国立循環器病研究センター

メニュー

広報活動

NTT Researchと国立循環器病研究センターがバイオデジタルツイン研究部の設立に合意

 

医療・ヘルスケアのアプリケーション創出に向けた取り組みを推進


2023年6月9日
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
NTT Research, Inc.

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)の米国における基礎研究部門であるNTT Research, Inc.(以下、NTT R)と国立循環器病研究センター(以下、国循)は、バイオデジタルツイン研究部(NTTR-NCVC Bio Digital Twin Center)を共同で設立することに合意しました。この取り組みは、両組織が2020年に締結した心血管バイオデジタルツイン(CV BioDT)に関する共同研究契約の枠組みを拡張、拡大するもので、NTT Rでは同社の生体情報処理研究所(MEI Lab)が中心となって推進します。本バイオデジタルツイン研究部では、MEI Labと国循が共同開発した数理モデルを、MEI Labが推進する CV BioDTプラットフォーム上に統合することによってアプリケーションの創出をめざしていきます。同センターは上村和紀博士が研究室長として、朔啓太博士が特任部長として、Joe Alexander博士が率いる MEI Labのチームとともに研究開発を実施していきます。上村博士と朔博士は国循の循環動態制御部の室長を務めており、今後も兼務する予定です。また、国循にとって企業パートナーとの共同研究部門開設は初めての試みとなります。

 NTT RのMEI Labは、患者のケアとウェルビーイングに必要となる高度で複雑なデジタルアセットの構築という目標を掲げており、臓器システムレベルのCV BioDTを開発することで、「精密心臓病学(precision cardiology)」の実現をめざしています。本バイオデジタルツイン研究部では、国循における基礎研究で培ってきた循環動態の数理モデルを臨床に応用し、臨床判断や患者のセルフケアを支援するアプリケーションの開発を推進します。

 2020年より、NTT Rと国循は、自律神経系、腎臓、肺の相互連関を考慮した心血管数理モデルの開発とそれらモデルのCV BioDTプラットフォームへの実装に関する共同研究を進めてきました。MEI Labの、Iris Shelly氏は、今年のNTT R取材イベントであるUpgrade 2023にて「CV BioDT パラメータの確率的推定」という演題名で発表を行い、同研究成果を基に汎用的なモデルを調整し個々のデジタルツインを作成する手法について説明するとともに、今後、より多くのデータと数式が必要になることを報告しました。治療シミュレーションを行うために、薬剤の心血管応答を記述する試みも推進しており、2023年に「自然発症糖尿病ラットの開ループ動脈圧反射機能と尿糖排泄におけるエンパグリフロジンの急性効果(PMID: 37046217)」という学術論文を発表しました。また、MEI Labおよび国循は、九州大学循環器内科の名誉教授で、国循研究所循環動態制御部の元部長である砂川賢二博士とも連携し、研究を進めており、「急性心不全治療における薬物療法シミュレーションのための4次元循環動態分析(EMBC 2023, Sydney)」、「制約付きEDPVRパラメータ最適化による特異点回避を伴う逆ESPVR推定(EMBC 2023, Sydney)」および「急性心不全に対する心血管空間マッピングを用いた薬物投与を最適化するためのシステム設計(PMID: 36086004)」などの共著論文が2020年から2023年にかけて発表されました。

 MEI LabのAlexander所長は「国循との関係拡大をうれしく思います」とし、「多くの点で、我々は当初考えていた以上のことを達成することができました。イノベーションとは規定や予測ができるものではありませんが、この新しい取り組みは、心血管バイオデジタルツインを皮切りに我々の精密医療の目標に向けた歩みを加速させ続けるものであると期待しています。」と述べました。

精密心臓病学の実現には、人体機能を制御する手法の開発も重要となります。MEI Labは、国循との取り組みに加え、ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクールの疾患生物物理学グループとの共同研究を開始し、人間の心臓モデルの設計や、筋肉ポンプの基本法則を明らかにし、そこで得た知見をCV BioDTモデルに適用する試みも実施しています。また、ミュンヘン工科大学のニューロエレクトリカルグループと共同で3次元の変形・埋め込み可能な電極の開発も行っています。


NTT Research 五味和洋社長(左)と国立循環器病研究センター 大津欣也理事長(右)

NTT Researchについて

NTT Researchは、基礎研究を担い、人類にポジティブな変化をもたらす技術を促進させるシリコンバレーの新しいスタートアップとして2019年7月に開所しました。現在、 NTT Researchのサニーベールのオフィスには、物理情報学(PHI)研究所、暗号情報理論(CIS)研究所、生体情報処理(MEI)研究所の3つの研究所があり、組織として 1) 量子情報、神経科学、フォトニクス、2) 暗号、情報セキュリティ、3) 医療・健康情報科学 のそれぞれの分野で現実をアップグレードすることをめざしています。

国立循環器病研究センターについて

日本の国立循環器病研究センター(国循)は、病院と研究・医療訓練機関を備えた医療センターです。厚生労働省管轄のもと運営されており、国立高度医療専門センター(ナショナルセンター)の一法人で、全国に6つある専門病院の1つです。国循は循環器疾患を専門とする医療機関であり、国内でも有数の心臓移植実施施設です。病院、研究所、そしてオープンイノベーションセンターの3部門から構成されています。病院はNEWSWEEK誌における「The World’s Best Specialized Hospitals 2023」で第15位(Top Specialized Hospitals - Cardiology (newsweek.com))となりました。

###

NTTおよびNTTロゴは、日本電信電話株式会社またはその関連会社の登録商標もしくは商標です。掲載されているその他すべての商品名は各社の商標です。

【報道機関からの問い合わせ先】

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069(31120)
MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

最終更新日:2023年06月09日

設定メニュー