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脳卒中集中治療科

対象疾患・治療法

対象疾患

当科では、急性期脳卒中を中心に診療を行っています。
詳しくは脳卒中とはをご覧ください。

脳梗塞

脳の血管が動脈硬化を起こして細くなり、血流が途絶える場合を脳血栓といい、心臓などで出来た血液のかたまりが、脳の血管につまる場合を脳塞栓といいます。脳血栓は、主に高齢者に起こり、知覚障害、運動障害、意識障害などが徐々に進行します。脳塞栓は、突然に半身のマヒや言語の障害によって始まることが多いです。いずれの場合もできるだけ早く病院を受診し治療を受けることが大切です。

脳出血

脳の血管が破れて脳の中で出血が起こることで、高血圧がある患者さんに多くみられます。多くの場合、突然意識の障害が出て、半身マヒや言語障害がおき、血圧も非常に高くなるため、すぐに受診し治療を始める必要があります。

主な診断法

詳しくは脳の画像検査で何がわかる?をご覧下さい。

頭部CT検査

X線を使って行う検査で、脳卒中をおこしていないかを調べます。約1分の検査時間で脳卒中の画像検査の際にまず行う検査です。

頭部MRI、MRA検査

磁場を利用して行う検査で、CT検査よりも詳しく検査することができます。特に、脳梗塞を発症した直後ではCT検査では病巣がわからないことがありますが、MRIでは発症30分程度でも見つけられることもあります。またMRAといって脳だけでなく、脳血管を描出することも可能です。検査時間は約15分程度とCTより長く、体内金属などが挿入されている患者さんでは検査することができません。ペースメーカーが挿入されていてもMRI検査に対応している場合があります。

血管超音波検査(頸動脈、頭蓋内血管、下肢静脈)

超音波を使って行うエコー検査で、患者さんの負担が少なく、ベッドサイドで簡便に行える検査です。頸や頭の血管が詰まったり狭くなったりしていないかをすぐに調べることができます。また、頭や首の動脈頸だけでなく、特殊な状況では足の静脈にできた血栓が頭の血管に飛んで詰まることがあるため、私たちの施設では下肢静脈の超音波検査も行っています。

心臓超音波検査(経胸壁、経食道)

超音波を使って体表から行う経胸壁心エコーや、先端に超音波装置が付いた胃カメラのような管を飲んで食道側から心臓の超音波検査を行う経食道心エコーがあります。脳梗塞は脳や頸の血管だけの異常ではなく、そこにつながる心臓や大動脈に血栓などができ脳に飛んで行って起こることもあり、心臓の検査も重要です。

血管造影検査

動脈にカテーテルという細い管を入れて、そこから造影剤を脳や首頸の動脈に流して狭窄や閉塞がないかを調べる検査で、血管をもっとも詳しく調べることができます。また、検査を行ったあと、引き続き血管内治療といって血栓を取り除いたり、血管を広げる治療などを緊急で行うこともあります。

核医学検査(SPECT、PET)

ラジオアイソトープ(放射性同位体)を用いて、脳の血流や、脳の代謝の状態を調べる検査です。血管の狭窄や閉塞のある患者さんが、実際にどの程度、脳組織で血が足りていないのかを調べることができます。

新しい画像診断システム-RAPID-

当センターでは日本で初めて,全自動の灌流画像解析ソフトRAPIDを2017年から導入しております。近年、脳灌流画像を使って評価した脳梗塞患者の一部は、ペナンブラ(注1)が存在すれば時間枠を超えても良好に治療に反応するという報告が相次ぎました。脳血管内治療ではRAPIDによる評価で、最大24時間まで治療の効果が認める欧米の脳卒中ガイドラインの記載があります。現在は国内の経皮経管的脳血栓回収機器適正使用指針第3版にもその内容が記載されています。
治療時間の拡大が可能である患者の判定に必要な脳灌流画像をリアルタイムで解析するには専用のソフトウエアが必要であり、RAPIDは世界中で使用され始めたもっともエビデンスを有するソフトウエアとされています。従来の治療時間枠を超えている急性期脳梗塞の方でも、24時間以内に脳灌流画像を解析することでミスマッチ(注2)があった場合に、治療の対象となる可能性があります。

