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急性期脳出血に潜む脳小血管病は、血腫体積と機能転帰を予測する


令和8(2026)年9月25日
国立循環器病研究センター

急性期脳出血において、既に存在する脳小血管病(SVD)の臨床的意義は明らかではありませんでした。本研究は、2011年から2022年に当院に入院した急性期脳出血症例のうち、入院時にMRIを施行した1660例(平均年齢70歳、女性43%、皮質出血397例、深部出血1263例)を対象に、白質病変、脳微小出血、ラクナ梗塞、皮質ヘモジデローシスといったSVD(図)と、血腫量、血腫拡大、機能予後との関連を検討しました。その結果、これらのマーカーは血腫量の減少や血腫拡大、さらに90日後および1年後の機能予後不良と関連することが判明しました。さらに、これらの指標を既存の危険因子に組み込むことで、1年後の予後予測能が向上することが示されました。この関連は、脳出血機序別(脳アミロイド血管症、高血圧性小血管障害)の解析でも同様に認められました。


図. 脳小血管病(SVD)の各表現型
脳小血管病(SVD)の各表現型

研究のポイント

  • 脳出血患者において、MRIで偶発的に認める白質病変、脳微小出血、ラクナ、皮質ヘモシデローシスのSVDマーカーが、血腫量や血腫拡大と関連することが明らかになりました。
  • 皮質出血では、白質病変および混合型(皮質と深部の両方にある)脳微小出血の存在が、来院時に測定した血腫量の低下と、皮質ヘモジデローシスが来院後24時間以内の血腫拡大に関連していました。深部脳出血では、白質病変、5個以上の混合型脳微小出血、ラクナ梗塞の存在は血腫量低下と関連しました。
  • 一方で、白質病変、混合型脳微小出血は血腫量低下に関連するにもかかわらず、90日後および1年後の機能的転帰不良と関連し、既存の危険因子に加えることで1年後の予後予測能が向上しました。

背景

脳出血は全脳卒中の約27%を占め、脳梗塞よりも大きな疾病負担をもたらす予後不良な疾患であり、発症1か月以内の死亡率は40%、1年生存率は46%にとどまります。脳梗塞とは異なり、過去20年間、脳出血後の機能予後や死亡率は改善しておらず、予後予測因子の同定が重要な課題となっています。脳出血の約85%はSVDに起因し、深部出血は高血圧性小血管障害、皮質出血は脳アミロイド血管症(CAA)と関連します。白質病変やラクナ梗塞、脳微小出血、皮質ヘモシデローシスなどの無症候性で併存する脳小血管の画像所見は、血腫の重症度や機能予後に影響する可能性が示唆されてきました。既報ではSVDを包括的に検証したものはなく、さらにいずれの研究も小規模であったことから、結果は一貫していませんでした。

研究成果

急性期脳出血において、出血そのものの大きさだけでなく、以前から脳に蓄積していた小血管の障害、すなわちSVDによっても機能予後が左右されることが、今回1660例を対象とした大規模な検討により明らかになりました。白質病変、脳微小出血、ラクナ梗塞、皮質ヘモシデローシスといったSVDの各所見をMRIで評価したところ、白質病変や脳微小出血を有する皮質出血および深部出血では、むしろ初期の血腫量が小さいことが分かりました。深部出血に関しては、ラクナ梗塞やSVD高スコア(白質病変、脳微小出血、ラクナ梗塞の合計)を有する場合も同様に、来院時の血腫量の低下と関連していました。一方、皮質ヘモシデローシスを認める皮質出血では、来院後24時間以内の血腫拡大リスクが約2倍高くなることが示されました。特に注目すべき点として、融合性白質病変と混合型脳微小出血は、血腫量の低下と関連するにもかかわらず、90日後および1年後の転帰不良と独立して関連しました。これらは、脳血流低下や神経ネットワークの障害を反映する画像マーカーであることが示唆されました。さらに、これらを機能転帰と関連する従来の危険因子(年齢、血腫体積、神経学的重症度、発症前の抗血栓薬)に組み合わせても、1年後の転帰をより正確に予測可能であることがわかりました。以上の研究結果により、急性期脳出血に対し、MRIでSVDを評価することは、患者ごとの脳出血重症度や予後をより正確に予測し、精度向上に活かせる可能性があります。


表1:血腫量と血腫拡大と各脳小血管病との関連(調整オッズ比[95%信頼区間])
来院時血腫量 血腫拡大
皮質出血 Model 1 P Model 1 P
深部脳微小出血 -0.31 [-0.68 – -0.07] 0.106 0.73 [0.24–2.24] 0.584
混合型脳微小出血 CMBs -0.70 [-0.99 – -0.41] <0.001** 0.71 [0.31–1.62] 0.422
皮質脳微小出血 -0.22 [-0.53 – 0.08] 0.154 0.71 [0.31–1.62] 0.419
皮質ヘモジデローシス 0.19 [-0.06 – 0.45] 0.136 1.97 [1.02–3.79] 0.042*
融合型白質病変 -0.32 [-0.56 – -0.07] 0.006* 1.07 [0.54–2.08] 0.842
ラクナ -0.32 [-0.60 – -0.04] 0.021 0.36 [0.14–0.94] 0.036
深部出血
深部脳微小出血 -0.09 [-0.26 – 0.06] 0.236 0.64 [0.35–1.17] 0.148
混合型脳微小出血 CMBs -0.19 [-0.36 – -0.03] 0.019* 0.53 [0.27–1.02] 0.058
皮質脳微小出血 -0.18 [-0.44 – 0.07] 0.167 1.81 [0.78–4.18] 0.168
皮質ヘモジデローシス 0.01 [-0.21 – 0.24] 0.933 0.92 [0.40–2.11] 0.842
融合型白質病変 -0.30 [-0.45 – -0.15] <0.001** 1.18 [0.65–2.14] 0.587
ラクナ -0.25 [-0.39 – -0.11] <0.001** 0.59 [0.33–1.08] 0.087

