広報活動
国循が脳卒中患者の血圧管理における世界標準の共通見解を明確化
~ 日米欧の最新ガイドライン比較レビューの成果 ~
2026年1月22日
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の脳血管内科 古賀政利部長は、この度、脳卒中(脳梗塞・脳出血)における血圧管理について、日米欧の主要な最新4つのガイドライン(2025年の最新版を含む)を徹底的にレビューし、急性期および慢性期管理における世界的な推奨事項の共通見解を明らかにしました。この研究において「グローバル・ベンチマーク(世界標準の血圧管理指標)」を整理することで、世界中の臨床医が参考にするべき正確な指標をわかりやすく示して、脳卒中患者の症状改善や再発防止に役立つものと考えられます。
脳卒中の血圧管理における課題
高血圧は、脳梗塞および脳出血の双方にとって最大の修正可能なリスク因子です。しかし、その管理目標である「いつから、どこまで血圧を下げるべきか」については、臨床試験の解釈や医療環境の違いにより、各国のガイドラインで推奨内容に微細な差異が存在していました。 特に、「機械的血栓回収療法を行う急性期脳梗塞ではどの程度降圧すべきか」、「急性期脳出血では急激な降圧は安全か」といった点は、臨床現場において判断に迷う場面もありました。
共通見解となる「日米欧ガイドライン」における推奨内容のポイントを確認
本研究では、以下の日欧米最新4ガイドライン(日本高血圧学会JSH2025、米国心臓協会AHA2025、欧州心臓病学会ESC2024、欧州高血圧学会ESH2023)を比較・統合し、臨床医が参照すべき「グローバル・ベンチマーク」についての詳細レビューをおこない、それを整理した結果、以下の重要なポイントにおいて推奨内容が一致していることを確認しました。病期(急性期・慢性期)、病型(脳梗塞・脳出血)や治療により以下の5つに分けて、それぞれ参考にするべき血圧管理目標を整理しました。

1.血栓溶解療法や血栓回収療法を行わない急性期脳梗塞:原則として「降圧を行わない(保存的血圧管理)」ことで一致しています。
2・3. 血栓溶解療法または血栓回収療法を行う急性期脳梗塞:「治療後24時間の収縮期血圧を180mmHg未満に維持し、過度の血圧低下を避ける」ことが全ガイドラインで一致して推奨されています。
4.急性期脳出血:「収縮期血圧140mmHg程度を目指した早期の降圧」、「過度な血圧低下(110-130mmHg未満)は腎機能障害などのリスクがあるため、避ける」との見解で一致しています。
5. 慢性期(再発予防):「脳梗塞や脳出血など脳卒中の種類を問わず、慢性期は収縮期血圧130mmHg未満への厳格な管理」が世界的なベンチマークです。ただし、脳梗塞で両側頚動脈高度狭窄や脳主幹動脈閉塞例では下げすぎに注意し、めまい・ふらつきなどが出現・増悪する場合は、降圧薬減量や変更が必要です。
今後の展望・社会的意義
本研究では、日米欧の最新ガイドラインを横断的に比較することで、脳卒中診療における血圧管理の「世界標準」を明確化しました。急性期脳梗塞における慎重な管理と、脳出血急性期および慢性期脳卒中(脳梗塞・脳出血)における積極的な降圧という対照的な戦略が、エビデンスに基づき整理されたことは、実臨床における医師の意思決定を支援し、脳卒中患者の予後改善および再発予防に大きく寄与するものと考えられます。
<参考>
★この研究成果は、Hypertension Researchオンライン版に令和8年1月9日に掲載されました。
発表論文情報
著者:Koga M.
題名:Blood Pressure Management in Stroke: Comparative Review of the 2025 AHA/ACC/AANP/ACPM/AGS/AMA/ASPC/NMA/PCNA/SGIM, 2024 ESC, 2023 ESH, and 2025 JSH Guidelines
掲載誌:Hypertension Research
DOI:https://doi.org/10.1038/s41440-025-02517-0
謝辞
本研究の対象論文は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
・AMED臨床研究・治験推進研究事業 25lk0221171
【報道機関からの問い合わせ】
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069 (21120) MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
最終更新日:2026年01月22日