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患者の皆様へ

救急蘇生法:ハンズオンリーCPR

 

循環器疾患は危険がいっぱい

予期せぬ心停止によって命を失う人を少しでも少なくするためには、まず心停止の発生を予防することが重要です。突然の心停止の重要な原因である急性冠症候群や脳卒中などでは発症の予防が重要ですが、発症した場合でも迅速に対応することで心停止への進行を予防できることが多いです。

万が一心停止に至った場合には、救急蘇生法を早期かつ効果的に行いつつ、医療機関で行われる高度な救命処置につなげる必要があります。

総務省消防庁によると2019年度に救急搬送された院外心停止は約12万人でした。
一般市民の目の前で突然に心停止を発症し市民が救急蘇生法を実施したのは58%(14,789/25,560人)でした。このうち市民がAED(自動体外式除細動器)を用いて電気ショックを実施したのは9%(1,311/14,789人)です。救急蘇生法が迅速・円滑に行われた場合の社会復帰率は46%で救急車が現場に到着するまでに何も行われていなかった場合の10倍以上です。

あなたの家族も突然倒れるかもしれません。
正しい救急蘇生についての知識を身につけることが、家族を救うことにつながるのです。

目の前で人が倒れた、その時にあなたは次のことを行って下さい。

1.安全の確認[図2 ボックス1]

周囲の安全を確認します。安全を脅かす具体的な状況としては、車の往来がある。室内に煙が立ち込めているなどがあり、それぞれの状況に応じて安全を確保するようにします。COVID-19流行期の対応については別に記載してありますので参照してください。

2.反応の確認[図2 ボックス2]

肩を軽くたたきながら大声で呼びかけます。何らかの応答や仕草がなければ「反応なし」とみなします。呼びかけても反応がない場合、または痙攣中であるなど、反応の有無についての判断に迷う場合には119番通報を行います。

3.119番通報[図2 ボックス3]

大声で叫んで周囲の注意を喚起し、周囲の人に119番通報とAEDの手配(近くにある場合)を依頼します。
誰もいない場合には、自分で119番通報を行い、近くにAEDがあることがわかっていれば持ってきます。
119番通報の際には電話のスピーカー機能を利用します。ハンズフリーオプションを利用すれば、119番通報を受けた通信指令員の口頭指導を受けながら救急蘇生法を行うことができます。

4.正常な呼吸をしているか胸を観察します。[図2 ボックス4]

呼吸をしていなければ直ちに胸骨圧迫を開始します。あえぐような呼吸は死戦期呼吸といって心臓が止まった直後にみられますので、救急蘇生法が必要となります。

5.胸骨圧迫[図2 ボックス5]

反応がなく、正常な呼吸をしていなければ、直ちに胸骨圧迫を開始します。

1)倒れている人を仰向けに寝かせて、胸の横にひざまずきます。
2)胸骨圧迫の部位は胸骨の下半分です。圧迫の目安は「胸の真ん中」です(図1-1)。
3)片手を胸の真ん中に置き、もう一方の手の指を組んで重ねます。これで指を浮かせて手のひらの付け根の部分で圧迫します(図1-1、図1-2)。
4)指は肋骨を押さないように少し浮かせて、両腕はまっすぐ伸ばして圧迫します(図1-2)。
5)胸が約5cm沈むように圧迫します。小児では胸郭の前後径の約1/3を圧迫します。毎回の胸骨圧迫の後で完全に胸郭が元の位置に戻るように圧迫の力を抜きます(図1-3、図1-4)。
6)1分間に100~120回のテンポで圧迫します。

     
図1-1      図1-2       図1-3      図1-4

7)救急車が来るまで続けます。救助者の疲労による胸骨圧迫の質の低下を最小とするために、救助者が複数いる場合には、1~2分ごとを目安に胸骨圧迫を交代します。交代時の胸骨圧迫の中断時間は最小限になるように心がけます。

6.人工呼吸[図2 ボックス6]

訓練を受けていない市民救助者は、胸骨圧迫のみの救急蘇生法を行います。訓練を受けたことのある市民救助者であっても、気道を確保し人工呼吸を行う感染防護具がない場合には胸骨圧迫のみの救急蘇生法を行います。

7.AED[図2 ボックス7]

こちらを参照してください。



図2:ガイドライン2020の心肺蘇生手順(一次救命処置)

COVID-19流行期の心停止対応

COVID-19が流行している状況においては、市民救助者はすべての院外心停止患者に感染の疑いがあるものとして対応します。注意点を以下に記載します。

1.安全確認。可能な限り、日常的にマスクを装着しましょう。

2.反応や呼吸を確認する際には、患者の顔と救助者の顔があまり近づきすぎないようにしましょう。

3.エアロゾルの飛散を防ぐため、胸骨圧迫を開始する前に、マスクやハンカチ、タオル、衣服などあれば患者の鼻と口を覆います。

4.成人の院外心停止に対しては胸骨圧迫とAEDによる電気ショックを行い、訓練を受けていても人工呼吸は行いません。乳児・小児には人工呼吸による窒息性心停止からの救命を考慮して、救助者が人工呼吸の技術を身につけていて、意思がある場合には胸骨圧迫に人工呼吸を組み合わせて行ってもよいです。ただし、可能な限り人工呼吸用の感染防護具を使用してください。

5.救命処置後の衛生行動については、院外心停止患者を救急隊員に引き継いだあとは、速やかに石鹸と流水で手と顔を十分に洗いましょう。

最終更新日:2022年10月25日

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