国立循環器病研究センター

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小児の心停止発生における救急隊到着前の実態からひも解くAEDパッド装着と良好な神経学的転帰との関連性


令和8(2026)年8月3日
国立循環器病研究センター
大阪大学

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の情報利用促進部 北村哲久部長、大阪大学医学部医学科 山口蒼生さん、大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 福沢綾特任助教(常勤)らの研究チームは、総務省消防庁全国院外心停止登録データ※1を用いて、2021年から2023年に発生した小児院外心停止3,352例を対象に、救急隊到着前のAED(自動体外式除細動器)パッド装着の実態と、社会復帰との関連を検討しました。
その結果、救急隊到着前のAEDパッド装着は全体の約5%にとどまる一方、学校での発生例や居合わせた人による心肺蘇生が行われた例ではAEDパッド装着が多くみられました。

※本研究成果は、米国医師会オンライン学術雑誌「JAMA Network Open」に、2026年7月24日(現地時間)に掲載されました。

小児病院外での心停止では、AEDの使用頻度が低く、救命率が十分でない

小児の病院外での心停止は成人と比較して発生頻度は低いものの、救命率は依然として十分とはいえず、社会的にも大きな課題です。医療機関外で起こる心停止の救命には、早期の119番通報、居合わせた人による心肺蘇生、AEDによる早期の心電図解析・除細動、救急医療体制への円滑な連携が重要です。
成人の院外心停止では、市民によるAEDの早期使用が予後と関連することがこれまでに報告されてきました。一方で、小児の院外心停止では、AEDの使用頻度が低く、救急隊到着前にAEDパッドが装着される実態や、その予後との関連については、十分に明らかになっていませんでした。

AEDパッド装着は非装着に比べ「脳機能が保たれた良好な回復状態」の割合が高く、その関連性が示された

本研究は、2021年1月1日から2023年12月31日までに日本全国で発生した0~17歳までの小児院外心停止のうち、救急隊到着前または救急隊により蘇生が試みられ、解析に必要な情報がそろっていた3,352例を対象としました。
そのうち、救急隊到着前にAEDパッドが装着されていたのは185例で、全体の5.5%でした。市民によるAEDパッド装着は、学校で発生した心停止や、居合わせた人による心肺蘇生が行われた場合に多くみられました。一方で、家庭内や夜間に発生した心停止、乳児および1〜4歳の幼児では、AEDパッド装着の割合が低いことも明らかになりました。また、AEDパッド装着群では、非装着群と比べて心停止発生後の良好な神経学的転帰※2の割合が高く、多変量解析でも有意な関連が認められました(AEDパッド群装着群41.1%、非装着群1.6%:調整後オッズ比3.11)。さらに、初期心電図波形が電気ショック可能な心室細動であった症例では、この関連がより明確に示されました。

今後の展望と課題

本研究結果により、小児院外心停止における救急隊到着前のAEDパッド装着割合は依然として低く、特に家庭内、夜間、乳児・幼児において課題があることが明らかになりました。一方、学校での発生や居合わせた人による心肺蘇生の実施などの救命につながりやすい環境では、AEDパッド装着割合が高く、AEDの設置、救命講習、緊急時対応体制の整備が重要な役割を果たしていることが示唆されました。
今後は、学校における取り組みの充実に加え、運動施設、スイミングスクールなどの習い事施設、商業施設など、子どもが集まる公共空間においても、AEDの設置場所の周知、迅速に使用できる体制の整備、保護者や施設職員への教育を進めていくことが重要です。

AEDパッド装着が多い場面、少ない場面 小児院外心停止における救急隊到着前のAEDパッド装着の実態

※画像は生成AIを使用して作成。

注釈

※1 総務省消防庁全国院外心停止登録データ
日本全国で発生し、救急隊が対応した院外心停止の情報を、総務省消防庁が一定の基準に基づいて収集している登録データです。発生状況、救急隊到着前の対応、心電図波形、転帰などの情報が含まれ、院外心停止の実態把握や救命体制の改善に活用されています。
※2 心停止発生後の良好な神経学的転帰
心停止後に救命されただけでなく、脳の機能が比較的良好に保たれている状態を指します。本研究では、国際的に用いられるCPC(Cerebral Performance Category:脳機能カテゴリー)という指標で、CPC 1(後遺症がない、または軽度の後遺症はあるが日常生活に支障がない状態)またはCPC 2(一定の後遺症はあるが、介助の有無にかかわらず日常生活が可能な状態)に該当する場合を「良好な神経学的転帰」と定義しました。

発表論文情報

著者 :Aoi Yamaguchi, Aya Fukuzawa, Masaya Atsuta, Yoshimitsu Shimomura, Haruka Shida, Sho Komukai, Kosuke Kiyohara, Tetsuhisa Kitamura
題名 :Automated External Defibrillator Pad Application Before EMS Arrival in Pediatric Out-of-Hospital Cardiac Arrest
掲載誌:JAMA Network Open 2026;9;(7):e2625069.
DOI :doi:10.1001/jamanetworkopen.2026.25069


【報道機関からのお問い合わせ】

国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL: 06-6170-1069 (21120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

最終更新日:2026年08月03日

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