<図1>RAPIDによる急性期脳梗塞のCT灌流画像解析マップ
左脳梗塞が起こり(図左;ピンク)その容積は6mlと自動的に計算される。また図右の緑で示した脳灌流異常を示している画像は82mlと計算され、この領域は改善しうる領域(ペナンブラ)である。ピンクと緑の比が1.8より大きければ血栓溶解療法に反応がよいとされている。参考例は発症10時間であるものの、比率が14であり、血栓溶解療法に良好に反応した。

RAPIDホームページより

<注釈>
(注1)ペナンブラ
脳血管が詰まると脳梗塞が起こります。その際に、詰まってしまった血管に栄養される脳細胞の中心部は少なからず死滅してしまいますが、死滅しかかった脳細胞の周囲はまだ機能が残存している可能性があります。この死滅した脳細胞の周囲にある領域をペナンブラと呼び、治療次第では再び機能を取り戻す可能性がある領域とされています。

(注2)ミスマッチ
前述のすでに死滅してしまった脳細胞(MRIのDWIで高信号の領域)とペナンブラ の領域に差があれば、見かけの症状よりも救済可能な領域があり、tPAや脳血管内治療への反応が良好である可能性があります。この状態を「灌流ミスマッチあり」と呼びます。

脳梗塞救急治療

「脳梗塞は、発症後4.5時間以内の治療開始が重要です」

脳梗塞は「脳の血管がつまって血の流れが止まり、脳の神経細胞が障害される病気です。脳梗塞の治療では、できるだけ早く脳の血の流れを良くすることが大切です。tPA静注療法は、詰まった血栓を溶かすことにより、血液の流れを再開させ脳梗塞を治療します。

血栓溶解療法による脳血管の再開通

脳梗塞の原因となった脳血管(中大脳動脈)の閉塞を、tPA静注療法などの血栓溶解療法によって再開通させ、脳梗塞を治します。(この写真は、カテーテルを用いた血栓溶解療法の治療効果を示します。)

tPA静注療法の治療成績

私たちの施設では、3カ月後の完全自立者(modified Rankin Scaleの0または1)が41%を占め、国内外の一般的な治療成績(4割弱)に比べて、良好な結果を得ています。

私たちの科では、地域の救急隊と密接に連携し、また病院全体で脳卒中の救急医療体制を作り上げ、国内でも屈指の治療成績をあげています。脳梗塞急性来の治療法として、tPA静注療法が2005年に認められてから、15年が経過し、まし我が国で標準治療として定着しています。

脳内科tPA投与(IVT)と脳血栓回収療法(EVT)患者数

発症4.5時間以内の発症早期の脳梗塞患者さんに使用できます。治療開始が早いほど良好な転帰が期待できますので、少しでも早く治療を開始することが重要です。脳卒中を疑った場合にすぐ専門病院を救急車で受診することが、治療の成功に大きく寄与します。
2019年から脳梗塞の起こった時刻がわからない場合でも頭部画像診断(MRIのFLAIR画像検査など)でtPA静注療法を考慮することが出来るようになりました。

また、脳梗塞発症後原則8時間以内(症状の進行が遅い場合は、一部の症例で24時間以内まで可能)で、アルテプラーゼtPA静注療法の適応外、あるいは効果が乏しい患者さんに対して、血液の流れを再開させて脳梗塞を治療することを目的として、 2010年10月からMerciリトリーバルシステム、2011年10月からPenumbraシステムという血栓を機械的に取り除く新しい機器を用いた血管内治療(カテーテル治療)が認められており、さらに2014年3月には、ステント型血栓回収機器が導入されました。
急性期脳梗塞に対する血管内治療は、tPA静注療法と並び、2015年に相次いで有効性を示す研究が報告された為、該当する患者さんには積極的に急性期血管内治療を行っております。当院では、日本脳神経血管内治療学会により認定された指導医・専門医資格を有する3名の脳内科医を中心に、脳神経外科と連携して、有効性が高いと見込まれる患者さんを慎重に見極めた上でこの治療を行っています。

脳梗塞は専門的な救急治療が大切ですので、一刻も早く専門病院を受診してください。

脳卒中ケアユニット(SCU)での急性期脳卒中の集中的内科治療とリハビリテーション

脳卒中専門の病棟である脳卒中ケアユニット(SCU)で急性期脳卒中の集中的内科治療や急性期リハビリテーションを積極的に行うことで、tPA静注療法や血管内治療が出来ない脳卒中患者さんでも、良い治療効果が表れることが少なくありません。このように、一刻も早く専門病院を受診し、しっかりとした初期治療を始めることが重要と考えます。

最終更新日:2024年03月29日

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