国立循環器病研究センター

メニュー

広報活動

組織表面温度制御による「DiamondTemp™アブレーションシステム」による心房細動アブレーションを国内初実施

 

■ポイント
・2022年5月、国立循環器病研究センター(理事長:大津欣也)不整脈科の草野研吾副院長、宮本康二医長、宮崎裕一郎医師らのチームは、日本メドトロニック社の組織表面温度制御による「DiamondTemp™アブレーションシステム」による心房細動アブレーションを国内で初めて実地しました。
・「DiamondTemp™アブレーションシステム」では、カテーテルを用いた心房細動治療において、カテーテルに接する心筋組織表面の温度をリアルタイムに測定することができます。さらにその情報に基づくアブレーション出力の自動調整が可能になっており、均質な治療効果を得ることにより、心房細動アブレーションの有効性・安全性の向上が期待されます。

心房細動は、肺静脈などから生じる異常な電気信号が心房に伝わることにより心臓の動きが不規則になり、動機、めまい、息切れなどの症状を生じる不整脈です。また、心臓の動きが不規則になることにより、心房内に血液の塊(血栓)を生じることがあり、脳梗塞の原因になることもあります。
心房細動の治療の1つとして、高周波カテーテルアブレーション治療があります。アブレーション治療では、まずカテーテルと呼ばれる細い管を脚の付け根の血管(大腿静脈)から心臓に持っていきます。高周波アブレーションでは、高周波電流を用いて肺静脈と左心房間の心筋組織を焼灼することにより、異常な電気信号が肺静脈から左心房に伝わらないようにします。この治療により、心房細動による症状が軽減されます。

心筋組織に対する焼灼効果は心筋組織の温度に依存するため、治療効果を推察するためには、心筋組織の温度をリアルタイムに測定することが望まれていましたが、従来のアブレーションカテーテルでは、技術的な問題で心筋組織の温度を正確に測定することができませんでした。「DiamondTemp™アブレーションシステム」(図)は、カテーテル先端に、化学的に合成された ダイヤモンド(以下、CVDダイヤモンド)が使用されています。このCVDダイヤモンドの熱拡散率は、従来の高周波アブレーションカテーテルで使用されている素材(プラチナ/イリジウム合金)と比較して200〜400倍高いため、カテーテル先端に熱がこもりにくくなります。その結果、組織表面温度のリアルタイムでの測定が可能になっています。

また、高周波アブレーションでは、焼灼するための出力(Watt)を設定する必要がありますが、「DiamondTemp™アブレーションシステム」では、その組織表面温度によって出力が自動調整されるため、均質な治療効果を得ることが期待されます。また、過度の出力で焼灼することを防ぐことにより、合併症のリスクを減らすことも期待されています。なお、高周波アブレーションでは、血栓形成予防のためにカテーテル先端から生理食塩水が流れていますが、CVDダイヤモンドでは効率よく組織表面を冷却できるため、 アブレーション中に要する生理食塩水量も低減できます。

このように、「DiamondTemp™アブレーションシステム」において組織表面温度を測りながらアブレーションを行うことにより、焼灼効果の直接的な推測が可能となり、心房細動アブレーションの安全性および有効性の向上が期待されます。また、術中に要する生理食塩水量が低減されるため、心不全や透析を要する腎不全患者さん、ご高齢の患者さんに対して有用な治療選択になり得ると考えられます。

最終更新日:2022年06月24日

設定メニュー