広報活動
防災ヘリコプター搬送によるDestination Therapy候補重症心不全症例の受け入れ
■背景
従来心臓移植の適応となる患者さんしか治療の対象とならなかった、植込型補助人工心臓(LVAD)ですが、2021年5月より年齢や心臓以外の疾患により心臓移植の適応とならない重症心不全患者さんにも装着することが可能となり、生命予後や生活の質の改善が期待できるようになりました(この移植を前提としないLVAD治療を”Destination Therapy (DT)”と言います)。当院でも2022年11月現在で我が国最多である12人の患者さんにDTを実施しており、良好な治療成績を収めています。
しかしながら、このDTを実施できる施設は日本全体でまだ7施設にとどまっており、あらゆる地域の患者さんが容易に受けることができるわけではありません。
■手法と成果
今回、我々は東海地方に入院中であった60代後半男性の重症心不全患者さんを防災ヘリコプターによる搬送で受け入れました。本患者さんは点滴での強心薬投与を必要とする重症心不全でありますが、年齢の規定により心臓移植の適応にはなりません。治療の選択肢としてDTでのLVAD治療の説明を受け、本人および御家族はこれを希望されました。東海地方にDT実施施設はないため、患者さんは当院での治療を希望され、遠方であることから防災ヘリコプターによる搬送で転院を受け入れました。精密検査後にDT治療としてのLVAD装着手術を実施し、現在術後経過良好です。
一般的に、心臓の機能が著しく低下した状態の不安定な患者さんでは、救急車による長時間の転院搬送により心不全が増悪するリスクは高くなります。今回防災ヘリコプターによる搬送を行ったことにより、搬送時間を1時間以内と大幅に短縮することができ、患者さんの身体的負担を最小限にすることで安全に転院受け入れを行うことができました。
■今後の展望と課題
今回、広域での医療連携が患者さんの救命の可能性に重要な役割を果たしました。末期重症心不全患者さんへのLVAD治療は非常に有効な治療ですが、それを実施できる施設は限られています。
今後DT実施施設は拡大される見込みですが、今回の広域医療連携の経験をもとに、多くの施設と連携しながら治療を実施し定着させていくことも今後の我々の課題と考えています。
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最終更新日:2022年12月16日