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不整脈科

Brugada症候群

Brugada症候群は、12誘導心電図のV1からV2(V3)誘導における特徴的なST上昇と心室細動(VF)を主徴とする症候群である(図1)。ST上昇には、上向きに凸のcoved型(入江様)と下向きに凸のsaddle back型(馬鞍様)があるが、診断確定にはJ点またはST部分が基線から0.2mV以上上昇するType 1のcoved型ST上昇を認めることが必須条件である(図2A)。特徴的なST上昇はフレカイニド、アジマリン、ピルジカイニドなどのNa+チャネル遮断薬投与により顕在化することがある(図2B)。また、高位肋間記録(V1、V2が第3または2肋間)のみでType 1のcoved型ST上昇を認める場合も、Brugada症候群と考えられている(図2C)。Type 1心電図に加え、(1)VFの確認、(2)自然停止する多形性心室頻拍、(3)突然死(45歳以下)の家族歴、(4)coved型ST上昇の家族歴、(5)電気生理学的検査でのVF誘発、(6)失神発作、または(7)夜間苦悶様呼吸のうち1つ以上を認める場合にBrugada症候群と診断される。


図1. Brugada症候群患者の右胸部誘導のST上昇と心室細動(VF)

図1. Brugada症候群患者の右胸部誘導のST上昇と心室細動(VF)

図2.Brugada症候群患者のV1-V6誘導心電図

図2. Brugada症候群患者のV1-V6誘導心電図

A. 症例1. 安静時からV2誘導でcoved型ST上昇を呈する(type 1)。
B. 症例2. 安静時にはV2誘導でsaddle back型ST上昇(type 2)を呈しでいるが、ピルジカイニド 40mgの静注によりcoved型(type 1)のST上昇を認めている。
C. 症例3. 安静時心電図で、通常の第4肋間におけるV1、V2誘導心電図記録ではBrugada様のST上昇を認めないが、第3、2肋間でV1、V2誘導心電図を記録すると典型的なcoved型ST上昇(type 1)を呈している。


1. 遺伝子型

Brugada症候群では、現在までに7つの遺伝子型が報告されている。最初に報告された原因遺伝子はヒト心筋Na+チャネルαサブユニットをコードするSCN5A(BrS1)で最も頻度が多いが、SCN5A に変異が同定されるのは臨床的にBrugada症候群と診断される患者の11~28%である。その後Brugada症候群とQT短縮の合併例で、Ca2+チャネルのα1サブユニットとβ2bサブユニットをコードするCACNA1CCACNB2 遺伝子上の変異が同定された(BrS2、BrS3)。さらにGPD1-L 遺伝子(BrS4)、Na+チャネルβサブユニットであるSCN1B 遺伝子(BrS5)やSCN3B 遺伝子(BrS7)、K+チャネルのβサブユニットであるKCNE3 遺伝子(BrS6)上の変異も同定されている。BrS1、BrS4、BSr5、BrS7では変異によりI Naが減少することにより、BrS2、BrS3では変異によりICa-Lが減少することよりBrugada症候群を発症する。一方BrS6では変異により一過性外向きK+電流(Ito)が増強することによって発症する。


表1. Brugada症候群の原因遺伝子とイオンチャネル機能

表1. Brugada症候群の原因遺伝子とイオンチャネル機能

2. 遺伝子型と表現型の関連

Brugada症候群では、遺伝子変異の有無と臨床病態との関連が充分に検討されているとは言えない。SCN5A 変異を有するBrugada患者はSCN5A 変異を有しないBrugada患者に比べて、PR時間やHV時間が有意に長く、またNa+チャネル遮断薬静注後にPR時間やQRS幅がより延長することが報告されている。当センターで平均10年間心電図経過が前向きに観察できたSCN5A変異を有するBrugada患者8例とSCN5A 変異を有さないBrugada患者36例の心電図指標を経時的に比較検討したところ(図3)、脱分極指標であるP波幅、PR時間、QRS幅、S波幅(Ⅱ、V5誘導)は、 SCN5A 陽性群でSCN5A 陰性群に比べて有意に長かった。さらに、両群とも平均10年間の経過観察期間中にこれらの脱分極指標の多くは有意に延長したが、PQ時間、QRS幅(V2誘導)の延長度はSCN5A 陽性群で有意に大きかった。このようにBrugada症候群、特にSCN5A変異陽性例における脱分極異常は経年的に進行し、Brugada症候群におけるVFの発症に関与すると考えられる。


図3. SCN5A陽性Brugada患者とSCN5A陰性Brugada患者の心電図指標の経時的変化

図3. SCN5A陽性Brugada患者とSCN5A陰性Brugada患者の心電図指標の経時的変化

V1からV3誘導心電図を示す。SCN5A 陽性患者ではSCN5A陰性患者に比べて、脱分極指標であるP波幅、PR時間、QRS幅(V2誘導)、および再分極指標である修正QT(QTc)時間(V2誘導)はいずれも延長している。長期経過観察期間中、 SCN5A 陽性患者ではいずれの心電図指標もさらに延長しているが(7年後)、SCN5A 陰性患者では延長は認めないか軽度である(9年後)。


最終更新日 2011年03月27日

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