国立循環器病研究センター

メニュー

広報活動

脳卒中退院後の「失語」が機能低下や死亡リスクに関連していた

―日韓の二施設約1万人の脳梗塞患者データで検証―

令和8年(2026年)6月11日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の猪原匡史 副院長・田中智貴 脳神経内科客員研究員(現:島根大学医学部内科学講座 内科学第三准教授)、齊藤聡 脳神経内科医長らの研究チームはAsan Medical Center(韓国ソウル、略称:AMC)とともに、脳卒中後失語(PSA)が退院後の機能低下や死亡と関連することを解明し、成果を発表しました。これは脳卒中後遺症の一つである失語は、独立して脳卒中予後に関連することが、日韓の高度専門医療機関に入院の脳梗塞患者9868人を対象とした研究で判明したもので、「失語に対する対策の重要性」が明確になりました。

■脳卒中後の失語が退院後の機能低下や死亡にどの程度影響するか十分なエビデンスが確立していなかった

脳卒中後の生存者が、高齢化や急性期治療の進歩により年々増加しており、脳卒中後遺症への対策が重要な課題として注目されています。一般的に失語は会話、読解、書字などの言語機能を障害し、日常生活や社会参加を大きく妨げます。しかし、脳卒中後の失語が退院後の機能予後や死亡にどの程度影響するかについては、これまで充分に検討した報告が乏しく十分なエビデンスが確立していなかったことから、退院時の失語の症状別評価を用いて、予後に対する失語の影響を明らかにすることが必要だと考えました。

失語ケアは脳卒中後の生存者において重要

本研究では2011年から2023年に国循入院、2017年から2023年にAMC入院の脳梗塞患者で最終対象9868人を解析し、そのうち1651人(16.7%)に退院時失語を認めました。

年齢、併存疾患、脳卒中病型、退院時mRS注1、退院時抗血栓薬、リハビリテーション病院への転院など、様々な要因の予後への影響を排除しても、失語は3か月後のmRS悪化(オッズ比:日本2.52、韓国1.68)と関連し、日本では死亡への影響(オッズ比:3ヵ月3.47、1年2.63)とも関連しました。さらに失語が重症になるほど機能悪化と死亡の割合が高く、全失語注2では両国とも特に高リスクでした。

本研究において失語単独でも機能低下や死亡のリスクに関連していたことが明らかになり、脳卒中後の失語の評価やケアが重要であるとわかりました。

■今後の展望

失語は外見からは症状の判別が困難な後遺症であり、見落とされたり軽視されたりしがち注3ですが、そのケアは脳卒中後の機能予後や死亡に影響を与えることが明らかになりました。現在、失語を持たれる方のコミュニケーションツールやデバイス、失語リハビリプログラムなどの開発がされており、今後さらに関連研究の発展が期待されます。

≪参考≫

★この成果は、2026年6月9日にJournal of the American Heart Association(JAHA) (オンライン版)で発表されました。

注釈

注1 modified Rankin Scale:改訂ランキンスケール
 脳卒中(脳梗塞・脳出血など)後の生活自立度(障害の程度)を7段階で評価する指標

注2 全失語
 言葉を出すことも、理解することも著しく難しくなる重度の失語

注3 「外見からの判別が困難な脳卒中後遺症の制圧に向けた提言」
 厚生労働省研究事業「脳卒中後の失語・嚥下障害・てんかん・認知症の実態調査と脳卒中生存者に対するチーム医療の確立を目指した研究」の成果が、「外見からの判別が困難な脳卒中後遺症の制圧に向けた提言」として2025年4月に公表された。
 https://www.ncvc.go.jp/hospital/topics/topics_35538/

発表論文情報

発表論文情報
著者:Tanaka T, Song K, Saito S, Bhaskar S, Abe S, Ishiyama H, Fukuma K, Yamauchi M, Shiozawa M, Ogata S, Nishimura K, Yokota C, Koga M, Toyoda K, Kim BJ, Ihara M.
題名:Prognostic Implications of PostStroke Aphasia: A Multicenter Cohort Study in Tertiary Hospitals
掲載誌:JAHA(Journal of the American Heart Association)
DOI:https://doi.org/10.1161/JAHA.125.047996

【報道機関からのお問い合わせ】

国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL: 06-6170-1069 (21120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

 

最終更新日:2026年06月11日

設定メニュー