国立循環器病研究センター

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都市部に居住する閉経前後の女性における血清尿酸値と糖尿病罹患リスクとの関連

 

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の健診部の小久保喜弘特任部長らは、都市部地域住民を対象とした吹田研究(注1)を用い、閉経前後の女性における血清尿酸値と糖尿病罹患リスクとの関連について検討しました。本研究成果は、北米閉経学会のオフィシャルジャーナル「Menopause」に2022年8月24日に公開されました(注2)。

■背景

 生活習慣と社会環境の変化に伴い、糖尿病患者数は増加しています。令和元年国民健康・栄養調査報告によると、「糖尿病が強く疑われる人」の割合は、男性19.7%、女性10.8%でした(注3)。女性の割合は男性より低く見えますが、更年期以降に女性ホルモンが減少して、インスリンの働きも弱くなるため、糖尿病の発症リスクが急速に増えます。糖尿病を放置すると網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こして、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の発症リスクを高めます。
 更年期以降の女性のもう一つ著しい変化は、女性ホルモンの減少により尿酸値が増えやすいことです。女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされているため、閉経前の女性の尿酸値は低いですが、閉経後はホルモンの低下に伴い、高尿酸血症のリスクが増大します。 
 高尿酸血症は糖尿病の危険因子でありますが、閉経前後の女性における検討は乏しいです。そこで本研究で、女性における血清尿酸値と糖尿病発症リスクとの関連を閉経前後別に検討することにより健診や日常外来で糖尿病罹患の予防の一助になると考えました。

■研究手法と成果

 吹田研究の参加者である30~79歳の都市部一般住民のうち、ベースライン調査時に循環器疾患と糖尿病の既往者を除外した女性3,304人(閉経前1,252人、閉経後2,052人)を対象として、糖尿病の新規発症を14年間追跡して、新規の219人の糖尿病罹患を観察しました。閉経前の女性において、血清尿酸値の低値群と比べて、血清尿酸値高値群の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は1.56 (0.77-3.16)でした。一方、閉経後の女性において、血清尿酸値高値群の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は2.00 (1.19-3.34)となっており、閉経後の女性では、血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクとの関連を認めました。

■考察

 高尿酸血症は、生活習慣と深くかかわる病症です。尿酸値検査は、特定健診・特定保健指導で重視される検査項目です。高尿酸血症は、糖尿病、循環器疾患などの生活習慣病の危険因子として報告されていますが(注4)、本研究は、これまで関係性がよくわからなかった女性の閉経前後別に血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクとの関連を明らかにしました。閉経後の女性では、血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクとの関連を認めました。閉経前の女性でも、同様な傾向性を認めました。その結果は、今後の特定健診・特定保健指導における糖尿病予防の参考となるエビデンスとなると考えます。

■今後の展望と課題

 本研究は、健診や日常外来の現場で、更年期以降の女性において血清尿酸値レベル別での、糖尿病予防を行うことに意義がある可能性が示されました。更年期以降の女性は、ホルモンの保護作用を失って、生活習慣の乱れによる尿酸値の上昇に注意する必要があると考えられます。更年期以前でも、血清尿酸値の高値と糖尿病との関連性が否定できないことから、同様に注意する必要があると考えられます。 

図.閉経の有無別による血清尿酸値レベル別の糖尿病罹患リスク

■謝辞

本研究は、下記機関より資金的支援を受け実施されました。
・国立研究開発法人国立循環器病研究センター(循環器病委託研究費「20-4-9」)
・研究成果展開事業 共創の場形成支援プログラム: 世界モデルとなる自律成長型人材・技術を育む総合健康産業都市拠点(JPMJPF2018; 分担研究者 小久保喜弘)
・厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「生涯にわたる循環器疾患の個人リスクおよび集団リスクの評価ツールの開発及び臨床応用のための研究(20FA1002;分担研究者 小久保喜弘)
・明治安田生命・明治安田総合研究所

<注釈>
(注1)吹田研究 
国循が1989年より実施しているコホート研究(研究対象者の健康状態を長期間追跡し、病気になる要因等を解析する研究手法)で、対象者は大阪府吹田市民を性年代階層別に無作為に抽出しています。全国民の約90%は都市部に在住していることを考えると、その研究結果は国民全体の現状をおおよそ反映しているものと考えられています。
(注2)Li J, Arafa A, Sheerah HA, Teramoto M, Nakao YM, Honda-Kohmo K, Kashima R, Sakai Y, Watanabe E, Dohi T, Kokubo Y. Serum uric acid levels and the risk of diabetes mellitus in premenopausal and postmenopausal women: the Suita study. Menopause. 2022, 29 (10), DOI: 10.1097/GME.0000000000002035
(注3) 令和元年国民健康・栄養調査報告(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html
(注4)Dehghan A, et al. High serum uric acid as a novel risk factor for type 2 diabetes. Diabetes Care 2008;31:361-362.

 

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最終更新日:2022年08月24日

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