国立循環器病研究センター

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医療人の育成

先輩紹介:心血管リハビリテーション科 

心血管リハビリテーション科  専門修練医 大浦翔子



先輩プロフィール

出身地
岩手県 大船渡市

出身校
藤田医科大学(2012年卒業)

経歴
2012年4月~2016年3月
岩手県立中央病院
初期・後期研修医

2016年4月〜2020年3月
東北大学大学院医学系研究科(循環器内科学分野)

2020年4月〜2023年3月
岩手県立胆沢病院
循環器内科 医長

2023年10月〜2024年9月
友愛医療センター
循環器内科 非常勤医師

2025年4月~現在
国立循環器病研究センター

趣味・休日の過ごし方
社交ダンス
ベルギービール
三線
ダイビング
 

 

【心臓リハビリを専門に選ぶまでの道のり】

「先生ならきっと患者さんの気持ちがわかるようになるよ。」
学生時代に担当した大腸がん患者さんからいただいたこの言葉を胸に、私は医師としての道を歩んできました。

大学時代から循環器学に興味があり、後期研修医の頃は、カテーテルに没頭し、CAGやPCI、アブレーション、PMIなどを朝から晩まで行ってきました。入院患者さんの回診は早朝や夜間が多く、ベッドで静かに眠る患者さんを見つめる日々が続きました。手技によって患者さんが回復する喜びを感じる一方で、果たして自分が患者さんの心に寄り添えているのか不安になることもありました。

その後、大学院に進学し「冠攣縮性狭心症・微小血管狭心症患者に対する血管内皮機能」をテーマに臨床研究を行いました。その研究では患者さんに薬剤を4〜5時間ほど持続投与しながら血管内皮機能を測定するのですが、その間、参加してくださった患者さんおひとりおひとりと様々なお話をしました。患者さんの病気に対する思いや趣味や人生観などを聞き、自分の医師としての原点に立ち返りました。
大学院を修了してからは、岩手県立胆沢病院で心臓リハビリテーションの立ち上げに関わり、指導者がいない中、多職種と心リハチームを立ち上げたことは、現在の私の心リハ診療の土台となっています。

心リハ室でエルゴメータや体操で運動する患者さんたちの姿を見たとき、ベッド上や外来では見られない生き生きとした表情に触れ、「心リハはなんて患者さんが明るい分野なのだろう。この分野であれば、患者さんの気持ちに寄り添いながら導くことができるのでは。」と感じたことが、心リハを専門分野として選ぶ決め手となりました。現在もこれからも、あの時の大腸がんの患者さんからいただいた言葉どおりの医師となれるよう日々を過ごしています。

【国循の心リハ部門の強み・アピールポイント】

①国内最大級の心血管リハビリテーション室
1周80mのトラックを含む約1400m²の広い心リハ専用スペースを有し、患者さんのニーズに応じた多様な運動療法を実施しています。(脳リハ部門とは完全別スペース)

②医師主導の心リハプログラムの提供
当院心リハは、3か月間の外来心リハプログラムを主に展開し、開始時、1ヶ月後、終了時の合計3回、医師との面談を実施しています。この面談では、患者さんに合わせた運動処方や生活指導を含むフィードバックを行っています。

③多様な疾患を抱える患者さんへの心リハ
様々な病状に対する運動処方を学ぶことが出来ます。特に、補助人工心臓や心臓移植後の患者さんに対する心リハは国循ならではの経験です。

④心リハ医の直接指導の元で実施する心肺運動負荷試験(CPX)
独学では難しいCPXを基礎から応用まで教えてくださる指導医の存在は、心リハに活かすための検査結果の解釈を可能にし、適確な運動処方だけでなく病態の深い理解へとつながります。

⑤心リハに関する研究・他施設との連携
心リハ部門はリサーチマインドが高く、研究・発表・論文化までサポートしてもらえる充実した環境があります。
私自身もスタッフの先生にサポートしていただきながら、患者の行動変容や心拍応答不良に関する研究を進めています。

また、心血管疾患患者に一貫性のある医療を提供することを目的として、国循OBの後藤葉一先生が副院長を務める北大阪ほうせんか病院と「心臓リハビリテーションに関する最適な連携方法を構築するための協定」を締結 し、高齢心疾患患者への心臓リハビリテーションモデルの構築を目指して動き始めています。

【将来の目標について】

それは沖縄県で心リハクリニックを開業することです。沖縄に1年半滞在した際、戦争の歴史や県民の辛い過去に触れ、「県民のために力になりたい」と強く感じました。
国循での集団療法では、経験豊富な多職種の心リハスタッフの指導のもと、自転車エルゴメータに加え、エアロビクスなど多様な心リハを取り入れています。
これらの経験を活かし、どんな患者さんも最高の心リハを受けられるクリニックを目指します。沖縄から全国へ心臓リハビリテーションの重要性を広め、心疾患患者さんにこの素晴らしい治療を受けていただくことが私の使命です。

【研修を考えている先生へ】

現在、心臓リハビリテーションに医師が積極的に関わっている病院は少なく、指導医が周囲にいないことも多いです。そのため、心リハに自信を持てない方もいるかもしれません。
国循では、専門的な知識と技術を学べる研修プログラムを提供しています。興味をお持ちの方はぜひ国循での研修を検討してみてください。               心リハの普及・発展に対し情熱を持ったスタッフの先生とのつながりが、あなたの心リハ診療をさらに向上させることは間違いありません。

【指導医より】

大浦先生は将来は沖縄で心リハクリニックを開業したいという強い気持ちの元、2025年4月より当院心血管リハビリテーション科専門修練医として入職されました。当初は当院のシステムになれることにやや戸惑いもあったと思いますが、ゴールデンウイークまでには慣れ、心リハ運営や心肺運動負荷試験(CPX)にも積極的に取り組まれています。

当院心リハには、心リハ診療を学びたい方、CPXを学びたい方、心リハやCPXの研究をしたい方などさまざま希望をもった医師が来られます。
大浦先生は開業を目指しておられるため、将来役立てられるよう、いくつかある心リハ運動プログラムの一つを任せて頑張ってもらっています。 大浦先生の持ち前の明るい笑顔で患者さんが頻回に通うようになり、患者さん人数や患者さんの改善度も上がっているように感じています。 同時に心リハとCPXに関連した研究にも取り組まれ、患者さんの行動変容や心拍応答不良に関する研究を今後予定しています。

国循での研修や研究が、大浦先生にとってかけがえのない経験となることを願いつつ、将来の診療と患者さんにfeed backできるよう期待しています。

心血管リハビリテーション科 医長 村田 誠

 

 

最終更新日:2025年08月29日

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