腎臓・高血圧内科
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多発性嚢胞腎
多発性嚢胞腎
PKD遺伝子の変異により、尿細管由来の嚢胞が両腎に多発し増大することで、進行性に腎機能が低下し70歳までに約半数が末期腎不全に至る疾患で、常染色体優性遺伝の形式をとります。2014年トルバプタン(サムスカ)が保険適応となり、積極的な治療が始まりました。
診断基準(多発性嚢胞腎診療ガイドライン 2014)
1.家族内発生が確認されている場合
1)超音波断層像で両腎に各々3 個以上確認されているもの
2)CT、MRI では、両腎に嚢胞が各々5 個以上確認されているもの
2.家族内発生が確認されていない場合
1)15 歳以下では、CT、MRI または超音波断層像で両腎に各々3 個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合
2)16 歳以上では、CT、MRI または超音波断層像で両腎に各々5 個以上嚢胞が確認され、以下の疾患が除外される場合
なお、遺伝子検査をすることはほとんどありません。
検査所見
CT、腹部エコーで、多数の嚢胞を伴う腎腫大を認めます。腎臓以外に肝嚢胞、膵嚢胞を伴うこともあります。
腎腫大がある程度進行すると、腎機能が低下してきます。
画像所見
両腎に多数の嚢胞を認め、両腎とも腫大しています。
症状
腎腫大が進行すると、慢性の腹痛と腰痛を認めることが多いです。また、消化管を圧迫するために、食欲不振が生じることがあります。
自然経過
70歳までに約半数が末期腎不全に至ります。
リスク分類
病勢進行を客観的に示すバイオマーカーとして、身長で補正した総腎容積が標準的に使われています。リスク分類として年齢と身長で補正した総腎容積から分類する Mayo クラス分類があります。
多発性嚢胞腎の合併症(多発性嚢胞腎診療指針)
腎臓、肝臓の嚢胞に加えて、高血圧、動脈瘤などの合併症を生じます。
治療
2014年多発性嚢胞腎に対し、バソプレシンV2受容体拮抗薬であるトルバプタン(商品名:サムスカ)が保険適応拡大となりました。また、多発性嚢胞腎に対する難病認定が拡大されました。これらにより、多発性嚢胞腎に対するトルバプタン(サムスカ)の導入が可能となりました。多発性嚢胞腎に対する、サムスカの投与量は心不全や肝硬変と比較し、とても多いため、飲水・排尿管理が必須になってきます。当科では飲水・排尿管理を習得してもらうため、また、多尿のため自己中断とならないように、サムスカを導入する場合は、3泊4日程度の入院で行っております。
サムスカ投与開始時の適格性判定基準
・CKD重症度分類ヒートマップで赤色部分
・総腎容積750mL以上かつ年間総腎容積増大速度5%以上
総腎容積の測定方法(エビデンスに基づく多発性嚢胞腎診療ガイドライン 2020)
除外基準
● 本剤の成分または類似化合物に対し過敏症の既往がある人
● 水分摂取が困難な人
● eGFR 15ml/min/1.73m2未満の人
● 高ナトリウム血症がある人
● 慢性肝炎、薬剤性肝機能障害等の肝機能障害、又はその既往歴のある人
● 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人
最終更新日:2024年01月10日