表の数値は、(調整オッズ比[95%信頼区間])をしめす。調整因子は年齢、性別、NIHSS、来院時収縮期血圧、脳卒中既往、降圧薬・抗凝固薬・抗血小板薬、およびfinger-like projections(皮質出血)を用いる。


表2:機能的転帰(90日後と1年後)と各脳小血管病との関連
90日後 mRS 4-6 1年後 mRS 4-6
皮質出血 Model 1 P Model 1 P
深部脳微小出血 1.06 [0.35–3.16] 0.921 0.88 [0.35–2.26] 0.804
混合型脳微小出血 CMBs 1.10 [0.47–4.84] 0.823 0.86 [0.42–1.76] 0.683
皮質脳微小出血 2.18 [0.99–4.83] 0.099 0.83 [0.38–1.86] 0.640
皮質ヘモジデローシス 1.05 [0.56–1.99] 0.883 1.27 [0.69–2.33] 0.434
融合型白質病変 1.00 [0.52–1.92] 0.995 1.20 [0.65–2.22] 0.552
ラクナ 0.70 [0.33–1.51] 0.365 1.46 [0.74–2.89] 0.279
深部出血
深部脳微小出血 1.23 [0.85–1.77] 0.265 1.14 [0.79–1.64] 0.463
混合型脳微小出血 CMBs 1.63 [1.13–2.36] 0.009* 1.57 [1.09–2.25] 0.015*
皮質脳微小出血 0.52 [0.27–1.05] 0.110 0.50 [0.28–1.01] 0.088
皮質ヘモジデローシス 2.82 [0.94–8.51] 0.065 2.38 [0.98–3.62] 0.055
融合型白質病変 1.89 [1.32–2.71] 0.001** 1.61 [1.12–2.29] 0.009*
ラクナ 1.22 [0.88–1.70] 0.235 0.96 [0.67–1.32] 0.785

表の数値は、(調整オッズ比[95%信頼区間])をしめす。調整因子は年齢、性別、神経学的重症度(NIHSS)、来院時収縮期血圧、病前mRS、脳卒中の既往、降圧薬・抗凝固薬・抗血小板薬の使用歴、finger-like projections(皮質出血)、初期血腫量、脳室内穿破を用いました。
mRSは modified Rankin Scale(修正ランキンスケール)の略で、脳卒中後の障害の程度や日常生活の自立度を評価する0から6の7段階の尺度です。
0は症状なし、1は症状はあるが明らかな障害なし、2は軽度の障害で自分の身の回りのことは介助なしでできる状態です。3は中等度の障害で何らかの介助は要するものの介助なしで歩行可能、4は中等度から重度の障害で歩行や身の回りの動作に介助が必要な状態、5は重度の障害で寝たきりなど常に介護が必要な状態を指し、6は死亡を示します。


表3:機能的転帰(90日後と1年後)と脳小血管病による予測能の検討
評価項目 マーカー 基本AUC(95% CI) 追加AUC(95% CI) DeLong, P value
90日後
mRS 4-6
融合型白質病変 0.855 [0.833 – 0.877] 0.860 [0.839 – 0.882] 0.059
混合型脳微小出血 CMBs 0.857 [0.835 – 0.879] 0.252
融合型白質病変 +
混合型脳微小出血
0.861 [0.839 – 0.883] 0.052
1年後
mRS 4-6
融合型白質病変WMH 0.841 [0.817 – 0.865] 0.845 [0.822 – 0.869] 0.075
混合型脳微小出血 CMBs 0.844 [0.820 – 0.868] 0.140
融合型白質病変 +
Confluent WMH混合型脳微小出血
0.847 [0.824 – 0.871] 0.039

AUC (Area Under the Curve) は識別能を示す。AUCの基本モデルには、調整因子は年齢、性別、NIHSS、来院時収縮期血圧、病前mRS、抗血栓薬の使用歴、初期血腫量、脳室内穿破を用いました。

発表論文情報

著者:Kaori Miwa, MD, PhD; Kazunori Toyoda, MD, PhD; Yoshito Arakaki, MD; Atsushi Ogawa, MD; Ryoko Inutsuka, MD; Soya Iwamoto, MD; Masayuki Shiozawa, MD; Masafumi Ihara, MD, PhD; Masatoshi Koga, MD, PhD
題名:Covert cerebral small vessel disease and outcomes after spontaneous intracerebral hemorrhage
掲載誌:Journal of Cerebral Blood Flow and Metabolism
DOI:10.1177/0271678X261490344

【報道機関からのお問い合わせ先】

国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069(21120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

最終更新日:2026年09月26日

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