国立循環器病研究センター

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広報活動

脂質異常症を有する日本人の糖尿病患者における、ロスバスタチンとアトルバスタチンの効用比較

平成26年9月3日

小川久雄(国立循環器病研究センター副院長、熊本大学大学院循環器内科学教授)らの研究チームは、糖尿病を合併する高コレステロール血症患者に対するストロングスタチンの脂質低下作用および糖代謝への影響の研究(以下、「LISTEN試験」)より脂質異常症を有するⅡ型糖尿病の日本人患者における糖尿病治療薬の詳細な効果を明らかにしました。本研究成果は、スペイン・バルセロナ市で開催されたヨーロッパ心臓学会において、世界で注目される最新の臨床研究の結果を発表するHot Line Sessionで8月31日(バルセロナ時間)に発表されました。Hot Line Sessionでの日本人の発表者は唯一小川副院長のみでした。また専門誌「Circulation Journal」オンライン版には9月2日付で掲載されました。

LISTEN試験では、日本の132施設よりⅡ型糖尿病と脂質異常症を有する1,049人を登録し、ロスバスタチンを日に5mg投与する群とアトルバスタチンを日に10mg投与する群に無作為に1:1に割り振り、12か月の治療によるHDLコレステロール以外のコレステロール(非HDLコレステロール)・LDLコレステロール・糖尿病の評価基準となるHbA1c値の各項目の変化率を調査しました。 その結果、非HDLコレステロールは両群とも顕著な低下が認められ有意差はなかったものの、LDLコレステロールの低下率はロスバスタチン群で有意に大きくなりました(図1)。また、HbA1c値は両群ともわずかに上昇が認められたが有意差はありませんでした。ただし、治療開始後6カ月の時点ではアトルバスタチン群で有意にHbA1cの増加率が高く(図2)、試験期間中に糖尿病治療薬の処方量が増えた患者の割合はロスバスタチン群が8.8%であったのに対しアトルバスタチン群では12.7%と明らかに多い結果となりました(図3)。

今後は本研究成果を臨床に応用できるようにするために、糖尿病患者における異なるスタチンの効果の違いを前向き試験で検証することで明らかにする必要があります。

(図1)非HDLコレステロール値とLDLコレステロール値の変化

薬剤投与から3カ月後、6カ月後、1年後の値は、非HDLコレステロール値(左)ではロスバスタチン群(オレンジ)とアトルバスタチン(緑)の双方とも減少し有意な差がなかったが、LDLコレステロール値(右)ではロスバスタチン群の減少割合が顕著であった。

(図2)HbA1cおよび血糖値の変化

試験期間を通してあまり有意な変化はないものの、6カ月後のHbA1c値がアトルバスタチン群で有意に高くなった。

(図3)糖尿病治療薬の投薬量の変化

投薬量を増やした人の割合は開始3カ月頃から徐々に有意な差がつき始め、1年後にはアトルバスタチン群がロスバスタチン群より約4%多い結果となった。

最終更新日 2014年09月04日

最終更新日:2021年09月28日

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