広報活動
難病・肺高血圧症による急性右心不全に吸入一酸化窒素治療の有効性確認
― 国循臨床研究 ―
~ 急性期肺血管抵抗低減と早期右心不全改善に寄与 ~
令和8(2026)年4月1日
国立循環器病研究センター
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の肺循環科 大郷剛 特任部長らの研究グループは、成人の肺高血圧症により心臓が急激に弱り生命の危険がある状態になった(急性重症右心不全)患者に対し、一酸化窒素(iNO)の吸入治療が、肺血管や心臓の負担を速やかに減らし、患者の状態を改善することを確認し、2026年3月21日に日本循環器病学会のLate breaking sessionにおいて発表、Circulation Journalに同日掲載されました。
多くの治療薬には即効性がなく、治療を受ける前に亡くなることがあった
「肺高血圧症」によって肺の血圧が上がることがもとで「急性重症右心不全」という心臓の右室機能が急激に悪化する生命に関わる病態が起こります。近年、肺高血圧症の治療薬が増えていますが、すぐに効果がでる薬剤はなく、効果が出る前や専門の病院に移る前に手遅れになり亡くなるケースがありました。吸入一酸化窒素(iNO)治療は、小児や心臓手術に関連する肺高血圧で使用されていて、極めて迅速に肺血管だけを拡張し、全身の血圧を下げにくく素早い効果がでる治療ですが、成人における肺高血圧症に伴う急性重症右心不全には適応がありませんでした。
成人における肺高血圧症への適応拡大を目指し、研究
肺高血圧症に伴う急性重症右心不全に対して吸入iNOによる治療をおこなう本研究は、肺高血圧症による重症右心不全をおこしている患者30人を対象に国循で2022年11月〜2024年9月の期間に実施しました。iNO投与により肺高血圧症による重症右心不全患者の肺血管抵抗値(PVR注1)は30分で改善し、急速に肺高血圧症を改善させることを確認しました。また、右心不全の指標である血中BNP値注2、心エコーの下大静脈径、他の血行動態も調べたところ、iNOにて改善を認め、右心不全への早期の良好な効果が確認されました。さらに、安全性評価を行い、特に重篤な有害事象がないことも確認しました。
今後の展望と課題
本研究は、成人肺高血圧症患者の急性重症右心不全に対するiNO治療を利用し、有効性と安全性を初めてランダム化比較試験で確認しました。本研究の結果より、肺高血圧症の右心不全患者の急性期において、既存の治療薬の十分な効果が得られるまでの橋渡しや、右心不全の急性増悪時に緊急で使用できる安全で有効な治療として臨床の現場で使用可能となり、治療初期に命を落とす重症患者の減少や、症状が早期に改善し退院することが期待されます。
<参考>
この研究成果は「Circulation Journal」に2026年3月21日に学会発表と同時掲載されました。
注釈
注1)Brain Natriuretic Peptide(脳性ナトリウム利尿ペプチド):心臓(主に心室)に負担がかかった際に分泌されるホルモンの血液中濃度を指します。
注2)Pulmonary Vascular Resistance:心臓から肺へ血液を送る際の「血液の通りにくさ」を数値化したもの。
発表論文情報
著者:Takeshi Ogo, Jin Ueda, Akihiro Tsuji, Ryotaro Asano, Hiroya Hayashi, Ryo Takano, Shinya Fujisaki, Kouko Asakura, Haruko Yamamoto
題名:A Phase 2, Randomized, Clinical Trial of Inhaled Nitric Oxide for Acute Severe Right Heart Failure with Pulmonary Hypertension (PHiNO study)
掲載誌:Circulation Journal
DOI:10.1253/circj.CJ-26-0119
【報道機関からの問い合わせ】
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
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最終更新日:2026年04月01日