肺循環科
対象疾患・治療法
慢性血栓塞栓性肺高血圧症
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH: Chronic thromboembolic pulmonary hypertension)
はじめに
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は「肺高血圧症」の中の一つの疾患で、肺血管の中で慢性化した血の塊(血栓)によって肺動脈が狭くなり、肺の血圧が上昇(肺高血圧)し、右心不全を起こす難病です(肺高血圧症の全般的な解説はこちら)。治療しなければ死亡リスクの高い危険な病気です。以前は開胸手術による肺血栓をとって肺の血流を改善させる肺動脈内膜摘除術による治療が唯一の治療でした。しかし、肺動脈カテーテル治療や内服薬の治療が多く開発されてきており、様々な治療を使用していくことで専門施設において死亡リスクは大幅に低下してきています。しかしこの病気の診療の十分な経験のある病院は今でも限られており、診断、治療には専門的な診療が必要な難しい難病であることに変わりはありません。国立循環器病研究センター肺循環科はこの疾患の根治を目指して40年近い長い歴史と、これまで国内最大の約1000例の慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)患者さんを診療してきており、世界でも有数の施設で、今も多くの患者さんの命が救われています。今もこれからも患者さんが世界最高の診療が受けられる環境となることを目標として日々努力しています。
労作時の息切れや失神などがあれば早めに医療機関を受診し、今は「慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)」はきちんと診断し、早く専門施設で治療すれば根治に近くまで元気になれる病気です。当院に受診希望がありましたら紹介や受診していただければ診断、治療を行います。当院受診等の相談がある場合は、おかかりの先生に相談いただいて当科を紹介していただいたり、どう受診したらいいかわからない場合は、この当科ホームページ内の肺循環科のインターネット相談等も活用いただければ幸いです。早く元気になれるようにいっしょに病気に立ち向かっていきましょう。
1.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)とはどんな病気?
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH: Chronic thromboembolic pulmonary hypertension)は、肺血管の中で慢性化した血の塊(血栓)によって肺動脈が狭くなり、肺動脈圧があがり肺高血圧になる病気です。肺高血圧になると、肺動脈に血液を送っている右心室、右心房に負担がかかり右心不全になり、右心不全が悪化すると死亡のリスクが高くなります。治療しなければ2,3年で命を失う可能性がある危険な病気です。
CTEPH患者さんの数は現在、全国で約5,000人程度です。原因にもよりますが比較的女性に多く、60-80歳台に比較的多くみられますが、若い方にみられる場合もあります。早期発見、早期診断が難しく、治療がなされていないと数年以内に命を落とす可能性のある難病であり、厚生労働省の指定難病に指定されています。以前は肺動脈内膜摘除術による手術が唯一の治療でした。しかし、肺動脈カテーテル治療や内服薬の治療が多く開発されてきており、様々な治療を使用していくことで専門施設において死亡リスクは大幅に低下してきています。大事なことの一つは早めの正確な診断、最新の適切な治療を行うことです。患者数が比較的少ない難病であるため、治療経験が豊富な専門施設での診断や治療が勧められます。
2.慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)はどんな治療があるの?
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療には、まず血栓を予防する抗凝固薬(ワーファリンやDOAC)が必須です。その上で肺血管の治療として、①手術、②カテーテル治療、③薬剤(肺血管拡張薬)の3つの治療があります。肺動脈内につまっている固まった血栓による肺動脈の狭窄がこの病気の大きな問題ですので、手術か、カテーテル治療のどちらかの治療で肺血管が流れるように治療することが重要です。どちらの治療が良いかは、患者さんの血栓の状態や治療にあった病状かなど総合して判断します。また手術とカテーテル治療の両方の治療を行うことが最適な患者さんもおられます。手術、カテーテル治療は非常に効果的で、根治に近い状態まで病気を改善することができる治療です。薬剤は血栓を取る治療ではありませんので、根本的に病気が改善するわけではありませんが、2種類の肺血管拡張薬(アデムパス®、ウプトラビ®)はCTEPHでも一定の有効性が証明されており、保険適応です。これらの薬剤はカテーテル治療の前や後に併用で使用されることが多いです。
当院は日本最大、世界でも有数のCTEPHのセンターとして手術、カテーテル治療いずれの方法も日常的に治療を行い、世界でもトップクラスの成績を上げています。世界的にみても手術、カテーテル治療いずれの治療も多くの症例を日常的に行っている施設は稀です。当院では放射線科、血管外科、肺循環科のチームで手術やカテーテル治療適応に関して検討し、患者さんにとって最も良いと考えられる治療を推奨するようにしています。
肺高血圧症の一般的な説明はここをクリック→ 肺高血圧症とは
<代表的なCTEPH治療について>
①肺動脈血栓内膜摘除術(PEA: Pulmonary endarterectomy)
肺動脈の根本に近い中枢部分に血栓があれば(手術で血栓が取れる場所にあれば)手術で完治が期待できます。当院では日本で最初に肺動脈血栓内膜摘除術を行い、長い歴史を持ち、今まで200人以上の患者さんに手術を行い、日本でも最も多く手術を行っている施設です。術後ほぼ肺高血圧症は消失し日常生活が可能となるまでに改善が期待できます。
②肺動脈バルーンカテーテル治療(BPA: Balloon Pulmonary Angioplasty)
肺動脈血栓内膜摘除術は効果的な治療ですが、様々な理由で手術を受けられない患者さんがおられます。特に肺動脈の先のほうに血栓があったり、年齢や様々な病気で手術のリスクが高い患者さんのような手術が困難な患者さんがよい適応になります。カテーテルという細い管を用いて風船(バルーン)で肺動脈の狭窄部位を広げる画期的な治療(下図)で、手術ができない患者さんでもカテーテル治療で、手術と同じくらい根治ができる治療です。当院はこれまで世界有数の500人以上の患者さんにカテーテル治療を行い、合併症も極めて少なく安全な治療をおこなっています。しかし、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診断や、カテーテル治療における病変の診断、手技、合併症対策等で多くの経験を必要とし、実質的に多くの患者さんのカテーテル治療している施設は日本では数か所に限られます。当院ではカテーテル治療の適応に関して血管外科医、放射線科医、肺循環科で十分な検討を行い。本当に患者さんにとって良い治療となるように最善を尽くすようにしています。
③薬剤(肺血管拡張薬)
薬剤は血栓を取る治療ではありませんので、根本的に病気が改善するわけではありません。まずは根治が期待できる手術、カテーテル治療に関してよく検討することが大切です。しかしCTEPHにも手術やカテーテル治療ができない細かい血管に肺動脈性肺高血圧症(PAH)と同じような肺血管の狭窄などがあることが知られており、肺血管拡張薬も根治はできませんが、一定の有効性が証明されています。現在、2種類の肺血管拡張薬(アデムパス®、ウプトラビ®)が国内で保険適応です。これらの薬剤はカテーテル治療の前や後に併用で使用されることが多いです。
最終更新日:2026年01月26日