国立循環器病研究センター

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脳梗塞、認知症予防の新たな可能性は「善玉コレステロール」にあり

―HDLコレステロール改善薬を使用した臨床試験へ―

 

2026年2月27日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の服部頼都:認知症先制医療開発部特任部長/脳神経内科医長、猪原匡史:脳神経内科部長、フィンランド/Turku大学の飯田秀博教授らは、脳梗塞、認知症にかかる原因の1つである「頸動脈狭窄/閉塞症」に対して、HDLコレステロール(通称:善玉コレステロール)が脳循環代謝の改善に関連していることを明らかにしました。この研究成果により、将来的に、HDLコレステロールを上昇させる改善薬が脳循環代謝を改善させて脳梗塞、認知症の発症予防の一つとなると考えます。

◆善玉コレステロールの好影響をわかっていなかった。

これまで、動物などを用いた基礎研究においてはHDLコレステロールが、動脈を拡張させる効果、毛細血管を増やす効果が見出されていましたが、ヒトの体内でそれらに関連する変化は確認されてきておらず、HDLコレステロールが脳循環代謝に好影響を与えるのかどうかがよくわかっていませんでした。

◆脳梗塞・認知症予防のために、「善玉コレステロール」に着目

本研究は2013年4月~2021年6月にかけて、脳血流を含めた脳循環と脳代謝の状態を1度で測定する検査機器「15OガスPET」(図1)で、HDLコレステロールの値によって、脳循環代謝が4~24か月の間にどのように変化するかを、HDLコレステロールの基準範囲内(≧40mg/dL)と低値(<40mg/dL)の患者に分けて解析しました。

基準範囲内の患者は、脳血流量注3が増加していることがわかり(図2、3)、さらに、脳血流量を改善させるHDLコレステロールの値を詳しく調べたところ、≧44.5 mg/dLを目指すことがよいことも明らかになりました。(図4)

脳血流の低下は、脳梗塞、アルツハイマー病、血管性認知症などを招く要因となります。しかし、脳血流の低下を予防することや脳血流を改善させる手段として確立された薬剤はありません。これまで脳梗塞の予防において、LDLコレステロール(通称:「悪玉コレステロール」にばかり着目される傾向にありましたが、LDLコレステロールを低下させるだけでは、脳梗塞を予防できない報告も出ています。今回の研究で、いままで脇役であった「善玉コレステロール」が、脳血流改善を通じて脳梗塞、認知症予防の主役へ躍り出てくる可能性を示しています。

■今後の展望

HDLコレステロールを上昇させる薬剤を使用した臨床試験を行い、脳血流改善を検証し、「善玉コレステロール」の脳梗塞、認知症予防に対する有効性について実証につなげます。

 

 

≪ 参考資料 ≫

★この成果は、2026年2月5日に米国実験的神経治療学会の国際誌「Neurotherapeutics」(オンライン版)で発表されました。

■注釈

注1) 頸動脈狭窄/閉塞症 : 脳循環代謝低下によって脳梗塞、認知症を発症させる原因の1つです。日本における頸動脈狭窄/閉塞症の患者数は、200万人前後と言われています。
注2) 15OガスPET : 15Oを含んた気体を吸入して、一度の検査で脳血流・血液量・酸素摂取率および酸素消費量の情報が得られます。
注3) 脳血流量 : 「脳の血のめぐり」を指標の1つであり、「脳に、一定時間あたりにどれだけ血液が流れ込んでいるか」を表しています。

■発表論文情報

著者:服部頼都、阿部宗一郎、柿野圭紀、中奥由里子、尾形宗士郎、西村邦宏、飯田秀博、猪原匡史
題名:Revisiting elevated HDL cholesterol, cerebral hemodynamic improvement in asymptomatic carotid artery disease: A longitudinal ¹⁵O-Gas PET study
掲載誌:Neurotherapeutics

■研究実施機関

代表機関名:国立研究開発法人国立循環器病研究センター
代表者名(所属・役職):服部 頼都(認知症先制医療開発部 特任部長・脳神経内科 医長)

■研究参加者プロフィール

服部頼都:
2019年より国立循環器病研究センター脳神経内科医長、2024年より同認知症先制医療開発部特任部長を併任。基礎研究・臨床研究の両面から、脳血管障害、認知症のメカニズムを追求するとともに、橋渡しによる新規脳血管障害・認知症治療法の開発をも手掛けている。国際脳循環代謝学会理事。
猪原匡史:
2019年より国立循環器病研究センター脳神経内科部長、2025年より国立循環器病研究センター副院長。脳卒中と認知症の創薬研究に注力し、ペプチドホルモンによる創薬では実用化に近づいている。米国内科学会上級会員(FACP)、米国心臓協会フェロー(FAHA)として海外での招待講演多数。

【報道機関からの問い合わせ】

国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL: 06-6170-1069 (21120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

最終更新日:2026年02月27日

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