腎臓・高血圧内科
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ループス腎炎(全身性エリテマトーデス)
ループス腎炎(全身性エリテマトーデス)
全身性エリテマトーデス(SLE)によって引き起こされる腎障害です。SLEは腎障害を合併しやすく、生命予後の規定因子となります。尿潜血・尿蛋白が陽性の場合、SLEの診断や病勢の評価のため、腎生検を行うことがあります。
症状
関節痛、発熱、皮疹などがみられることがあります。
検査所見
各種自己抗体(抗核抗体、二本鎖DNA抗体、Sm抗体)が陽性になります。ループス腎炎を発症すると、尿潜血、尿蛋白が陽性となり、腎機能障害がみられることがあります。重症例では低補体血症や汎血球減少がみられることがあります。
SLEの診断基準
- 臨床項目
- 急性皮膚ループス(頬部紅斑など)
- 慢性皮膚ループス
- 口腔内潰瘍
- 脱毛
- 関節炎
- 漿膜炎(胸膜炎、心外膜炎)
- 蛋白尿 0.5g/日以上または赤血球円柱
- 神経学的症状(痙攣、精神症状)
- 溶血性貧血
- 白血球 4000未満、またはリンパ球 1000未満
- 血小板 10万未満
- 免疫項目
- 抗核抗体陽性
- 抗ds-DNA抗体陽性
- 抗Sm抗体陽性
- 抗リン脂質抗体陽性
- 低補体血症(C3、C4、CH50)
- 直接クームズ試験陽性
臨床項目、免疫項目とも少なくとも1項目以上を含む、4項目以上陽性
抗核抗体または抗ds-DNA抗体陽性で、生検でループス腎炎の所見がある場合
ループス腎炎
SLEの腎障害として、ループス腎炎があります。尿潜血陽性・尿蛋白陽性の場合、生検にて診断します。大きく6つの病型に分類されます。
Ⅰ:微小メサンギウムループス腎炎
組織はほぼ正常であるが、蛍光抗体法でメサンギウムに免疫沈着物が認められる。
Ⅱ:メサンギウム増殖性ループス腎炎
メサンギウムに限局した細胞増多もしくはメサンギウム基質の拡大が認められ、メサンギ
ウムに免疫沈着物がある。
Ⅲ:巣状ループス腎炎
全糸球体の50%未満に病変が存在
Ⅳ:びまん性ループス腎炎
全糸球体の50%以上に病変が存在
病変を有する糸球体の50%以上が分節性秒異変を示すびまん性分節性(Ⅳ-S)ループス腎炎と、病変を有する糸球体の50%以上が全節性病変を示すびまん性全節性(Ⅳ-G)ループス腎炎に分けられる。分節性とは糸球体病変が糸球体係蹄の半分未満を侵すものと定義される。
Ⅴ:膜性ループス腎炎
上皮下免疫沈着物を認める。
Ⅵ:進行した硬化性ループス腎炎
90%以上の糸球体が全節性硬化を示し、すでに活動性はない。
Ⅲ型とⅣ型はさらに活動性病変のみである(A)か、活動性と慢性病変の両者(A/C)か、また慢性病変のみ(C)であるかで、細分される。
活動性病変
管内細胞増多、核崩壊、フィブリノイド壊死、糸球体基底膜の断裂、細胞性半月体、線維細胞性半月体、ワイヤーループ病変、硝子様血栓またはヒアリン血栓
慢性病変
糸球体硬化、線維性癒着、線維性半月体
腎生検所見
ループスⅣ-G(A)
メサンギウム細胞増多、メサンギウム基質増加と管内増殖と核崩壊像を認めます。

著明な管内増殖とメサンギウム増殖を認めます。

細胞性半月体の形成とフィブリノイド壊死を認めます。

ワイヤーループ病変
毛細血管内皮下沈着を認めます。

ヒアリン血栓
毛細血管腔に硝子様血栓を認めます。

蛍光抗体法
メサンギウム領域と糸球体係蹄壁に沈着を認めます。

C1q染色
SLEに血栓性微小血管症を合併した症例
著明な管内増殖と内皮下浮腫を認め、内皮細胞の脱落を伴っています。

ループスⅤ型
糸球体係蹄の肥厚を認めます。膜性腎症の所見です。


治療
Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型が治療対象となります。副腎皮質ステロイド薬にて治療を行います。重症例にはシクロフォスファミド、タクロリムス、ブレディニンなど免疫抑制剤を併用する場合があります。新規治療として、ミコフェノール酸モフェチルの併用が可能となりました。
最終更新日:2021年10月08日