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LDLコレステロールを厳格に下げても、リポプロテイン(a)[Lp(a)]高値は心血管イベントの「残余リスク」


令和8(2026)年5月25日
国立循環器病研究センター

国立循環器病研究センター、近森病院、柏厚生総合病院の国内3施設は、ガイドラインに準じた厳格なLDLコレステロール(LDL-C)低下療法下でも、血液中に存在する脂質粒子であるリポプロテイン(a)[Lp(a)]が将来の動脈硬化性心血管疾患リスクを高めるかを検討しました。冠動脈疾患と診断されカテーテル治療を受けた1,581例を解析した結果、LDL-Cを55mg/dL未満に管理することで将来の心血管イベントリスクは低減した一方、LDL-C目標を達成していてもLp(a)高値(28.2mg/dL以上)は独立したリスク因子として残ることが示されました。これらの結果は、推奨されるLDL-C管理の重要性を改めて支持するとともに、Lp(a)を標的とした新たな薬剤の必要性も示唆されました。

背景

リポプロテイン(a)は、動脈硬化症を促進させる作用を有する脂質粒子です。リポプロテイン(a)高値は、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性心血管疾患発症リスクを高めることが報告されており、新たなリスクファクターとして注目されています。欧州心臓病学会/欧州動脈硬化学会は、リポプロテイン(a)高値を呈する症例においては、ガイドラインに準じて他のリスク因子の管理を行うことを推奨しています。LDL-C管理は、動脈硬化性心血管疾患発症リスク低減において重要な予防対策であり、狭心症・心筋梗塞などの冠動脈疾患を有する症例はLDL-C<55を目標とすることが推奨されています。このような厳格なLDL-C管理により、リポプロテイン(a)に起因する動脈硬化性心血管疾患発症リスクが低減されるかどうかは不明なままでした。

方法

日本国内3施設より、冠動脈疾患と診断されカテーテル治療を施行した1581例を後ろ向きに登録しました。カテーテル治療施行から2ヶ月時点でのLDL-C値とリポプロテイン(a)値を測定しました。3年以上の観察期間における、心血管疾患発生有無(心臓死、非致死性心筋梗塞、血行再建術)を調査しました。

結果

5.1年の観察期間において、LDL-C目標値未達成(LDL-C≥55mg/dL)の症例の21.3%において心血管疾患が発生した。その発生率は、リポプロテイン(a)値の上昇とともに増加しました。LDL-C目標値達成(LDL-C<55mg/dL)症例においては、心血管疾患の発生率は4.3%にまで低下していました。しかしながら、LDL-C<55mg/dLの管理下でも、リポプロテイン(a)値は心血管疾患発生リスクに寄与する独立した因子でした。リポプロテイン(a)<30mg/dLの症例群に比して、リポプロテイン(a) 30-50, ≥50mg/dLの症例における心血管疾患発生リスクは約3倍、7倍と高率でした。LDL-C<55mg/dLを達成した症例において、心血管疾患発生リスクを予測するLp(a)のカットオフ値は28.2mg/dLでした。

今後の展望

LDL-C目標値達成(LDL-C<55mg/dL)により、リポプロテイン(a)に起因する心血管疾患発生リスクは低減していました。しかしながら、LDL-C目標値達成下でも、リポプロテイン(a)高値は依然として心血管疾患発生率の増加に寄与していました。現在、リポプロテイン(a)を標的とした治療の有効性を検証する臨床試験が進行中であり、将来的にはLDL-C<55mg/dLを達成下でも、リポプロテイン(a)高値を呈する症例への有効性が期待されます。

注釈

LDL-C: low-density lipoprotein cholesterol 低比重リポ蛋白コレステロール
いわゆる「悪玉コレステロール」と呼ばれ、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に運ぶ役割を持つ脂質です。血液中で増えすぎると動脈硬化を進め、長期的には心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患などのリスクを高めます。

発表論文情報

著者:Yu Kataoka, Kausik K. Ray, Stephen J. Nicholls, Aya Katasako-Yabumoto, Satoshi Kitahara, Hayato Hosoda, Kentarou Mitsui, Kota Murai, Kenichiro Sawada, Hideo Matama, Takamasa Iwai, Satoshi Honda, Masashi Fujino, Shuichi Yoneda, Kazuhiro Nakao, Kensuke Takagi, Yasuhide Asaumi, Teruo Noguchi
題名:Lipoprotein(a) and Residual Cardiovascular Risks in Japanese Patients with Coronary Artery Disease who Achieve Guideline Recommended LDL-C Goals
掲載誌:European Heart Journal
DOI:10.1093/eurheartj/ehag446

【報道機関からのお問い合わせ先】

国立循環器病研究センター 企画経営部広報企画室
TEL : 06-6170-1069(21120)  MAIL: kouhou@ml.ncvc.go.jp

最終更新日:2026年05月25日

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