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肺循環科

対象疾患・治療法
肺高血圧症

肺高血圧症

当科の診療の最も中心となる疾患です。肺高血圧症とは様々な原因で肺動脈の圧力が高くなり右心不全を起こす難病です。以前は良い治療がありませんでしたが、近年メカニズム解明が進んで肺高血圧治療薬が開発され、治療ができるようになってきました。しかし診断、治療は専門施設でないと難しく、当科は長い歴史と400例以上の肺動脈性肺高血圧症(先天性心疾患関連肺動脈性肺高血圧 250例を除く)を診療し、全国有数の経験をもとに非常に良い成績を上げています。また研究所や臨床病理部と共に遺伝子などの病気の発症するメカニズムに関する研究も行われており、最先端の診断、治療が行えるよう努力しています。

肺高血圧症はかつて治療がないと言われましたが、今では治療の進歩により良い治療ができるようになってきました。特に薬の進歩やカテーテル治療等の非侵襲的な治療は目覚ましい進歩があります。労作時の息切れや失神などがあれば早めに医療機関を受診し、忘れられがちな「肺高血圧」を診断し、早く治療すれば元気になれる可能性があります。当院に受診希望がありましたら紹介や受診していただければ診断、治療を行います。相談がある場合はインターネット相談等を活用してください。早く元気になれるようにいっしょにがんばりましょう。

肺高血圧症の治療

A. 支持療法(在宅酸素療法等の治療)

B. 肺動脈性肺高血圧症特異的治療薬

エポプロステノール静脈注射療法と内服治療薬
一昔前、肺高血圧症の患者さんはなすすべもなく亡くなっていくという時代がありました。その後、エポプロステノール静脈注射の効果があることが分かり、多くの肺高血圧症患者さんに福音をもたらしました。現在でも在宅エポプロステノール持続注射は重症肺高血圧症患者さんへの中心となる治療であり、当院では今までに150例以上の在宅エポプロステノール持続注射の経験があり全国有数の経験をもとにチーム医療で取り組み、非常に良い効果を上げています。また近年、肺動脈性肺高血圧症の特異的内服治療薬が開発され、重症でなければ内服で安定した経過をとること患者さんも多くいらっしゃることが分かってきました。病態に合わせた肺高血圧内服治療薬を調節することで、さらに安定した状態で、症状や予後を改善できる可能性を秘めています。現在、肺高血圧症に対する新規治療薬の開発が進んでおり、さらに効果のある治療薬が出てくる予定です。

図. エポプロステノール持続静注療法
エポプロステノール(PGI2)は極めて強力な肺血管拡張作用を有し、特発性・膠原病性肺高血圧症に対して最も効果が期待され、また実績もある肺高血圧症治療薬です。ただ、エポプロステノールは生体内の半減期が短く、実際の治療では皮下から鎖骨下静脈を介し右房近隣に留置した中心静脈カテーテルを通じて、正確に一定量の薬液を持続静注することが必要となります。

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C. 慢性血栓塞栓性肺高血圧症への治療

慢性血栓塞栓性肺高血圧症は古い器質化した肺動脈の血栓のため肺高血圧症となる疾患で重症では予後不良です。以下に詳しく書きますが、現在、①薬、②手術、③カテーテル治療の3つの治療があります。薬は根本的に病気が改善するわけではなく手術、カテーテル治療が非常に効果的に病気を改善することができる治療です。当院は日本の慢性血栓塞栓性肺高血圧症のセンターとして手術、カテーテル治療いずれの方法も日常的に治療を行い、トップクラスの成績を上げています。現在手術、カテーテル治療いずれの治療も多くの症例を日常的に行っている施設は世界でも稀です。当院では放射線科、血管外科、肺循環科のチームで手術やカテーテル治療適応に関して検討し、その時点で最も患者さんにとって良いと考えられる治療を推奨するようにしています。そして患者さんの希望や状態を考慮して治療方針を決めています。

C-1. 肺動脈血栓内膜摘除術(Pulmonary endarterectomy: PEA)
肺動脈の中枢に血栓があれば(手術で血栓が取れる場所にあれば)手術で完治が期待できる場合があります。当院では日本で最初に肺動脈血栓内膜摘除術を行っており長い歴史を持ち、今まで170例以上の手術を行い、日本でも最も多く手術を行っている数少ない施設の一つです。写真左は中枢型症例の肺動脈造影像、左は手術によって摘出された陳旧化した肺動脈血栓です。この患者さんは術後ほぼ肺高血圧症は消失し通常の日常生活が可能となりました。
PEAの適応検討、紹介に関しては医療従事者からのコンサルト、紹介の方法からお願いします。

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C-2. 肺動脈バルーンカテーテル治療(Balloon Pulmonary Angioplasty: BPA)
慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対して肺動脈血栓内膜摘除術が行われてきましたが、様々な理由で手術を受けられない患者さんがおられます。近年、手術が困難な患者さんにカテーテルという細い管を用いて風船(バルーン)で肺動脈の狭窄部位を広げる画期的な治療が可能になり、多くの患者さんに恩恵が得られるようになりました。当院での治療は効果も十分にあり、極めて合併症も少なく治療が行えるようになりました。しかし、慢性血栓塞栓性肺高血圧症の診断や、カテーテル治療における病変の診断、手技、合併症対策等で多くの経験を必要とし、実質的に多くの患者さんのカテーテル治療している施設は日本では数か所に限られます。当院ではカテーテル治療の適応に関して血管外科医、放射線科医、肺循環科で十分な検討を行い。本当に患者さんにとって良い治療となるように最善を尽くすようにしております。

肺動脈バルーンカテーテル治療(BPA)への問い合わせは以下のメールに連絡下さい。


肺動脈バルーンカテーテル治療インターネット相談担当医:肺循環科 医長 大郷剛


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慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対するバルーン治療の画像所見
(左:バルーン治療前)右肺動脈でほぼ閉塞し血液が流れていない。
(真ん中:バルーン治療中)バルーンを広げて肺動脈の閉塞部を拡張している。
(右:バルーン治療後)肺動脈の血流が流れるようになっている。

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手術も行えるハイブリッドカテーテル室での経皮的肺動脈バルーン形成術治療の様子
当院での肺動脈カテーテル治療の紹介記事

最終更新日:2021年10月08日

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