国立循環器病研究センター

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国循ブレインハートチーム 令和3年度活動実績

 

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の脳血管内科・脳神経内科と心臓血管内科を中心とするブレインハートチームの、令和3年度活動実績を報告します。

■ブレインハートチーム:世界レベルでの取り組み

 国民病の双璧とも云える脳卒中と心臓血管疾患は、危険因子や発症機序に共通項が多く、両領域の専門家が共同して診療にあたることが理想的です。国循は開設以来45年間にわたってこの共同作業を続けてきた、ブレイン&ハートのチーム診療の老舗です。
 脳卒中医家と心臓医家が連携すべき代表的疾患は心原性脳塞栓症(心房細動などの不整脈、心臓病を塞栓源とする脳梗塞)ですが、従来は本疾患の再発予防法は薬物治療としての抗凝固療法に尽きました。近年の構造的心疾患(弁膜症や先天性心疾患など)に対するカテーテル治療の進歩に伴い、近年ではこのようなカテーテル治療を心原性脳塞栓症の再発予防に積極的に用いるようになってきました。同時にこれら治療を実施する心臓医家と、脳梗塞の機序を正確に診断し発症後の患者診療を担当する脳卒中医家との診療連携が重視され、ブレインハートチームという名称が定着してきました。
 ブレインハートチーム診療は、海外でも注目されています。次に述べる経皮的卵円孔開存閉鎖術で、国循は国内で初、世界全体でも約10施設しか得ていない、本治療のCoE(Center of Excellence:人材やハード面を集約した横断組織)に認定されています。また世界脳卒中機構(World Stroke Organization: WSO)はこのチーム診療を啓発するWSO-Brain & hEart globAl iniTiative(WSO-BEAT)事業を立ち上げ、国循はここでも世界の8モデル施設の一つに選ばれて、国内外への啓発活動に尽力しています。

■経皮的卵円孔開存閉鎖術の実績

 脳梗塞患者に行う構造的心疾患へのカテーテル治療(経皮的治療)の代表格は、卵円孔開存症閉鎖術と左心耳閉鎖術です。令和2年度活動実績を報告した際の説明を、再掲いたします。
 卵円孔は、心臓の右心房と左心房の壁(心房中隔)に空いている穴のことで、胎児期には開いており、生後すぐに自然閉鎖しますが、2~3割では十分に閉鎖せず小さな裂孔が残存します。下肢などの静脈にできた血栓が、この小さな穴を通して右心房から左心房、さらに脳へと流れて脳動脈を詰め、脳梗塞の原因となります。このような脳梗塞を奇異性脳塞栓症と呼び、特殊な心原性脳塞栓症と考えられます(図1)。国循では、奇異性脳塞栓症の診断基準を作成したり、卵円孔開存症の超音波診断法を開発したり、長年にわたって本疾患の診療技術開発に関わってきました。経皮的卵円孔開存閉鎖術はこの穴を閉じて脳梗塞の再発を予防する治療です。
 カテーテル治療による卵円孔開存閉鎖術は2019年に国内で薬事承認を得て、実施施設基準を満たし公的な管理委員会の認定を受けた施設のみで治療可能になりました。国循では2020年より本治療を導入し、肺循環科、心不全科、小児循環器科を中心に治療を行い、前回2021年5月のご報告で28件の通算実績をご紹介しましたが、2021年度にも28件の閉鎖術を行いました。具体的な内訳は卵円孔開存閉鎖デバイスによるカテーテル閉鎖術 19件、心房中隔欠損閉鎖デバイスによるカテーテル閉鎖術 7件、外科的卵円孔開存閉鎖術1件、肺動静脈瘻に対するカテーテル治療 1件でした。
 近年では高リスクの卵円孔開存を有し、他に明らかな脳梗塞の原因を認めない比較的若い(原則として60歳未満)脳梗塞を「卵円孔開存症関連脳梗塞」とみなして、積極的に卵円孔開存閉鎖術を行うことが推奨されています。60歳以上でも、この治療がふさわしい場合が少なくなく、患者さん個々の再発リスクを勘案して慎重に治療を行っています。しっかりしたブレインハートチームを作り上げた施設での治療が、重視されています。
(図1)奇異性脳塞栓症と経皮的卵円孔開存閉鎖術: 国循HP(肺循環科)より改変引用

■左心耳閉鎖術の実績

 心房細動は心原性脳塞栓症の最大の原因となる不整脈で、左心房の中の袋小路のような左心耳と呼ばれる部位に血栓を作り、その血栓が脳に流れて脳動脈を詰めることで、比較的重症の脳梗塞を起こします(図2)。この左心耳に、カテーテル治療でパラシュートのような器具を留置して、左心耳全体を塞ぐ治療を経皮的左心耳閉鎖術と呼びます。国循は、この治療法の開発治験や薬事承認にも専門的にかかわりました。心房細動を伴う脳梗塞患者には通常抗凝固薬で再発予防を行いますが、出血リスクが高くて十分な抗凝固療法を行えない患者や、抗凝固薬の適正使用下でも心原性脳塞栓症と考えられる脳梗塞を再発した患者に、非常に適した治療です。本治療も実施施設基準を満たし認定を受けた施設のみで治療可能で、国循では不整脈科を中心に治療を行い、2021年度は合計6件の治療を行っています。
 国循心臓外科では、手術による左心耳閉鎖治療も行っています。メイズ手術という心房細動を停止させて正常洞調律に戻す治療を同時に行うこともでき、患者の状況に応じてカテーテル治療と手術とを選び分けることが出来ます。
 左心耳閉鎖術は、高齢の患者さんにも広く適応があります。脳梗塞再発予防には、抗凝固薬や抗血小板薬を重ねて使うことも多く、脳出血の既往がある方や転びやすくて外傷性頭蓋内出血を起こす危険が高い方などは、この治療の非常に良い適応です。
(図2) 左心耳血栓と経皮的左心耳閉鎖術: 国循HP(不整脈科)等より改変引用

■失神外来、植込み型心電図記録計での心房細動検出、広がるブレインハートチーム診療

 ブレインハートチームの連携は、再発予防治療のみでなく、診断にも応用されます。植込み型心電図記録計の潜因性脳梗塞患者への適応拡大(2016年)において、国循メンバーも大いに貢献しました。現在では原因不明の失神患者への植込み型心電図記録計挿入と長期管理を心臓血管内科(不整脈科)が、潜因性脳梗塞患者への挿入と長期管理を脳血管内科・脳神経内科が中心に行い、前者は2021年度に33例、後者は30例に植え込みを行いました。失神(気絶)・意識消失患者へのブレインハートチーム共同での外来診療(失神外来)もユニークな取り組みで、他施設からもこの外来への質問を多く受けます(図3)。
 長年にわたって培ってきた脳領域と心臓血管領域の診療連携を基に、今後もより良い循環器診療を進めてゆきます。
(図3) 国循失神外来 詳しくは国循HP<https://www.ncvc.go.jp/hospital/section/syncope/>をご覧ください


報道関係の方からのお問い合わせ

国立循環器病研究センター企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1070(31120)
MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp
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最終更新日:2022年07月21日

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