広報活動
3Dプリンティング技術を応用した軟質実物大3D心臓モデルが保険収載
― 難易度の高い先天性心疾患の外科手術の事前シミュレーションが可能に ―
2025年6月24日
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
株式会社クロスメディカル
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)と、株式会社クロスメディカル(京都府京都市、代表取締役:竹田正俊、略称:クロスメディカル)が、長年共同研究開発を続けてきた患者さんの画像情報から個別に作る「軟質実物大3D心臓モデル」が、2025年6月1日に保険適用となりました。
小児先天性心疾患の軟質実物大3D心臓モデル
先天性心疾患の外科手術は難易度が高い
生まれつき心臓の形に異常がある先天性心疾患は、出生100人におよそ1人の割合で発症します。小児の心臓は小さい上に、先天性心疾患は心臓の構造が複雑で、病気の種類も多く個人差が大きく、心臓外科手術は大変難しいものとなっています。
私たちは、このような手術が難しい先天性心疾患の子どもたちを少しでも救いたい、救った後も生涯にわたり良い生活を営んでほしいという思いから、心臓CT検査の画像情報を用いて、切開・縫合による手術シミュレーションが可能な「軟質実物大3D心臓モデル」を開発してきました。個別の先天性心疾患患者さんの画像情報から作成する精密な軟質3D心臓モデルが医療機器として承認され、保険収載に至ったのは世界で初めてのことです。
医師の想いが出発点となった研究・開発
「術前に、より正確で安全な戦略が立てられる環境を提供したい」という、国循小児科医師の想いから、2009年に国循とクロスメディカルがプロジェクトを始動し、研究・開発を進めてまいりました。
様々な公的研究費による本格的な産学医連携体制のもと、開発が加速しました。その後、臨床現場から得られた知見とものづくりの技術を融合させて製品化を進め、2017年にはAMED「医工連携事業化推進事業」に採択され、2020年に多施設共同による医師主導治験を実施し、2023年にはその有効性が認められクラスⅡの管理医療機器として承認されました。
そして、2025年6月1日より、厚生労働省が定めた複雑先天性心疾患患者さん(15歳未満)の心臓修復手術に対する、本機器の使用に保険が適応されるという大きな節目を迎えました。
術前計画の精度向上、手術リスク低減等の効果が期待できる
心臓の内部構造が複雑な先天性心疾患の心臓手術で、本機器を使って事前に手術シミュレーションを行うことができます。心臓の外観の確認だけでなく、手術では切開できない部分を切り開いて心臓の内部構造を隈なく観察することができます。さらに、実際に針・糸を使って心臓の穴を閉鎖したり、人工血管を繋ぐなどの模擬手術を実施することができます。術前計画の精度向上、手術リスクの低減をはじめとした様々な効果が期待されます。
上記心臓モデルの内部構造
今後の展望
日本や海外の一人でも多くの先天性心疾患患者さんの心臓外科手術に役立てたいと考えています。同時に技術開発も推進し、より精密で正確な心臓モデルを供給できるよう、今後取り組んでまいります。
謝辞
本研究開発は、日本医療研究開発機構(AMED)の研究費、医療機器開発推進研究事業「超軟質精密心臓レプリカの作成による心臓外科手術トレーニングと個別化医療の確立に向けた研究」(2014-2017)、医工連携事業化推進事業「立体構造が極めて複雑な先天性心疾患患者への3Dモデル診断による術時間削減を実現する、オーダーメイド型超軟質3D精密心臓モデルの開発・事業化」(2017-2019)、並びに多くの公的研究費により実施されました。また開発過程では京都府立医科大学より協力を得ました。この場を借りて深謝いたします。
【報道機関からの問い合わせ】
国立研究開発法人国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069 (31120) MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
最終更新日:2025年07月02日