国立循環器病研究センター

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SMI (Superb-microvascular imaging)を用いたより鮮明な可動性構造物の検出法の発見:Fire Ball Sign !

 

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の臨床検査部 出村豊技師、心臓血管内科 天野 雅史医師、泉 知里医師らの研究チームは、Canon Medical Systemsの心エコー装置に搭載されたアプリケーションであるSMI(superb microvascular-iamging)を使用することで血管・心腔内の可動性プラークが容易に検出できることを発見し、臨床現場においてSMIを使用することの重要性を報告しました。本研究結果は、現地時間2022年10月14日付でEuropean Heart Journal Case report誌に掲載されました。

■概要

 SMI(superb microvascular-iamging)は、コントラスト剤を使用することなく低流速血流を鮮明に描出することができる新しい血流イメージング技術であり、これまで血管・甲状腺・乳腺や腫瘍における血流評価に対して使用されてきました。

 低流速血流域を従来のカラードプラ・パワードプラで観察すると周囲組織の動きもアーチファクトとして描出されてしまい(モーションアーチファクト)、血流と周囲組織のコントラストをつけることが難しい状況でした。SMIは、オリジナルアルゴリズムに基づき、モーションアーチファクトのみを除去し、低流速血流のみを描出できる新しい血流イメージング技術です。最近では、心腔内でもSMIを用いて血流が評価できるようになり、心臓病におけるSMIの臨床応用が期待されています。

 通常のモーションアーチファクトは独自のアルゴリズムで除去できますが、血管内・心腔内の可動性プラークは周囲組織と比較して速く動くために、このモーションアーチファクトが除去されず、高輝度に描出されることが研究成果として分かりました。この除去されないモーションアーチファクトを逆に利用することで、通常のBモード画像では描出しにくい可動性構造物(プラークなど)を容易に検出できると考えました。

■報告内容

 SMIを用いて、心臓・血管内の可動性構造物を評価した3例を報告しました。

1. 偶発的に発見された左室内乳頭筋線維腫(術後病理で確定):SMIを使用すると腫瘤全体が高輝度に強調され、「Fire ball sign」と名付けた。心腔内の構造物にもSMIが応用できることが証明された。

2. 腹部大動脈可動性プラーク:通常モードのエコー検査では、大動脈にプラークを認めるも、可動性プラークは検出できなかった。SMIで観察すると、高輝度な3mm大の腫瘤エコーが観察でき、可動性プラークの可能性ありと診断した。右足趾の塞栓症に対する原因検索目的で検査依頼があった症例であり、SMIで描出できた可動性プラークによるコレステロール塞栓症と診断した。

3. 頸部血管可動性プラーク:通常モードの血管エコーでは、血管の狭窄と拡大は認めず、び慢性の石灰化プラークを認めた。SMIで観察すると石灰化プラークの対側に高輝度で可動する構造物を検出できた。

■今後の展望

 今回、SMIを用いて、心臓・血管内の可動性構造物を評価した症例を報告しました。今後、SMIを、血管内の小さな可動性プラークや心室内の可動性血栓、小さな腫瘍の検出等に役立てることができる可能性があり、さらなる症例の蓄積を行っていきたいと考えています。

■発表論文情報

著者:Yutaka Demura, Masashi Amano, Yoshiki Yanagi, Ayaka Mizumoto, Yoshito Jo, Chisato Izumi
題名:Case series of mobile structures detected vividly by using superb microvascular imaging
掲載誌: European Heart Journal Case Report

 

報道関係の方からのお問い合わせ

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室
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最終更新日:2022年11月09日

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