会の開催により、都道府県の循環器病対策の現状と課題が共有されたものと思います。地域の実情に応じた実効性の高い循環器病対策は、都道府県の行政担当と「脳卒中・心臓病等総合支援センター」が一体となって推進することで初めて達成されます。
次回のニュースレターでは、今回、都道府県担当者向けに実施しました、循環器病対策の推進に向けての「ニーズに関する事前調査」の結果と、私たちからの支援策の案について紹介します。
最後になりましたが、今後とも循環器病対策情報センターの活動にご協力、ご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。
以上
参考資料:第1回脳卒中・心臓病等の対策に係る情報共有会 議事次第
資料1:循環器病対策について
資料2:脳卒中・心臓病等の対策に係る総合推進事業の実施体制等
資料3:「コア指標策定に向けた都道府県担当者向け調査」結果報告
当日の様子

最終更新日:2026年07月06日
