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「血液サラサラの薬」を飲んでいて脳梗塞になった人は脳梗塞後に初めて不整脈が見つかった人より2倍再発しやすい
令和8(2026)年6月19日
心房細動[注1]という不整脈は、高齢社会における「国民病」ともいえる疾患です。心房細動があると心臓の中に血の塊(血栓)ができやすくなり、それが血管内を流れて脳血管に詰まって脳梗塞を引き起こします。脳梗塞は死亡や寝たきりの主な原因の一つであり、高齢化が進む日本では大きな問題となっています。
現在、心房細動による脳梗塞を防ぐために「抗凝固薬」、いわゆる「血液サラサラの薬」が広く使われています。しかし、この薬を飲んでいても脳梗塞を起こしてしまう人が一定数存在します。また、一般的には心房細動が先に見つかり、その後脳梗塞を起こす人が多いのですが、実は脳梗塞を起こした後に初めて心房細動が見つかる人も少なくありません。
京都大学大学院医学研究科の江頭柊平博士課程大学院生、井上浩輔教授、今中雄一教授、国立循環器病研究センターの古賀政利部長、国立精神・神経医療研究センターの戸田達史院長らの研究グループは、心房細動を伴う脳梗塞患者約2万人を追跡し、「いつ心房細動が見つかったか」「血液サラサラの薬を飲んでいたか」によって、脳梗塞の再発リスクが大きく異なることを明らかにしました。
5年間の再発率は、薬を飲んでいたのに脳梗塞になった人で約5人に1人、脳梗塞後に初めて心房細動が見つかった人では約10人に1人と、2倍近い差がありました。この結果は、「心房細動を伴う脳梗塞」を一括りにせず、タイプ別に治療戦略を考える必要性を示しています。
本成果は、2026年6月18日に国際学術誌「Neurology」に掲載されました。
背景
心房細動を伴う脳梗塞の患者は、実は一様ではありません。薬を飲んでいたにもかかわらず脳梗塞を起こした人(AFIDA)[注2]は、薬が効きにくい体質や心臓の病気が進行している可能性があり、予後が悪いのではないかと考えられてきました。一方、脳梗塞後に初めて心房細動が見つかった人(AFDAS)[注3]は、心房細動がまだ初期段階であったり、脳梗塞をきっかけに誘発されたものである可能性があり、比較的予後がよいのではないかと考えられてきました。しかし、これらのグループの長期的な経過を信頼性高く比較した研究はこれまでありませんでした。
1.研究手法・成果
全国約1,600万人をカバーする医療データベースを用いて、心房細動を伴う脳梗塞患者約2万名を以下の3タイプに分類し、長期予後を比較しました。
① AFIDA:心房細動がわかっていて血液サラサラの薬を飲んでいたにもかかわらず、脳梗塞を起こした人
② 未治療AF:心房細動はわかっていたが、血液サラサラの薬を飲んでいない状態で脳梗塞を起こした人
③ AFDAS:脳梗塞後に初めて心房細動が見つかった人
【結果】5年間で脳梗塞を再発した人の割合は、タイプによって大きく異なりました。
- AFIDA:約5人に1人が再発
- 未治療AF:約8人に1人が再発
- AFDAS:約10人に1人が再発
2.波及効果・今後の予定
AFIDAは予後が悪く、AFDASは予後がよいという傾向は専門家の間で指摘されてきましたが、信頼性の高い長期データはありませんでした。本研究は、大規模データベースを用いてこれを初めて明確に裏付けました。
この結果は、AFIDAやAFDASを独立した疾患グループとして扱う根拠となります。将来的には、臨床試験や治療方針の決定もこの分類に基づいて行われることが期待されます。
<用語解説>
[注1] 心房細動:心臓が不規則に震える不整脈。血栓ができやすくなり、脳梗塞の主要な原因となる。
[注2] AFIDA(Atrial Fibrillation complicated by Ischemic stroke Despite prior Anticoagulation):抗凝固療法中に脳梗塞を発症した患者。
[注3] AFDAS(Atrial Fibrillation Detected After Stroke):脳梗塞後に初めて心房細動が見つかった患者。
<研究者のコメント>
今回の分類は、特別な検査を必要とせず、問診だけで決まります。それでも予後がここまで大きく異なるということが広く認識され、AFIDAやAFDASという概念が根付くきっかけになればと思います。(江頭柊平)
<論文タイトルと著者>
タイトル:Long-term Outcomes after Ischemic Stroke across Atrial Fibrillation Phenotypes Defined by Detection Timing and Prior Anticoagulation Status
(心房細動の発見タイミングと抗凝固歴で定義された表現型別にみた脳梗塞後の長期予後)
著者:Shuhei Egashira, Kosuke Inoue, Masatoshi Koga, Tatsushi Toda, Yuichi Imanaka
掲載誌:Neurology
DOI:https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000218198
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国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
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最終更新日:2026年06月19日