医療人の育成 先輩紹介:心臓血管内科 基幹専攻医 心臓血管内科 基幹専攻医 冨田大樹先輩プロフィール出身地栃木県 宇都宮市出身校千葉大学(2022年卒業)経歴2022年4月~2025年3月静岡県立総合病院初期・後期研修医2025年4月~現在国立循環器病研究センター心臓血管内科 基幹専攻医趣味・休日の過ごし方オーケストラ鑑賞 【基幹専攻医として国循を選んだ理由】私が国立循環器病研究センター(国循)への入職を考えたのは大学5年生の時でした。当時より心臓移植医療に興味を持っていたため、内科として移植待機期間、移植後を含めて長く患者さんと向き合える循環器内科を志望しました。出身大学である千葉大学の教授である小林欣夫先生が国循のOBであり、大学病院以外で多数の心臓移植を行っている施設としても国循を調べていくうちに、各専門領域のスペシャリストのもとで指導を受けながらローテーションが出来るレジデントの制度に魅力を感じました。国循には初期研修医としての募集がないので、後期研修医から必ず研修を行いたいと考えていました。そのため内科専門医制度で国循と連携している、静岡県立総合病院での初期研修を決め、実際に3年の間、医師としての礎を築かせていただきました。【4月より連携施設から基幹である国循に戻って来ましたが、国循での生活はいかがですか?】念願の国循の生活が始まり、最初のクールでは心臓血管集中治療科(CCU)を回らせていただいております。国循のCCUは重症度の高い患者様が多く、毎日が刺激的で、知識が足りないことや業務が重なり大変なことも多いですが、専門修練医やスタッフの先生がいつも気にかけてくれ、サポート体制がしっかりと整っています。各学会で講演会をするような著名な先生方のレクチャーもローテーション期間中に受けることができ、大変貴重な機会だと思います。国循では、『レジデント自身が患者の病態を把握し、治療方針を考えて、プレゼンテーションをし、ディスカッションをする』という自立性を求められます。国循のスタッフの先生方はガイドラインの編纂にも携わっている先生方も多く、当初は医師4年目の自分が意見を述べることに抵抗感を覚えておりました。しかしどのスタッフの先生方も、たとえ初歩的な疑問であってもゼロから系統立てて疾患・病態について教えてくださり、臨床の患者さんへ知識を還元するプロセスを日々学ぶことができております。また、専門修練医の先生方とは比較的年代が近いこともあり、具体的な業務のことや自分の学んだ知識の確認などを気軽に質問できる環境で、医師4年目ではなかなか味わえない充実した教育体制があります。勿論、仕事ばかりだけではなく、プライベートでも気軽に食事に誘ってくださり、入職して2ヵ月ですが一生大切にしたい同期・先輩方と出会うことができました。CCUでのローテート期間は残り1か月となりましたが、まだCCUで診療を通して学びたい思いが強くとても名残惜しい気持ちです。ぜひ循環器内科の中で集中治療に興味のある方は国循のCCU研修をおすすめします。 【今後はローテーションで、心臓血管内科の全科を回ることになります。心臓血管内科がここまで細分化されているのは国循の特徴でもあると思います。いろいろな科を回れることは楽しみですか?専門にしたい科はすでに決まっていますか?】3か月ごとに細分化された診療科を回れることは国循の心臓血管内科研修の特権であり、私が国循を志望した理由でもあり、とても楽しみです。同じ循環器内科でも各診療科で、心臓超音波検査の見方ひとつをとっても違う角度になり、大変面白く感じます。現に、CCUのローテート期間を通して、急性心筋梗塞の見方が変わりました。急性心筋梗塞は循環器内科の罹患率の多い疾患で、どの病院でも携わる疾患かと思います。しかし、改めてガイドラインを読み直すことや、知識を更新しつづけることで再発例や重症化を予期する能力を養うこともちろん、各領域の最先端の研究をされている先生の視点でのコメントは大変学びになり、各検査の見え方が変わりました。また、特発性冠動脈解離(SCAD)や冠動脈拡張症といった特殊な心筋梗塞について精通する先生も多く、治療法や最新の知見・知識を吸収できるのも国循ならではだと思います。大学生のころから心臓移植に興味があり、将来は心臓移植に携われる医師になりたいため、今後の移植医療部へのローテートを特に心待ちにしております。ローテートを通して様々な循環器疾患を学ぶことで、急性期から慢性期への移行を橋渡しできるような医師を目指していきたいと考えております。 【ローテーション例】※実際とは異なります 【臨床だけでなく「研究」も国循の特色ですが、どのような経緯で研究してみようとなったのでしょうか。】 学会発表は学生時代、初期研修時代にも数回機会をいただきましたが本格的な研究に取り組むのは初めてです。 最初にローテートしたCCUで、以前私が学会発表をした疾患をチーム内で共有した際に着想を得て、研究テーマをいただきました。これから始める段階なのでまだ詳しいことはわからないですが、指導医のサポートのもと、諸OB・OGの方々のように実績を作れるよう臨床だけでなく研究も努力していきたいです。