国立循環器病研究センター

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心不全パンデミックにAIで立ち向かう支援システムを 産官学連携で開発するプロジェクトが AMEDの医工連携・人工知能実装研究事業に採択

 

国立循環器病研究センター、徳島大学、名古屋大学医学部附属病院、九州大学病院、株式会社ハート・オーガナイゼーションは、「日本全地域で心不全診療連携を最適化するAI実装DtoD(※1)システムの開発と実用化」が、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の令和4年度「医工連携・人工知能実装研究事業」に採択されたことをご報告いたします。本研究は、国立循環器病研究センターをリーダーとし、徳島大学、名古屋大学医学部附属病院、九州大学病院、株式会社ハート・オーガナイゼーションの共同研究として進めてまいります。
※1 Doctor to Doctor


本研究の背景

近年、日本は生活習慣の欧米化による虚血性心疾患や高齢化による高血圧、弁膜症の増加などにより、心不全患者が激増する「心不全パンデミック」のさなかにあります(※2)。医師不足や専門医の偏在が叫ばれる中コロナパンデミックが発生し一部地域の医療崩壊を引き起こしたことは、医師のタスクシェア・シフトの重要性を再認識するきっかけとなりました。また、2024年には、「時間外労働の上限規制」を中心とした医師の働き方改革の法案が適用され、医師の勤務環境改善に向けた取り組みがますます進められます。現在の循環器専門施設3000か所と循環器専門医1.5万人で全ての心不全患者を診るのは極めて難しい状況で、かかりつけ医とのタスクシェア・シフトが必須です。しかし、心不全診療は新薬や最新の治療方法を常にアップデートし続けなければならず、治療法が複雑であるため、最適な治療の実施率は低いことがわかっています。
※2 出典:日本循環器学会 循環器疾患診療実態調査報告書(2019年度実施・公表)JROAD P.7
https://www.j-circ.or.jp/jittai_chosa/media/jittai_chosa2018web.pdf

解決すべき社会課題

●専門医にかかる負荷:増加を続ける心不全患者は治療戦略判断において専門性が高く、専門医に診療負荷が集中する傾向にあります。外来、入院ともに軽症例も多く診療していることが、結果として業務総量の激増につながっています。
●非専門医にかかる負荷:
<判断負荷>心不全の病態を正確に把握することは膨大な知識・経験を必要とし、日常診療の中で習得するには大きな負荷となります。
<心理的負荷>非専門医が専門医師に病態を認識の齟齬なく正確に伝え、患者治療の連携を円滑に行う作業は、特に日常の人的交流がない場合に大きな障壁となっています。
<診療負荷>上記と同様に、心不全診療には膨大な知識・経験を要するだけでなく、急性期には時々刻々と変化する病態であることは多くのスタッフの業務負荷・心理的負荷にもつながります。
●非専門医療機関にかかる負荷:特に高齢者が多い過疎地域では心不全診療は必須であり、患者数も非常に多いです。都市部からの循環器専門医の招聘は、多額の交通費と雇用関連費を要します。また、医師の確保にも多大な労力が支払われます。

心不全診療支援AI実装システムで解決できること

本サービスは、医師から医師への遠隔コンサルテーションシステムCaseline(ケースライン)を基礎としたITプラットフォームであり、AIによる心不全診断・心不全診療支援の機能を搭載することで、心不全診療連携円滑化を可能にします。また、医師をサポートするAI医師による診療支援システムの開発にも取り組みます。心不全診療連携における専門医、非専門医および非専門医療機関のあらゆる業務負荷を減らし、心不全パンデミックにおいても、最適な心不全診療を日本の全ての地域で享受できる社会をつくることを目指します。

謝辞

本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)医工連携・人工知能実装研究事業「日本全地域で心不全診療連携を最適化するAI実装DtoDシステムの開発と実用化」の支援を受けて遂行されます。
本研究の公募の詳細(AMED Webサイト):https://www.amed.go.jp/koubo/14/02/1402C_00012.html

チーム体制

国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 朔 啓太
循環器医療機器開発を推進。心不全診療支援ツールにおける最先端のその先を目指す。

国立大学法人 徳島大学 楠瀬 賢也
循環器診断AI開発のトップランナー。AIアルゴリズムで心不全パンデミックに立ち向かう。

国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院 奥村 貴裕
日本を代表する心不全診療エキスパート。豊富な臨床研究経験で本プロジェクトを支える。

