メニュー

心臓外科

対象疾患・治療法
心筋梗塞 (Myocardial infarction: MI) とは

心筋梗塞 (Myocardial infarction: MI) とは

 

プラークが大きくなると、完全に冠動脈内腔を塞いでしまいます(これを冠動脈閉塞といいます)。こうなると閉塞部より先へは血液は流れなくなってしまい、その部分の心筋は死んでしまします(これを壊死といいます)。心筋が壊死してしまうことを心筋梗塞といい、この部分は動かなくなってしまします。残念ながら心筋には再生機能がないため、心筋梗塞を起こした部分は元に戻らず、収縮機能を失ったまま心筋は薄くなってしまいます。心筋梗塞の範囲が小さければ、心臓全体の収縮する力は保たれますが、梗塞範囲が大きいと心臓の収縮する力は低下し、左心室内腔は拡大して心不全をきたします。左心室内腔が拡大すると、僧帽弁の形が変形し僧帽弁閉鎖不全(虚血性僧帽弁閉鎖不全症)が発生します。これにより僧帽弁における血液の逆流がおこるので、左心室、左心房に容量負荷がおこり、さらなる左心室・左心房の拡大、収縮力低下を引き起こします。また左心室内腔は、一度拡大すれば、進行性に拡大し収縮力が下がっていくことが知られています。このように心筋梗塞の範囲が大きいとどんどん心不全が重症化していく負のスパイラルに陥ります。

図15 経胸壁心エコー検査における正常心臓と心筋梗塞後心不全心臓の違い。
上段:正常心臓では拡張期に比べ収縮期で左室心筋が分厚くなり、左室内腔が小さくなる。その結果、十分な血液を拍出できる。僧帽弁は収縮期に僧帽弁口の場所でしっかり閉鎖している。
下段:心筋梗塞後心不全心臓では左室内腔が拡大しており、収縮期において左室心筋が分厚くならず、左室内腔の大きさもほとんどかわっていない。そのため血液の拍出は著しく障害されている。また僧帽弁は収縮期に、僧帽弁口よりも左室内腔側で閉鎖する形となり、正常心臓の場合と比べると著しく変形している。実際に僧帽弁は完全に閉鎖はしていない状態でかなりの僧帽弁逆流を認める。

冠動脈閉塞は自覚症状無く、知らないうちに起こっていることも多いです。その場合、側副血行路という他の冠動脈から発生した細い血管が、閉塞した心筋部分へ血液を少なからず送るため自覚症状が出なかったり、心筋梗塞部分が最小限に抑えられたりします。ただし、知らないうちにかなり心筋梗塞が進んで、病気が判明した頃には、心臓があまり動いておらず、重症となっているケースもあります。

プラークが不安定化し破綻すると血管の内側の壁に血栓という血液の塊がつきやすい状態になります。血栓により急激な冠動脈閉塞が起こることを急性心筋梗塞といい、重篤な状態となります。急性心筋梗塞の場合には側副血行路がないので、閉塞部より先の心筋はすぐに壊死していきます。壊死した範囲が大きいと重症心不全や致死的不整脈により死亡することがあります。急激に壊死した心筋部分が裂けて心臓破裂という致死的な状態となることもあります。

最終更新日:2021年10月08日

設定メニュー