【研修先で国循を考えている先生方へ一言お願いします】国循は諸先輩方が残してきたデータベースがあり、循環器内科医としての礎を理論やエビデンスに基づいた知識を身につけ、それを実臨床に応用していくメソッドを学ぶことができます。市中病院とは、手技の経験の量で比べると劣る点もあるかもしれませんが、安全に丁寧に、知識を持って、診療・手技一回一回の質を高めることで大変充実した研修を行うことができると思います。何より臨床・研究に対して高い志を持った同期と過ごす時間は、診療時間内外問わず貴重な時間だと感じます。私は関東から関西の地に思い切って飛び込みましたが、毎日楽しく過ごすことが出来ております。入職時、あるスタッフの先生がおっしゃっていたことが今も強く印象に残っております。「国循での生活ではもちろん大変なこともある。ただ研修期間のどこかで診療のどこかで本当によかった、と感じる瞬間が訪れる。その瞬間は必ず訪れるから、日々頑張っていきましょう。」その瞬間を感じられるよう、日々研鑽を重ねています。是非この文章が、国循の研修で悩んでいる先生や学生の皆様が国循の研修への一歩を踏み出す手助けになることを望んでおります。【指導医より】冨田先生は、初期研修医の頃から国循で学びたいという強い気持ちがあり、その意欲をもって非常に積極的に診療に取り組んでいました。赴任後最初のローテーションで、重症患者が多くを占めるCCUに配属となり、3ヶ月の間に急性心不全・急性冠症候群や心原性ショックの症例を数多く担当しました。特に、二例の劇症型心筋炎の症例に関しては、非常に丁寧に患者さんの状態を評価し、治療に取り組んでくれました。一例目は無事に機械的補助循環を離脱できた症例で、もう一例は難治性の巨細胞性心筋炎で、最終的にBi VADへと移行する難しい症例でしたが、冷静に対処し治療に当たっていました。緊急度の高い現場でも、臨機応変に適切な判断を下し、患者さんとのコミュニケーションを大切にしながら、優しさと誠実さを持って接している姿に感心しました。さらに、抄読会では心筋炎に関する論文を発表してくれ、非常に活発な議論が展開され、科内で有意義な時間を共有できました。まだ国循での生活は始まったばかりですが、これからも多くの知識や経験を積み重ね、立派な循環器内科医として成長されていくことが非常に楽しみです。すでに心破裂や心筋炎に関するデータ収集にも取り組み始めています。今後、臨床研究にも積極的に取り組んでくれることを大いに期待しています。心臓血管系集中治療科(CCU)スタッフ 岩井 雄大 最終更新日:2025年08月21日
【基幹専攻医として国循を選んだ理由】
私が国立循環器病研究センター(国循)への入職を考えたのは大学5年生の時でした。当時より心臓移植医療に興味を持っていたため、内科として移植待機期間、移植後を含めて長く患者さんと向き合える循環器内科を志望しました。
出身大学である千葉大学の教授である小林欣夫先生が国循のOBであり、大学病院以外で多数の心臓移植を行っている施設としても国循を調べていくうちに、各専門領域のスペシャリストのもとで指導を受けながらローテーションが出来るレジデントの制度に魅力を感じました。
国循には初期研修医としての募集がないので、後期研修医から必ず研修を行いたいと考えていました。そのため内科専門医制度で国循と連携している、静岡県立総合病院での初期研修を決め、実際に3年の間、医師としての礎を築かせていただきました。
【4月より連携施設から基幹である国循に戻って来ましたが、国循での生活はいかがですか?】
念願の国循の生活が始まり、最初のクールでは心臓血管集中治療科(CCU)を回らせていただいております。国循のCCUは重症度の高い患者様が多く、毎日が刺激的で、知識が足りないことや業務が重なり大変なことも多いですが、専門修練医やスタッフの先生がいつも気にかけてくれ、サポート体制がしっかりと整っています。
各学会で講演会をするような著名な先生方のレクチャーもローテーション期間中に受けることができ、大変貴重な機会だと思います。国循では、『レジデント自身が患者の病態を把握し、治療方針を考えて、プレゼンテーションをし、ディスカッションをする』という自立性を求められます。
国循のスタッフの先生方はガイドラインの編纂にも携わっている先生方も多く、当初は医師4年目の自分が意見を述べることに抵抗感を覚えておりました。
しかしどのスタッフの先生方も、たとえ初歩的な疑問であってもゼロから系統立てて疾患・病態について教えてくださり、臨床の患者さんへ知識を還元するプロセスを日々学ぶことができております。
また、専門修練医の先生方とは比較的年代が近いこともあり、具体的な業務のことや自分の学んだ知識の確認などを気軽に質問できる環境で、医師4年目ではなかなか味わえない充実した教育体制があります。勿論、仕事ばかりだけではなく、プライベートでも気軽に食事に誘ってくださり、入職して2ヵ月ですが一生大切にしたい同期・先輩方と出会うことができました。
