国立循環器病研究センター

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広報活動

新型コロナウイルス(CoVID-19)関連の劇症型心筋炎に対する 抗ウイルス薬+両心室補助人工心臓Hybrid治療の経験

背景
心筋炎は新型コロナウイルス感染やワクチン接種後の合併症として、しばしば報告されていますが“劇症型新型コロナウイルス関連心筋炎”の報告は少なく、その治療法は劇症型心筋炎とは、急性心筋炎の中でも特に急激に悪化し、重度の心臓機能障害と多臓器不全を合併する致死率の高い病態であり、人工心臓を含む機械的補助循環治療なしに救命することは困難です。

■手法と成果
今回我々はECMOネット(注1)を通じ、北陸にて新型コロナウイルス感染発症2日目に合併した劇症型心筋炎の若年女性の紹介を受け、体外式膜型人工肺(ECMO)装着状態の同患者を受け入れました。当院搬送時、心臓はほとんど動いておらず、同日両心室補助人工心臓装着術を実施しました。人工心臓により血液循環を維持しつつ、新型コロナウイルス治療薬とステロイドを投与することで心機能の回復を認め、治療開始後8日目に人工心臓より離脱しました。その後、患者は病棟にてリハビリを実施しました。
新型コロナウイルスに対する治療と劇症型心筋炎に対する治療を両立させ、大きな合併症なく心機能回復をもたらしたことは大きな成果です。稀ではあるものの非常に重篤な“劇症型新型コロナウイルス関連心筋炎”の治療法を示し、この経験を世界に広く共有することは新型コロナウイルス感染に苦しむ多くの人々の希望となりうると考えます。

■今後の展望と課題
今回は、広域医療連携も患者救命の鍵でした。ECMOは重症新型コロナウイルス感染患者救命には必須の治療法であり、いまや様々な地域、施設で受けることができる一方、心臓の機能回復がより期待できる人工心臓治療を実施できる施設は限られています。今回の広域医療連携の経験をさらに拡大し、一般的な治療として定着させていくことも今後の我々の課題と考えています。

(注1)重症患者の肺や心臓の代わりをするECMOの知識と技術と経験を持った医師たちによるNPO法人です。

最終更新日:2022年06月24日

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