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循環器病対策情報センター ニュースレター Vol.2 (2026.1.14)
循環器病対策情報センターの組織改正にあたって
循環器病対策情報センター長
飯原弘二
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願い申し上げます。循環器病対策情報センター長として、今回の組織改正に際し、ご挨拶をさせていただきます。
2020年10月に閣議決定された循環器病対策推進基本計画の中で、取り組むべき施策として、循環器病に関する診療情報の収集・活用が掲げられました。そこで、国立循環器研究センターは、2021年9月に循環器病対策情報センターを立ち上げ、公衆衛生への活用及び急性期医療への活用を目的として、循環器病の診療情報収集・活用に係る取組みを進めて参りました。発足当初は「がん登録」のような症例登録を念頭に、情報システム管理室、事業管理室の体制で準備を進めてきましたが、現在、国は、医療DXの取り組みを見据えた、新しい循環器病データ基盤(バーチャルデータベース構想)の構築を求めています。新しい循環器病データ基盤では、循環器病に関する大規模なデータベースを新規に構築するのではなく、既存のデータベースや公的データベース(厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベース(注1))を連携し、最大限に活用しつつ、循環器病対策を推進することを図ることとなりました。
循環器病対策情報センターは、令和7年4月から、医療DXとの連携・バーチャルデータベースの構築に向けた具体的な検討を開始し、さらに循環器病対策の進捗評価法の開発について、厚労省と緊密に連携をとりながら、準備を進めて参りました。その成果の一部は、第14回循環器病対策推進協議会(令和7年6月18日)における、循環器病対策の進捗評価におけるコア指標の策定、第1回循環器病の診療情報収集・活用に関する準備検討会における「循環器病登録事業―学会へのニーズ調査」の結果の公表(令和7年12月5日)に結びついています。その成果の取りまとめには、循環器病対策情報センターの公式メンバーのみならず、関連する部署の複数のメンバーが中心的な役割を果たしてくれました。しかし、循環器病対策情報センターが、政策医療としての事業を総合的に実施するには、抜本的な体制強化が必要と考えてきたところです。
このたび、令和8年度事業として、循環器病対策を総合的に推進する事業として、事業内容が大幅に拡充され、それに伴い事業費も増額されました。具体的には、事業として
- 医療DXとの連携・バーチャルデータベースの構築に向けた検討、
- 全国の脳卒中・心臓病等総合支援センター等への支援策の検討と支援の提供、
- 国民に対する循環器病の情報収集と発信、
- 循環器病対策推進基本計画の進捗管理・評価
という、4本柱が掲げられました。
この4つの柱は等しく重要であり、相互の緊密な連携なくしては、日本の循環器病対策を効率的に進めることはできません。私自身これまで、循環器病対策に関する研究・事業に長年粘り強く取り組んで参りましたが、このような総合的な対策を着実に進めていくためには、循環器病対策情報センターのみならず、センター全体、国、関係学会、患者さん等の多様なステークホルダーの皆様のご理解・ご協力が絶対に必要です。センター長として、この4つの柱を有機的に束ねて、国・国民から循環器病対策情報センターにかけられた熱い期待に応えるべく、浅学非才の身ではありますが、全力で取り組んで参る所存でございます。
脳卒中や循環器病という、一分一秒が命を左右する医療の最前線において、今後の10年は、「経験と勘」の時代から「データに基づく最適解」の時代へと劇的な進化を遂げると予想されます。その進化のエンジンとなるのが、日々発生する医療・健康データであり、それが引き起こす変化こそがイノベーションです。リンダ・ヒル氏は、著書「Collective Genius」の中で、イノベーションとは、個人の努力を個人の努力以上のものにする「チームスポーツ」であるとしています。ほんとうに創造的なグループは、絶えず各メンバーの「天才の一片(Slice of Genius)」を引き出し、ひとつにまとめ、「集合天才(Collective Genius)」にすることができると述べています。今回、改組を迎えた循環器病対策情報センターには、従来のコアメンバーに、脳卒中・循環器病の医療・研究に長年携わってきた、多くのエキスパートが加わりました。私は、メンバーの一人ひとりには、循環器病対策を進める上での「天才の一片」が備わっていると思います。小さなチームであろうと、大きなチームであろうと、ここに、リードマネジメントの文化を醸成し、限られた時間と人的資源の中、その1片をすべて引き出して、組み合わせ、一つの集合天才(Collective Genius)に変えるのが、私たち循環器病対策情報センターの使命だと考えています。
私たちは今、歴史の転換点に立っています。人生100時代、国民が生き生きと健やかな脳と心血管を保ち、健康寿命を延伸させるには、現場で日々発生するデータ駆動型の循環器病対策の進捗評価法の確立と実装が喫緊の課題です。令和8年度からの本格的な事業開始に向けて、時に組織の内外で、緊張を生じる場面もあるかと思います。メンバーの皆さんには、理想家であるとともに実際家であって欲しいと思います。重要な議論については、全体的に物事を考え、コミュニケーションをチーム全体として共有すること、解決策を見出すためには、考えるだけでなく、試行錯誤が必要であり、自発的な学習文化の醸成を行うことが重要です。このような取組みを通して、次世代の循環器病対策のリーダーを育てたいと考えています。
最後になりましたが、循環器病対策の推進に向けて、循環器病対策情報センターの活動への関係各位のご理解、ご指導をどうぞ宜しくお願い申し上げます。
注1:厚生労働大臣が保有する医療・介護関係のデータベース
https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001254547.pdf
以上
最終更新日:2026年01月14日