CCUでのローテート期間は残り1か月となりましたが、まだCCUで診療を通して学びたい思いが強くとても名残惜しい気持ちです。ぜひ循環器内科の中で集中治療に興味のある方は国循のCCU研修をおすすめします。
【今後はローテーションで、心臓血管内科の全科を回ることになります。
心臓血管内科がここまで細分化されているのは国循の特徴でもあると思います。
いろいろな科を回れることは楽しみですか?専門にしたい科はすでに決まっていますか?】
3か月ごとに細分化された診療科を回れることは国循の心臓血管内科研修の特権であり、私が国循を志望した理由でもあり、とても楽しみです。同じ循環器内科でも各診療科で、心臓超音波検査の見方ひとつをとっても違う角度になり、大変面白く感じます。現に、CCUのローテート期間を通して、急性心筋梗塞の見方が変わりました。
急性心筋梗塞は循環器内科の罹患率の多い疾患で、どの病院でも携わる疾患かと思います。しかし、改めてガイドラインを読み直すことや、知識を更新しつづけることで再発例や重症化を予期する能力を養うこともちろん、各領域の最先端の研究をされている先生の視点でのコメントは大変学びになり、各検査の見え方が変わりました。
また、特発性冠動脈解離(SCAD)や冠動脈拡張症といった特殊な心筋梗塞について精通する先生も多く、治療法や最新の知見・知識を吸収できるのも国循ならではだと思います。
大学生のころから心臓移植に興味があり、将来は心臓移植に携われる医師になりたいため、今後の移植医療部へのローテートを特に心待ちにしております。
ローテートを通して様々な循環器疾患を学ぶことで、急性期から慢性期への移行を橋渡しできるような医師を目指していきたいと考えております。
【ローテーション例】※実際とは異なります
【臨床だけでなく「研究」も国循の特色ですが、どのような経緯で研究してみようとなったのでしょうか。】
学会発表は学生時代、初期研修時代にも数回機会をいただきましたが本格的な研究に取り組むのは初めてです。 最初にローテートしたCCUで、以前私が学会発表をした疾患をチーム内で共有した際に着想を得て、研究テーマをいただきました。
これから始める段階なのでまだ詳しいことはわからないですが、指導医のサポートのもと、諸OB・OGの方々のように実績を作れるよう臨床だけでなく研究も努力していきたいです。
【研修先で国循を考えている先生方へ一言お願いします】
国循は諸先輩方が残してきたデータベースがあり、循環器内科医としての礎を理論やエビデンスに基づいた知識を身につけ、それを実臨床に応用していくメソッドを学ぶことができます。
市中病院とは、手技の経験の量で比べると劣る点もあるかもしれませんが、安全に丁寧に、知識を持って、診療・手技一回一回の質を高めることで大変充実した研修を行うことができると思います。
何より臨床・研究に対して高い志を持った同期と過ごす時間は、診療時間内外問わず貴重な時間だと感じます。私は関東から関西の地に思い切って飛び込みましたが、毎日楽しく過ごすことが出来ております。
入職時、あるスタッフの先生がおっしゃっていたことが今も強く印象に残っております。
「国循での生活ではもちろん大変なこともある。ただ研修期間のどこかで診療のどこかで本当によかった、と感じる瞬間が訪れる。その瞬間は必ず訪れるから、日々頑張っていきましょう。」
その瞬間を感じられるよう、日々研鑽を重ねています。是非この文章が、国循の研修で悩んでいる先生や学生の皆様が国循の研修への一歩を踏み出す手助けになることを望んでおります。
【指導医より】
冨田先生は、初期研修医の頃から国循で学びたいという強い気持ちがあり、その意欲をもって非常に積極的に診療に取り組んでいました。
赴任後最初のローテーションで、重症患者が多くを占めるCCUに配属となり、3ヶ月の間に急性心不全・急性冠症候群や心原性ショックの症例を数多く担当しました。特に、二例の劇症型心筋炎の症例に関しては、非常に丁寧に患者さんの状態を評価し、治療に取り組んでくれました。
一例目は無事に機械的補助循環を離脱できた症例で、もう一例は難治性の巨細胞性心筋炎で、最終的にBi VADへと移行する難しい症例でしたが、冷静に対処し治療に当たっていました。緊急度の高い現場でも、臨機応変に適切な判断を下し、患者さんとのコミュニケーションを大切にしながら、優しさと誠実さを持って接している姿に感心しました。
さらに、抄読会では心筋炎に関する論文を発表してくれ、非常に活発な議論が展開され、科内で有意義な時間を共有できました。
まだ国循での生活は始まったばかりですが、これからも多くの知識や経験を積み重ね、立派な循環器内科医として成長されていくことが非常に楽しみです。
すでに心破裂や心筋炎に関するデータ収集にも取り組み始めています。
今後、臨床研究にも積極的に取り組んでくれることを大いに期待しています。
心臓血管系集中治療科(CCU)スタッフ 岩井 雄大