広報活動
冠動脈塞栓症による心筋梗塞患者への抗凝固剤の重要性
2015年6月29日
冠動脈塞栓症による心筋梗塞患者への抗凝固剤の重要性
~脳梗塞だけではない、心房細動による心臓へのリスク~
国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:橋本信夫、略称:国循)の野口暉夫冠疾患科部長ら心臓血管内科グループは、心筋梗塞の原因のひとつである冠動脈塞栓症の原因として心房細動が最多であり、動脈硬化が原因の通常の心筋梗塞よりも明らかに予後が悪いことを世界に先駆けて解明しました。本研究の成果は、専門誌「Circulation」(impact factor:14.948)に平成27年6月26日(日本時間)付けで掲載されました。
■研究の背景
急性心筋梗塞の多くは冠動脈血管壁のプラーク(動脈硬化巣)とよばれる塊が破れて血栓を形成し血管が塞がれることで起こります。一方、冠動脈塞栓症は冠動脈以外の心臓内部で生じた血栓が冠動脈内に入り込み血流を止めてしまうことで起こる心筋梗塞です。冠動脈塞栓症は心筋梗塞の重要な原因ですが、通常の心筋梗塞と区別が難しい上に、明確な診断基準が存在しないことから、これまで詳細な病態は不明のままでした。
■研究手法と成果
本研究では、2001年1月から2013年12月までの間に国循へ入院した新規発症の急性心筋梗塞患者1,776例を後ろ向きに分析して、冠動脈塞栓症の頻度や特徴、さらに心事故の発生率について評価しました。その結果、冠動脈塞栓症は全心筋梗塞の約3%であること、そして、それらの患者の73%に心房細動の症状がみられることが明らかになりました。また、心房細動を有する冠動脈塞栓症を起こした患者では、血栓症予防目的の抗凝固薬(ワーファリン)が十分に投与されていない事がわかりました。更に、冠動脈塞栓症患者の心事故発生率は通常の心筋梗塞患者と比べて9倍以上に及ぶ事を世界で初めて報告しました。
■今後の展望と課題
本研究の結果から、心房細動による塞栓症は、脳ばかりではなく心臓(冠動脈)にも生じ、かつ再発率も高いことが明らかになりました。心房細動患者に対して十分な抗凝固療法が重要であり、今後その効果を多施設研究にて検証していく予定です
※本研究は、厚生労働科学研究費「平成26年度 一般-001」の支援を受け実施しました。
最終更新日 2015年06月29日
最終更新日:2021年09月26日