国立循環器病研究センター

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RNF213 p.R4810K多型は頭蓋外頚動脈の細小化と関連する

国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)の脳神経内科 山口枝里子医師、吉本武史医師、猪原匡史部長らの研究チームは、日本人の脳梗塞ともやもや病の感受性遺伝子でありますRNF213遺伝子p.R4810K多型を持つ人(保有群)では、頭蓋外頚部血管が細くなることを明らかにしました。本研究結果は、現地時間2022年3月24日付でStoke: Vascular and Interventional Neurologyに掲載されました。

■背景
もやもや病は、脳の中に栄養を運ぶ内頚動脈の終末部が細くなり、異常な血管網が形成される疾患であり、脳梗塞や脳出血として発症することが知られています。もやもや病は東アジア人に多く、その疾患感受性遺伝子であるRNF213遺伝子のp.R4810K多型は日本人の2–3%が有しており、頭蓋内動脈狭窄とそれに起因する脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞)との関連も報告されております。これはRNF213 p.R4810K多型が頭蓋内の脳血管の構造変化や機能低下を引き起こすためではないかと考えられています。以上から、RNF213 p.R4810K多型保有者では頭蓋外の頚部血管にも,低形成など何らかの変化が及ぶのではないかと着想し、その関連を検証しました。

■研究手法と成果
2015年5月から2019年6月の間に当院に入院され、頚動脈超音波検査を施行した脳梗塞既往がある617例(女性204例 [33%],年齢中央値74歳 [IQR 66-81])を対象としました。総頚動脈,頚部内頚動脈,外頚動脈,頚部椎骨動脈の血管の直径(外膜間径)を超音波で測定し、総頚動脈径,内頚動脈径,外頚動脈径は両側の平均径,椎骨動脈径は優位側径と定義しました。先般、猪原匡史部長らと島津製作所が共同開発したリアルタイムPCR法を用いてRNF213 p.R4810K多型を判定し、各血管径をRNF213 p.R4810K多型の保有群と非保有群で比較しました。その結果、RNF213 p.R4810K多型保有群では、非保有群と比較して総頚動脈、頚部内頚動脈、頚部椎骨動脈で有意に血管径が細いことがわかりました(図)。

■今後の展望と課題
RNF213 p.R4810K多型保有者の一部では大動脈や腎動脈、肺動脈など全身の血管障害を発症することが知られており、今回の研究で、頭蓋外の頚部血管も低形成となることが分かりました。RNF213 p.R4810K多型を保有していると、心臓から脳に到達する途中の血管が細くなり、脳梗塞に発展する可能性が高くなる可能性があります。今後、私たちが提唱している「RNF213関連血管症」という新しい疾患概念を確立し、適切な脳梗塞予防法を開発していくためには、更なる研究が必要と思われます。

■発表論文情報
著者: Eriko Yamaguchi, Takeshi Yoshimoto, Shiori Ogura, Kozue Saito, Satoshi Saito, Yorito Hattori, Kazuo Wasida, Kunihiro Nishimura, Kazunori Toyoda, Masatoshi Koga, and Masafumi Ihara
題名: Association of the RNF213 p.R4810K Variant with the Outer Diameter of Cervical Arteries in Ischemic Stroke Patients
掲載誌:Stoke: Vascular and Interventional Neurology

■謝辞
本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(助成金番号 19ek0210120h0001)、および財団法人先進医療研究財団により資金的支援を受け実施されました。

■図. 研究の概要と結果

最終更新日:2022年03月29日

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