国立大学法人 九州大学病院 戸高 浩司
レギュラトリーサイエンスのエキスパート。九州大学病院ARO次世代医療センター長。

株式会社 ハート・オーガナイゼーション 奥井 伸輔
当社の医師向けプラットフォームe-casebook (イーケースブック)に形成された循環器専門医コミュニティや遠隔医療支援システムCaselineの伝送技術を活かし、社会実装・普及を目指す。

【国立研究開発法人 国立循環器病研究センター概要】
国立循環器病研究センター(通称:国循)は、病院・研究所・オープンイノベーションセンターの3組織から成り立っており、国の医療政策と一体となって国民の健康を守るために1977年に設立された循環器病を対象とする国立高度専門医療研究センターです。
「最先端の、その先へ。」を目指して、日々循環器病に関する診断・治療、調査・研究および専門医療従事者の研修・育成を担っています。
研究所では、4部門18部が部門の垣根を超えて循環器疾患発症の原因を探るとともに診断・治療に貢献できる研究を行っています。各部では、高度医療実現のための研究を行っており、研究対象も遺伝子・分子から臓器に至るまで多種多様です。世界最先端の人材と機器を駆使し、循環器病の解明と診断・治療・予防法の開発に向け、病院と連携しながら世界でも類をみない研究を行っています。

【国立大学法人 徳島大学概要】
徳島大学は、6学部、6大学院研究科のほか、大学病院や世界最先端の医科学系の研究を行っている先端酵素学研究所など、多数の研究所・センター等を有する総合大学です。自主と自律の精神に基づき、真理の探究と知の創造に努め、卓越した学術及び文化を継承し向上させ、世界に開かれた大学として、豊かで健全な未来社会の実現に貢献することを理念として、高度な研究活動と様々な地域貢献を行っています。医・歯・薬・理工・生物資源産業の各学部で教育研究を行う理系教員と、総合科学部で教育研究を行う文系教員を揃えた総合大学としての強みを生かし、進取の気風を身につけた人材の育成を教育目標に、「知を創り、地域に生き、世界にはばたく」大学として、世界トップレベルの大学になることをめざしています。

【国立大学法人 東海国立大学機構 名古屋大学医学部附属病院概要】
名古屋大学医学部附属病院は、1871年に名古屋藩評定所跡に設置された公立の仮病院を起源とし、2022年9月現在35の診療科と30の中央診療部門、教育・研究支援部門、運営支援部門を配する国立大学病院です。世界水準の医療の質や患者安全を追求しており、2019年2月に国立大学病院初の国際医療施設評価認証機関(JCI)の認証取得、2022年3月に認証更新しました。また、臨床研究中核病院として研究活動や医療者教育にも注力し、情報通信技術を用いたスマートホスピタル構想の推進や、新システム導入による地域医療への貢献など「診療・教育・研究を通じて社会に貢献します」という理念のもと、未来へ前進を続けています。

【国立大学法人 九州大学病院概要】
九州大学病院は、黒田藩賛生館を源流に150年以上の歴史を有し、特定機能病院として高度医療のみならず、ARO次世代医療センターを中心として日本発の画期的な医薬品や医療技術などを開発しています。西日本における臨床研究中核病院として国際水準の研究や医師主導治験の実施・支援の中心的な役割を担っています。併せて、本学が目指す「総合知による社会変革の実現」を医療分野で展開するため、遺伝子研究や細胞実験の成果等と大規模医療データを有機的に結合させ、基礎研究の臨床応用迅速化、効率化を柱とする健康医療DXを推進しています。

【株式会社ハート・オーガナイゼーション会社概要】
「医師をつなぎ 医療格差をなくす」をミッションに、女性起業家・菅原が、製薬会社時代に感じた医療業界の課題を解決すべく創業し、医師が本当に必要とする、知識・経験・技術を共有するための症例ベースのプラットフォームを作りました。現在では、国内外の専門医ユーザー約5万人(うち世界126カ国海外専門医ユーザー5千人)の循環器内科・整形外科・脳神経外科・消化器科を中心とした方々に利用されており、大変ご好評いただいております。このプラットフォームを通じて、世界中の医師がいつでも、どこでも、医師が必要だと思う情報にアクセスできる世界をつくり、治療の選択肢を増やすことで「医療の格差のない社会」の実現を目指します。

報道関係の方からのお問い合わせ

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069(31120)
MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
個別取材の手続きは、こちらからご確認いただけます。

最終更新日:2022年10月04日

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