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心臓血管内科 邑井洸太医師が公益信託 循環器学研究振興基金 褒賞(内田賞)を受賞

概要

 国立循環器病研究センター(大阪府吹田市、理事長:大津欣也、略称:国循)心臓血管内科の邑井洸太医師が、公益信託 循環器学研究振興基金から褒賞(内田賞)を受賞しました。
 この公益信託は、循環器学に関する研究に携わる埋もれた人材の発掘育成を念頭に置き、明治以来 いまだ欧米に遅れをとっている循環器学域の進歩のために、この分野で研究に携わる若手医学研究者を対象とする研究助成を行うとともに優れた研究業績をあげた者に対して褒賞を贈呈することを目的として設定されました。
 邑井医師の研究は、医学雑誌 Circulation: Cardiovascular Interventions に掲載され、臨床現場における意思決定に新たな視点を提示する優れた研究成果として評価されました。

受賞内容

  • 2025度 公益信託 循環器学研究振興基金 褒賞(内田賞)

受賞論文

 著者:Murai K, Kataoka Y, Kiyoshige E, Iwai T, Sawada K, Matama H, Miura H, Honda S, Fujino M, Yoneda S, Nakao K, Takagi K, Otsuka F, Asaumi Y, Nishimura K, Noguchi T.
 題名:Change in Pd/Pa: Clinical Implications for Predicting Future Cardiac Events at Deferred Coronary Lesions
 掲載誌:Circ Cardiovasc Interv. 2024 Sep;17(9):e013830.
 DOI: 10.1161/CIRCINTERVENTIONS.124.013830.

研究の概要

 冠血流予備能比(FFR)は、最大冠動脈拡張時(hyperemia)における冠動脈遠位圧と大動脈圧の比(Pd/Pa)として測定され、心筋虚血評価のゴールドスタンダードとされています。一般にFFRが0.80を超える病変では血行再建は不要と判断されますが、近年、FFR≧0.81であっても将来的に心筋梗塞や血行再建を要する症例が一定数存在することが報告され、より精度の高いリスク層別化指標が求められていました。
 これまで研究者らは、近赤外線スペクトロスコピーを用いた血管内画像解析により、安静時からhyperemiaにかけたPd/Paの低下量(Change in Pd/Pa)が冠動脈内脂質量と相関することを報告してきました。脂質性プラークは将来の心血管イベントの基盤となることから、本研究ではChange in Pd/PaがFFR高値病変における予後予測に有用かを検討しました。
 国立循環器病研究センターにおいて、FFR≧0.81のため血行再建が行われなかった冠動脈疾患患者899例(899病変)を対象に、7年間の追跡で病変関連イベント(対象病変の心筋梗塞・血行再建)および症例関連イベント(心血管死亡、全心筋梗塞、全血行再建、不安定狭心症入院)を解析しました。その結果、病変関連イベントは6.7%、症例関連イベントは13.4%に発生しました。イベント発生病変ではChange in Pd/Paが有意に高く、Change in Pd/Pa≧0.10は病変関連イベントを2.94倍、症例関連イベントを1.85倍増加させました。特にFFR 0.81–0.85の境界域病変において、Change in Pd/Pa≧0.10は強い予後不良因子でした。

今後の展望と課題

 本研究の結果から、新たな生理学的指標:Change in Pd/Paは従来使用されてきた冠血流予備能比(Fractional flow reserve:FFR)が正常であっても、心事故ハイリスク群となる症例を高精度に同定可能でした。今後はFFRが保たれているもののChange in Pd/Pa高値を示す症例に対し、強力な薬物療法や予防的な血行再建術を行うことによって心血管イベントを減少させることができるかを検証する前向き臨床試験につなげていきたいと考えています。

参考リンク

三井住友信託銀行が受託している公益信託
https://www.smtb.jp/personal/entrustment/management/public/example/list.html#NaturalScience-Humanities

表彰論文
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/CIRCINTERVENTIONS.124.013830

表彰論文に関する過去のトピックス
https://www.ncvc.go.jp/hospital/topics/topics_32140/

 

 

最終更新日:2026年01月21日

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